私と女房は26日に、孫の住むひばりヶ丘の家に行った。
仕事帰りの女房との待ち合わせの約束時間は午後6時40分だった。
昨日、私は朝から女房の家でぐだぐだしていた。
午前中は、NHKラジオの「すっぴん!」の阿川佐和子のインタビューを聴いていた。
午後はニセビールを飲み、生麺のタンメンを作って食べて昼寝した。
目が覚めたのが3時過ぎだった。
私の予定としては、前日の九想話を朝から書こうと考えていた。
ところが上に書いたようなありさまで目が覚めて焦った。
それからあわてて九想話「池袋の夜」を書いた。
3時半から書き始め、なんとか6時前にgooブログに送信した。
清瀬駅行きのバスの時刻を見ると「18:07」というのがあった。
そのとき女房から「池袋だよ」とメールが来た。
私の気持ちは浮き足立つ。
女房との待ち合わせ時間に間に合わなかったら何をいわれるか分からない。
おそらく来年1年間は、あのひとに頭が上がらないだろう。
そんなことになっては私の来年の生活が悲惨な状態に陥ってしまう。
私は普通家を出るときに電気のコンセントを抜いたことや、
ガスの元栓をしめたことをくどいほど確認する。
自分でもイヤになるくらい何度もなんども確認する。
それでも3階から下に降りて、再び部屋に戻って確認することもある。
でもそのときは3回ぐらいにして家を出た。
なんとか私は、「18:07」の清瀬駅行きのバスに乗れた。
そのバスの中で私は、「コンセントは抜いた、はずだ」「元栓は締めた、はずだ」と心で反芻する。
そういう自分に私はもう50何年か疲れています。
6時20分過ぎにひばりヶ丘駅に着く。
改札を出てパン屋の前に立っているとあのひとが来た。
これで来年の私の生活は安泰です。
駅の下にあるケーキ屋に女房がケーキを予約していた。
ケーキ屋の前に行くと、ビル風のせいだろうものすごい風が吹いていて寒かった。
丸い直径20センチほどのケーキを渡されるときに女房は、店員からいろいろ説明を受けていた。
強風の音の合間に、途切れとぎれに聞こえてくるのを私なりに解釈するとこんなことだろう。
「1日過ぎているのでクリスマスのプレートなどはつけられません。
ろうそくはどうしますか?このどちらがいいですか?」
女房に、ケーキの形をしたキーホルダーのようなものを見せていた。
(きっとあれは孫にはあげないで自分のものにするんだろうな)と思った。
あのひとは、料理サンプルや野菜・ケーキを本物そっくりにプラスティックで作ったのものが大好きだ。
以前、浅草の合羽橋まで2人で買いに行ったこともあった。
息子の家は正直いってこれまで真っ直ぐ行ったことがない。
ひばりヶ丘駅から歩いて20分はかかる。
住所は埼玉です。
あの辺は、西東京市と新座市が隣り合わせになっている。
20代でマイホームを購入した息子は、価格が安い埼玉の家を選んだ。
その息子の家のある場所を今でも私と女房はきちんと理解していない。
あのあたりは道が入り組んでいて難しいんです。
それでもなんとか孫が住む家にたどり着いた。
女房がチャイムを押すと玄関の明かりがつき、ドアの鍵が外された。
ドアを開けると孫と嫁がいた。
「こんばんは」と孫がいう。
私たちも「こんばんは」と応える。
リビングに行くと、息子がパソコンの前にいた。
孫の話では、「新しいゲームだからパパは集中しているんだよ」という。
孫にこういうふうに見られているとは、情けないパパです。
女房はケーキを孫に差し出し、孫のほっぺたを両手でなぜて「大きくなったね」という。
私は、家から持ってきた長靴に入ったお菓子とジグソーパズルを渡し、デジカメを出して孫に向ける。
孫はパズルの包装紙を外し、さっそくやり始めた。
1000ピースのジグソーパズルに私は目がくらむ。
孫は喜々として箱の絵を見ながら1コ1コピースをつないでいった。
嫁が大きな一眼レフを取り出しシャッターを押し始める。
「M子さん、それ買ったの」
「やっと許してくれたんです」
「M子さんは、カメラ好きなんだ」
それを見て私も一眼レフを買おうと思った。
前から欲しかった。
今の私のカメラは12,000円で買ったコンパクトカメラです。
嫁のはペンタックスで8万ぐらいだったそうだ。
そんなお金はない私は、4万ぐらいのミラーレス一眼レフを買おうと考えているところだ。
私と孫が並んだ写真を女房が撮ってくれた。
ふだんピースサインなどゼッタイしない私ですが、孫と一緒なのでついしてしまった。
そんな自分が情けない。
息子の家を出るときに、私は孫を抱っこした。
重かった。来年は小学1年生だ。
孫がほっぺたをくっつけてくれた。
女房がシャッターを押した。
7時半を過ぎて私たちは孫の家を出た。
孫といたのは40分ぐらいだろうか。
長居はすまいと女房と決めていた。
元気な孫の姿が見られ、息子と嫁が健康なのが確認できればいい。
ひばりヶ丘駅前の喫茶店でコーヒーを飲んだ。
温かいコーヒーを女房と飲んで、私はしあわせだと思った。
あのひとが、ケーキのキーホルダーのようなものを取り出した。
「やっぱり孫にあげなかったんだ」
「あたりまえじゃん」