3月15日(月)午前1:05放送のラジオ文芸館(NHK ラジオ深夜便内)
原田マハ作「無用の人 Birthday Surprise」(← クリックすると朗読が聴けます)を聴いた。
(2021年3月22日(月) 午前2:00配信終了)
関東近郊の小さな美術館で学芸員を務める羽島聡美の職場に、茶封筒が届く。
差出人は1ヶ月前にがんで亡くなった、聡美の父だった。
その日は、聡美の50歳の誕生日。
差出日は2月1日、亡くなる直前に娘に荷物を送ったのだ。
スーパーの従業員でうだつのあがらなかった父、リストラされ、
母にも離婚され世間から「無用の人」扱いされていた父。
聡美が大学で美術を学ぼうと思ったのは、
18歳のときに父が読んでいた文庫本を読んだからだ。
岡倉天心が書いた「茶の本」という本で、
美学書、哲学書であり、茶の論理、日本の美意識について書いてあった。
送られてきた茶封筒を開けると中には鍵が入っていた。
1ヶ月後、聡美は茶封筒に書いてある住所、新宿の西早稲田を訪ねてみた。
そこには、父が若い独身の頃住んでいたと思われる、木造2階建てのアパートがあった。
書いてあった住所の部屋の鍵穴に、送られてきた鍵を挿すと、ドアが開いた。
その部屋は空っぽで何もなかったが、部屋の中央に1冊の文庫本があった。
岡倉天心の「茶の本」だった。
私もこの聡美の父親と同じく「無用の人」のようなもんです。
社会の隅っこを生きてきました。
この聡美の父親の気持ちが、痛いように分かります。