酒がめぐり座はにぎやかになっていった
日頃厳酷で知られる天徳軍使李景略の会とはいえ相当な盛り上がりであった。
「酒が切れたぞ」
景略の傍らの判官任迪簡がよぶと
係はあわてて新しい酒壷をもってきた。
迪簡は自分でなみなみと注ぐと一気に飲もうとした。
「ウッ!」
中身は酒ではなく醤醢(醤油の原型)であった。
「どうした」ととなりの景略がこちらを振り向いた。
「いや、急いで飲んだのでむせてしまいました」と迪簡はがまんして杯を飲み干した。
もし間違って醤醢を出したことなどがわかったら、係はすぐさま景略に殺される。
そうわかっているので迪簡はがまんして飲みほしたのだった。
また係を呼んで「この酒は薄い、もっと濃いものに替えよ」と頼んだ。
壷の残った中身をみて係は青ざめた。
迪簡は「なにもいうな」と目配せをして持ち去らせた。
まもなくこの話は「判官は長者である」という評価とともに軍士達に広まっていった。
勇将であるが厳酷な景略に閉口していた軍士達にとっては心温まるできごとであった。
景略が任期中になくなると、軍士達は迪簡が嗣ぐことを求めて騒いだ。
皇帝はやむをえず後任として認めることになった。
日頃厳酷で知られる天徳軍使李景略の会とはいえ相当な盛り上がりであった。
「酒が切れたぞ」
景略の傍らの判官任迪簡がよぶと
係はあわてて新しい酒壷をもってきた。
迪簡は自分でなみなみと注ぐと一気に飲もうとした。
「ウッ!」
中身は酒ではなく醤醢(醤油の原型)であった。
「どうした」ととなりの景略がこちらを振り向いた。
「いや、急いで飲んだのでむせてしまいました」と迪簡はがまんして杯を飲み干した。
もし間違って醤醢を出したことなどがわかったら、係はすぐさま景略に殺される。
そうわかっているので迪簡はがまんして飲みほしたのだった。
また係を呼んで「この酒は薄い、もっと濃いものに替えよ」と頼んだ。
壷の残った中身をみて係は青ざめた。
迪簡は「なにもいうな」と目配せをして持ち去らせた。
まもなくこの話は「判官は長者である」という評価とともに軍士達に広まっていった。
勇将であるが厳酷な景略に閉口していた軍士達にとっては心温まるできごとであった。
景略が任期中になくなると、軍士達は迪簡が嗣ぐことを求めて騒いだ。
皇帝はやむをえず後任として認めることになった。