ETV特集「失われた言葉をさがして 辺見庸 ある死刑囚との対話」(後半)を観た。
朝観て、深夜にもう一度観直した。
シワブ ザンキ フル
咳くや慚愧に震ふまくらがり
ヒトヒ
蜘蛛一日出口探して見つけ得ず
カ
木犀の香を掻き乱す配膳車
天穹の剥落のごと春の雪
秋の日を映して暗き鴉の目
母の生前に執行されなかったこと、
つまり逆縁を回避できたことは
せめてもの慰めだと思っているのです
ぼくは加害者であることを
弁(ワキマ)えていますから
自己憐憫はすまいと心しています
コシタヤミ
その時の来て母還る木下闇
ハ ル シオンコウ
玻璃越しに片手合わすや四温光
身動きできない背景
ぼくたちが殺傷してしまった方々に
お詫びしなければならない
このような軽い言葉では
済まされるべきでないことは
百も承知です
ぼくの心中は言葉では表現できません
ヨギ
ででむしやまなうら過る死者の影
ヌカヅ
額衝くや氷雨たばしる胸のうち
イ ジショウ
寝ねかねて自照はてなし梅雨じめり
瓦礫なし地の荒寥や秋暑く
原発に追わるる民や木下闇
暗闇の陰影刻む初蛍
カンイッキシコ
棺一基四顧茫々と霞みけり
番組で紹介された大道寺将司の句です。
現在、彼は、2メートル先のトイレに行くのに1時間もかかるらしい。
大道寺将司も辺見庸も癌を患っている。