唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

劉總の願い

2006-07-08 14:10:32 | Weblog
今日もたくさんの僧達が読経をつづけ、寺院ともおもいかねない邸宅
僧達に混じって幽州節度使の劉總もまた一心に読経を続けてきた。

夜が来るのが恐ろしい
読経に疲れ果てて眠るわずかな睡眠だけが總の休養だ
毒殺した父、暗殺した兄や弟の亡霊が總を苦しめている。

「朝廷にお願いした件はどうなった」
「殿は天平節度使に御転任です。幽州には張弘様が来られます」
「天平などは不要だ、ただ出家の許可が欲しいのだ」
「殿の功績を考えると一挙に僧というのはと・・・」
「早く僧となって心の安静を得たい、地位や封爵など未練はない」

魏博・成徳が帰順したあと、残った幽州も朝廷の支配下に戻ろうとしていた。
しかし總には朝廷のやり方ではすぐに破綻することは目に見えていた。

幽州も三分して統治すべきたなど数々の献策をおこなってきた。

しかし今は一刻も早く安静が得たい・・・・。

長慶元年四月、義武節度使は奏した
「總は出家し、幽州を出ようとし、義武との境界に於いて亡くなられました」

七月幽州軍乱・八月成徳軍乱・二年正月魏博軍乱、河北三鎮はすべて失われた。

監軍の嘘

2006-07-08 09:10:47 | Weblog
「ついては李説を解任し、李景略を留後という勅命がくだった」
河東監軍の王定遠(宦官)は壇上で甲高い声をあげていた。

壇下の諸将は不満げにざわめき、お互いに顔をみあわせていた。

説は節度使として有能ではないが、けっして嫌われてはいない。

定遠は説を無視して専権を振るい、軍内の評判は極めて悪い。

先日も逆らった軍人をひそかに殺して馬糞の下に埋めさせていた。

説にそのことを責められてかえって怨み、勝手に解任しようとしていたのだ。

諸将が納得していないのを見て取った定遠はさらにいった。

「おまえ達の昇進の命令もここにたくさん来ている」
そして横においてある書類箱を指さした。

さすがに諸将は関心をもって命を奉じようとした。

その時

定遠の背後にいた大将馬良輔は叫んだ

「こいつは大嘘つきだ、箱の中は古い告示文だぞ」

定遠は自分の嘘がばれたことをしり逃げだした。

そして塔にこもって部下を呼んだが、誰も応じようとはしなかった。

やがて身を投げて自殺しようとしたが死にきれず崖州に流された。