以前、私は公団住宅のテラスハウスに住んでいた。
テラスハウスというのは2階建ての3Kで、
小さな庭がある長屋形式の公団住宅です。
そこが建て替えになるということで10年前、
駅前の建て替えられた新しい住宅に引っ越した。
今日、陶芸教室が終わってから、“すずき”という居酒屋に行った。
昨日から楽家がやってないからだ。
その“すずき”という居酒屋には10年前に1年ほど通っていた。
私が以前住んでいた家の近くに開店したばかりだったからだ。
前から“すずき”には行きたいと思っていた。
思っていたが家から遠かった。
自転車に乗って7、8分はかかる。
楽家があるから…、という気持ちもあった。
「陶芸教室が終わったら“すずき”に行くから」と、
昨日からみっちゃんにいわれていた。
私とすれば、複雑な思いもあるが嬉しかった。
10年前、よく飲んでいた店に行くのだ。
マスターとママは覚えているわけはないな、と思っていた。
われわれは奥の座敷で飲んでいた。
料理などをママとマスターが運んできた。
ママの印象はかなり違っていた。
女性とは10年たつとこれほど変わるのかと驚いた。
マスターはほぼ10年前と一緒だった。
しばらく飲んでから、マスターが席に坐って、
タバコを吸っているときに、
「マスター、覚えていないと思うけど、
おれは10年前にここでよく飲んでたんだ」というと、
「覚えてますよ。『カットバン』という小説を
持って来てくれましたよね」
私は唖然とした。
よく“すずき”には飲みに行ったな、と覚えてはいるが、
自分が書いた小説を持って行ったなんてことは覚えてなかった。
私は、「そうですね」なんてつくろったが、
その事実は記憶になかった。
「カットバン」という小説は、私が30代に、
オール讀物の新人賞で一次予選を通過した作品だった。
そんなものを“すずき”のマスターに読ませていた、
と考えると、冷や汗が出た。
テラスハウスというのは2階建ての3Kで、
小さな庭がある長屋形式の公団住宅です。
そこが建て替えになるということで10年前、
駅前の建て替えられた新しい住宅に引っ越した。
今日、陶芸教室が終わってから、“すずき”という居酒屋に行った。
昨日から楽家がやってないからだ。
その“すずき”という居酒屋には10年前に1年ほど通っていた。
私が以前住んでいた家の近くに開店したばかりだったからだ。
前から“すずき”には行きたいと思っていた。
思っていたが家から遠かった。
自転車に乗って7、8分はかかる。
楽家があるから…、という気持ちもあった。
「陶芸教室が終わったら“すずき”に行くから」と、
昨日からみっちゃんにいわれていた。
私とすれば、複雑な思いもあるが嬉しかった。
10年前、よく飲んでいた店に行くのだ。
マスターとママは覚えているわけはないな、と思っていた。
われわれは奥の座敷で飲んでいた。
料理などをママとマスターが運んできた。
ママの印象はかなり違っていた。
女性とは10年たつとこれほど変わるのかと驚いた。
マスターはほぼ10年前と一緒だった。
しばらく飲んでから、マスターが席に坐って、
タバコを吸っているときに、
「マスター、覚えていないと思うけど、
おれは10年前にここでよく飲んでたんだ」というと、
「覚えてますよ。『カットバン』という小説を
持って来てくれましたよね」
私は唖然とした。
よく“すずき”には飲みに行ったな、と覚えてはいるが、
自分が書いた小説を持って行ったなんてことは覚えてなかった。
私は、「そうですね」なんてつくろったが、
その事実は記憶になかった。
「カットバン」という小説は、私が30代に、
オール讀物の新人賞で一次予選を通過した作品だった。
そんなものを“すずき”のマスターに読ませていた、
と考えると、冷や汗が出た。