ロケⅢというバイクを知ったのは、ネットだったと思う。
なんかのインプレだった。
ワルキューレからGTSにリターンしたのは、特に理由はなかった。
ワルもいいが、馴れ馴れしくなっちゃうっつーか、扱え過ぎちゃうっつーか。
ま、ソレはGTSも同じなワケで。
期待通りの実績に、納得しながらも、嬉々とした実感は、それこそ「いつもどおり」でしかなかった。
そんな時、ロケⅢを知った。
全く知らないトライアンフ。
一旦ツブれて、再生したイギリスの会社、って位しか知らない。
ネットで調べていると、ロケットスリークラブ、というコミュニティサイトがあった。
何人ものオーナー達が集っていろんな情報を交換している。
過去ログは全て、読んだ。
みんな、わずかな不安を抱えながらも、上手にロケⅢと付き合っている。
2300㏄のエンジンは、その魅力を大勢のオーナーに語らせていた。
そして、そのエンジンによる未知の領域は、オレの心臓をわしづかみにした。
知らないメーカーに、良く知らない、外車。
だが。
オーナーからいろんな情報ももらえる。
マシンも、日本製マシンと遜色ない造りのようだ。
正規ディーラーがサポートもしてくれる。
オレにもやってイけると思った。
オレのココロは急速にロケⅢに惹かれ始めた。
正規ディーラー、トライアンフ市川(になったのはその後ですが)に実車を見に行った。
展示車は、イエロー。
オレが購入した車両ソノモノだ。
巨大なタンク、巨大なエンジン、不必要に幅の広いハンドル、双眼ライト。
圧倒的な存在感。
共に、ショーウインドウに並ぶハーレー達が陳腐なマシンに見えるほどだ。
そして、2300㏄の排気量を持つエンジンは、オレを期待させるのに充分なスペックを誇っていた。
そう、オレはカノジョに一目惚れにホレたのだった。
オレは、ロケⅢの購入を決断した。
中古車や、赤男爵っつー選択肢もあったが、ココは正規ディーラーを選択することにした。
そりゃ、正規ディーラーなんだから、出来ない作業はないだろう。
スタッフもコトバ遣いや態度はちゃんとしている。
オフィスも信頼できる雰囲気だ。
こういうスタッフのいる会社(ディーラー)なので、コストはかかるだろうが、マシンへの心配や不都合はちゃんと解消していけるだろう。
新車は2年間、距離無制限の保証付だ。
カタログには声高らかに品質と会社の姿勢が謳いあげてある。
オレはGTSと惜別することに決めて、契約書にサインした。
契約から、納車の日までの2週間、オレは寝ても醒めてもロケⅢを脳裏に移しながら過ごした。
ソレは、少年のオレが、目の前にいるカノジョに対し、初めて抱く日を望み続けるような日々だった。
納車当日。
ディーラーの担当から「1時間は時間を取って欲しい」そう言われて、営業店に出かけた。
マシンの仕様・機能説明・瑕疵の点検、スタッフ紹介、書類の説明など、本当に1時間以上かかった。
「要らない」とは言ったのだけど、納車時、店の前でポラ写真パチリ。
オレは対価に見合う満足感を噛み締めながら、エンジンに火を入れた。
その瞬間が、オレとロケⅢの2年間に亘る蜜月の始まりだった。