蚊帳といふ網にかかりし男かな 古澤千秋
こんな句が、7月27日の
「増殖する俳句歳時記」というHPにあった。
このHPは、清水哲夫氏が毎日ひとつの俳句を取り上げ、
その句を解説している。
この句のようなめにあってみたい。
これが、最初に句を見て思ったことです。
私には、こんなことなかったし、
これからもないだろう。
だいいち、蚊帳がない。
今どき、蚊帳吊って寝ている女なんていませんね。
蚊帳吊りし昭和の釘の残りけり 成井侃
私も茨城の実家にいるときには、
夏は蚊帳の中で寝ていました。
部屋の四隅に、蚊帳を吊る紐がある。
その紐の先には、
5、6センチほどの篠竹が結わえてある。
それに蚊帳の角にある輪ッかを引っかけて吊るのです。
さらさらする肌触りの蚊帳をくぐるのがいい。
夏は雨戸も障子も開けてあり、
寝る頃は涼しい風が入ってくる。
宵の口はいけない。
蛍光灯の光に誘われて、
いろんな虫がやってくる。
それらが大群で蛍光灯のぐるりを飛び回っている。
ときには油蝉やカブトムシも混じっている。
それだから蚊帳がないと寝られない。
麦藁で編んだ蛍籠とうちわを持って田圃に行く。
この麦藁の蛍籠、もいちど編みたいな。
脱穀した麦藁の先を20センチほどに切って、
一晩水につけて柔らかくする。
それで籠を編むんです。
あの形がいい、言葉では表せない姿です。
きれいですよ。
捕った蛍を、蚊帳の中で蛍籠から放す。
蛍の明滅する光を見つめているうちに、
おさない私は夢の中。
むかしはよかった、なんていいたくない。
いやなこともどっさりあった。
でも、やっぱりむかしはよかった、な…。
涼求め脚に絡める蚊帳の裾 九想