ここでおさらいです。
何度も書いて申し訳ありませんが、ピアノは腕の重さ、体の重さを使って音を出します。日本で未だに行われている、ハイフィンガーという指を高く持ち上げ、指を鍛えてその力で弾く弾き方は少なくともヨーロッパでは過去のものです。
少なくとも50年以上前には消滅しています。
フランスでは現在70代のピアニスト(ベロフ、ルヴィエ、ジャン=フィリップ・コラール等)が子供の頃に習ったその奏法を12~13歳で直しています。「遊藝黒白 」第2巻#3 - おとのくに♪♪
旧ソ連ではクラシック音楽の歴史が西ヨーロッパのように古くないので、そのおかげで現代のピアノに適した奏法が初めから考えられ実施されてきました。
ソ連の影響は東ヨーロッパに広がっています。
主要ピアニストの大多数はロシアかその周辺国出身です。他の地域でも実力のあるピアニストはそれらの国出身の指導者にレッスンを受けていることが多いです。
体の重さを使って弾くことを「重力奏法」といいます。
指でカチカチと弾く「ハイフィンガー」に対するものとして使われ始めた言葉だと思いますが、現代ではこれは普通のことなので特別な奏法ということではありません。
体の重さの使い方を身に付けないことにはピアノと言う楽器は弾けないわけです。
それは歌や管楽器を息を使わずに音を出そうとか、弦楽器を弓を動かさずに弾こうとしているのと同じです。
腕の重さ使うことを子どもたちが特別な訓練をしなくとも身に付けられるように開発されたのが、ロシアで行われている方法です。
日本ではロシアンメソッドと言われています。
海外ではロシアン・ピアノスクール方式と言うことはあるようですが、ロシアンメソッドとは言っていません。
この方式の特徴は3の指でノンレガートで習い始めることです。
音は何の音でも良いですが、黒鍵のことが多いです。
日本で行われているものは、ヨーロッパではもう使われなくなった古い奏法によるもので、それをクラシック音楽の国ではないアメリカが、本物の弾き方をおそらく知らずに鍵盤に指を置いておけば簡単に弾けると思い付き、そのような教本を次々と作り出し、それを日本が盲目的に輸入したということだと想像しています。
さらに、日本の悲劇はドイツのバイエルという教本が入っていたことです。
当のドイツでは全く知られていない教本ですが、その教本の問題点は40年以上前にはヨーロッパ出身日本在住のピアニスト・指導者に指摘されています。
また、バイエルを日本に持ち込んだ人物をルービンシュタインはあの3流と言っています。(遊藝白黒の何巻かに書いてありました)
西ヨーロッパが現在どのような教本で子どもたちのピアノレッスンをしているのだろうと少し調べてみました。
日本人で何か国かに直接行ってレッスンを見学された方がいらっしゃるようです。
その記事のリンク先を下に貼り付けさせて頂きました。
黒鍵を234の指で始める方式がちゃんと存在しているようです。
他の方の情報ではドイツで一番使われているのは、あの赤いクマの楽譜だとか。ロシアン・ピアノスクールの教本が基になったものです。
ドイツはかつて西と東に分かれていましたので、東のものが伝わって残ったのは頷けます。
紹介されている教本しかわからないので、これが一般的なものかはわかりません。
こんなに円安でなければ興味のある楽譜を取り寄せたり、直接海外の楽譜屋さんに行けるのですが・・
フランスは1の指から始めるものが見受けられますが、この国は早く曲を弾くことに移行する傾向があるので、作曲家の作品で直接弾き方を学ぶのだと思います。
ドイツはあの赤いクマの楽譜の他に、私の手元に2種類ありますが、どちらも黒鍵を234で弾く所から始まっています。
パリっ子たちが最初に習うことは?をお読みください。
<フランスのピアノ教育のいま>にあった「Méthode de piano des 4-7 ans」のVol.1の中をこちらから少し見ることが出来ます。
ドから始まらない曲ですが途中からは出てきます。しかし、日本のように続け様には使いません。そして、特別にエクササイズが設けられています。
「1の指でドの音から」は頭の固い日本人らしいですが、それは身体的にはNGです。意味を考えて選択できるようになりたいものです。
フランスのこの方法は、さり気なく1の指をたくさん使わせない。
よく考えたなと思います。
私はこの導入法を最近ではヨーロッパのやり方、と言っています。
ロシアンメソッドとか、東ヨーロッパと言うと、経済的に途上国のイメージがあるのか、一般の人はロシアや東欧がピアノ王国だとは思っていないので、逆に遅れているように捉えられてしまうと感じます。
1本指で始める意図を正しく理解し伝える必要があります。
まずは1本の指に腕の重さを載せられなければ、それを他の指に移し替えながら弾くことなどできないのです。
東欧諸国のピアニストたちが、この導入法が間違いではないことを証明していると思います。