唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

醤醢

2006-07-14 18:37:47 | Weblog
酒がめぐり座はにぎやかになっていった
日頃厳酷で知られる天徳軍使李景略の会とはいえ相当な盛り上がりであった。

「酒が切れたぞ」
景略の傍らの判官任迪簡がよぶと

係はあわてて新しい酒壷をもってきた。

迪簡は自分でなみなみと注ぐと一気に飲もうとした。

「ウッ!」

中身は酒ではなく醤醢(醤油の原型)であった。

「どうした」ととなりの景略がこちらを振り向いた。

「いや、急いで飲んだのでむせてしまいました」と迪簡はがまんして杯を飲み干した。

もし間違って醤醢を出したことなどがわかったら、係はすぐさま景略に殺される。
そうわかっているので迪簡はがまんして飲みほしたのだった。

また係を呼んで「この酒は薄い、もっと濃いものに替えよ」と頼んだ。

壷の残った中身をみて係は青ざめた。

迪簡は「なにもいうな」と目配せをして持ち去らせた。

まもなくこの話は「判官は長者である」という評価とともに軍士達に広まっていった。

勇将であるが厳酷な景略に閉口していた軍士達にとっては心温まるできごとであった。

景略が任期中になくなると、軍士達は迪簡が嗣ぐことを求めて騒いだ。

皇帝はやむをえず後任として認めることになった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

酒神

2006-07-14 18:35:47 | Weblog
「今度の観察使は神様のようだ」

「今までのように手を抜けないぞ」

「ただの大酒飲みだと思っていたが」

崔咸が陝かくに赴任してから、観察府は緊張していた。

赴任した当初、毎日日中は幕僚達と酒を飲んでいる。

そのため胥吏(下級官吏)達は、なめてかかって適当に仕事をしていた。

ところが何日かたつと、担当の吏を呼び問題点を適確に指摘し、

懸案の裁判の判決を流れるように下し、間違うことがなかった。

そして終わるとまた酒宴がはじめた。

「いつ書類をみているんだろう」と胥吏達は不思議でならなかった。

宴会が終わった深夜、咸は堆積した書類を省覧し、採決をしていることを知っているのは家族だけだった。

咸の任期中、胥吏達は身を慎み、陝かくはよく治まっていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする