「維州を放棄するなんて・・・・」
「牛宰相は国益を考えていないのでしょうか」
「この徳裕が憎いということだけだろう」
大和五年、維州守將悉旦謀が唐に帰順してきた。
吐蕃や雲南蠻の侵攻は困難となり、西川節度府は安泰となった
節度使李徳裕の懸命の働きかけが功を奏したのだ
二年前の雲南蠻の侵攻により成都府が陥落した記憶がまだ生々しい
その時も、維州が唐のものであれば侵攻などできなかったはずだ。
ところが宰相牛僧孺は維州を吐蕃に返還し、悉旦謀も送還しろと命じてきた。
「維州の兵は皆殺しになってしまう」
「唐の信用は地に墜ちる。これから誰も降るものはいなくなる」
徳裕は再度訴えたが、中央の決定は覆らなかった。
牛は「外敵とは争わず、藩鎭には干渉せず」という平和策なのだ。
悉旦謀は一族とともに送還され、幼児にいたるまで虐殺された。
「いまにみておれ、政権をとったら、牛党の奴らにこの悔しさを味あわせてやる」
徳裕ははるかに北、京師をにらんでつぶやいた。
「牛宰相は国益を考えていないのでしょうか」
「この徳裕が憎いということだけだろう」
大和五年、維州守將悉旦謀が唐に帰順してきた。
吐蕃や雲南蠻の侵攻は困難となり、西川節度府は安泰となった
節度使李徳裕の懸命の働きかけが功を奏したのだ
二年前の雲南蠻の侵攻により成都府が陥落した記憶がまだ生々しい
その時も、維州が唐のものであれば侵攻などできなかったはずだ。
ところが宰相牛僧孺は維州を吐蕃に返還し、悉旦謀も送還しろと命じてきた。
「維州の兵は皆殺しになってしまう」
「唐の信用は地に墜ちる。これから誰も降るものはいなくなる」
徳裕は再度訴えたが、中央の決定は覆らなかった。
牛は「外敵とは争わず、藩鎭には干渉せず」という平和策なのだ。
悉旦謀は一族とともに送還され、幼児にいたるまで虐殺された。
「いまにみておれ、政権をとったら、牛党の奴らにこの悔しさを味あわせてやる」
徳裕ははるかに北、京師をにらんでつぶやいた。