この豆本に収録した「名所道外尽」は五十図からなる。道外は道化と同じで、要するにに名所絵のパロディーである。
上掲の画左は「道外尽」、右は以前紹介した北斎の富嶽百景の一図である。
当時は普通に見かける左官の仕事風景を、壁土を取り落とした失敗風景に変え、富士がないなど簡略化され細部において異なるものの、基本的には北斎の構図と同じものだといえよう。江戸では「もじり」というのだろうけれど、他の図でもこのような滑稽化された図となっている。
いうまでもなくパロディーというのは、もとになるものがわかっていなければ、本当の面白さはないものだから、北斎の絵は当然多くの人が知っていたことになる。こうしてみると当時の江戸人達の知識教養はかなりのものであったと考えられよう。