自閉症の生徒さんのレッスンをしていた頃の話です。
18年前です。
当時小学1年生の生徒さんを1月に引き継ぎました。
前年の夏からレッスンを始めたとのこと。
自閉症と言っても色々あります。
発達障がいは1つの症状だけが現れることはなく、自閉症とLD、LDとADHD、自閉症と知的障害など複数の症状を併せ持ちます。
以前は症状の強いものを診断名としていましたが、現在は症状のあるものは併記されます。
尚、アメリカ精神医学会(DSM)の第5版が2013年に作られ、1992年から使われていた第Ⅳ版(ここまではローマ数字表記)にあった自閉症・アスペルガー症候群・特定不能の発達障害は、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)に変更となりました。
現在では自閉スペクトラム症と言うようになっているようです。
この辺りのことは別の機会にいたします。
「〇〇ちゃん、どこ行くの?」
これは彼女がレッスン開始から3カ月間、口にしていた言葉です。
〇〇ちゃんとは自分の名前です。
レッスンが終わる時になると必ずそう言っていました。
いつも私は、
「〇〇ちゃんはお家に帰るのよ」とか、
「レッスンが終わったから、〇〇ちゃんはお家に帰るのよ」とか
「お父さんとお母さんとお家に帰るのよ」と答えていました。
私が答えても、それに答えを返すことも頷くこともなく、本人はただそれを訊くだけでした。
ある日、また同じことが始まったので今度は私が「〇〇ちゃん、どこ行くの?」と訊いてみました。
すると、彼女はニヤッとしました。
「〇〇ちゃん、ホントはどこ行くか知ってんでしょ?」
すると彼女は、またニヤッと笑いました。
それ以来、彼女はこの言葉を言わなくなりました。
彼女はいつも無表情で、何をやっても楽しんでくれているのか、そうではないのかが全く分かりませんでした。
彼女から表情を見たのはこれが初めてでした。