まず、第1章 世界の極秘情報を暴いた「パナマ文書」
このパートが素晴らしく秀逸。
何冊かのパナマ文書本を読んできたが、どれも読後評を書くまで至らなかった。
が、この本の第1章だけで、OK!
世界の調査報道記者たちが立ち上がり、暗号化キーを入手し、取材参加。
この「史上最大の作戦」の結果、この世界的な極秘情報が暴かれた。
ニュース速報が各国で連発され、結果、首相が辞めた国、無視を決め込むアノ国、etc...
OECDはその2週間以内に緊急会合を開き、タックスヘイブンの透明性を高める施策を実施することで合意。
ジャーナリズムによって、大きく歴史が動いた瞬間となる。
抜きん出てまとまった内容で、この時点で既に満足させられる。
続く第2章では、アゼルバイジャンやイタリアのマフィアの裏側を暴く記者たちの活動を。
そして3章では、世界各地で立ち上がっているNPO系の報道機関を紹介。
・歴史のあるIPOでカルフォルニア設立の調査報道センター(CIR)ー西の大関
・ワシントンにある社会健全性センター(CPI)はエンロンの不正をスッパ抜いたNPOー東の〃
・横綱は「プロパブリカ」 WSJの元編集長が立ち上げ、カトリーナ取材で一躍有名に。
この取材で、ピューリッツァー賞報道部門賞獲得。これで多くのプロが「転職したい」会社に(笑)
・NYの「インサイド・クライメット・ニュース」は、小粒ながらも気候専門性でこちらもピューリッツァー賞。
・オランダの「コレスポンダント」はインターネットでの寄付からスタートし、8万人有料読者を集めている。
・フランス「メディアバルト」は風雲児。サルコジ大統領をはじめとしたトップの不正追求でおおいに気を吐いた。
報道の心得(記者による記者のためのスクープ教室、他)を説く 第4章 に続く最終章のテーマは日本。
個人情報の保護縛りがキツ過ぎる結果、何でも「匿名」となり、調査報道を阻んでいる現状を、「日本の壁」とする。
海外でも当然プライバシーの扱いは厳格だが、日本のそれは行き過ぎだと説く。
日本の報道姿勢にはやや偏りがあることが、この傾向に拍車をかけているというのが当ブログの見解。
結論:「パナマ文書」パートから一気に読ませる、国際視点からのジャーナリズムを理解できる一冊。
当ブログ的に強いて言うと、このパートをもう少し拡大しメインテーマ化しても良かったかも?というくらいの内容。