唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

抜擢

2006-07-25 13:57:42 | Weblog
李行言の県令の任期が終了したのは大中八年の事である。

さしたるひきもなく、党派にも属していない行言には

陽の県令があたったこと自体が非常な幸運であり

在任中は結構がんばったつもりだった。

しかしそんな事が評価されると思うほど甘くはなかった。

次の職はなかなかもらえないとは覚悟していた。

ところが、宰相府に県令終了の挨拶に行くと

突然、皇帝(宣宗)に呼び出されていた。

行言は、なにかお叱りを受けるのかと緊張しながら御前にまかり出た。

「海州刺史に任じ金紫を賜う」と帝は昇進を申し渡した。

行言は茫然としながらも拝謝した。

「ありがたいことです。しかし帝はなぜわたくしめを」

帝は御殿の柱に貼ってあるメモを指し示しながら告げた。

「この前、狩猟にいったとき、樵夫(きこり)に会った」

「おまえの県令は誰かと聞くと、李行言ですとのことだつた」

「どんな県令だと聞くと、禁軍に属する家の横暴を厳しく取り締まる人だと言った」

「そこでお前を抜擢すべき者だと思ってメモしておいたのだ」

皇帝はお忍びで狩猟し、京師周辺の民政を調べていた。

そこで民の言葉を聞き、良吏を探し求めていたのだ。

宦官宰相

2006-07-25 09:10:05 | Weblog
兵部尚書李輔国は宦官の出身で、肅宗皇帝を影で操っていた。

金も官位も自由にならないものはないはずであった。

「俺ぐらい能力があるのだから宰相になってもいいじゃないか」

「でも自分からなりたいというのはまずいな」

「そうだ、蕭華の奴に推薦させよう、あいつには弱みがある」

蕭華は安禄山や慶緒に仕えていた前歴がある。

名家の出身なので赦され、能力があったので宰相にまで昇進していた。

ところが、やっと肅宗を丸め込んで、前例のない宦官出身の宰相を認めさ
せたのに華がウンといわない。

「宦官ごときに宰相など」と
官僚どもも一致団結して華を支持する。

「華の奴め、逆臣のくせに俺に背くのか」

怨んだ輔国は肅宗に強く華の解任を求めた。

理由にならない理由で華は解任されることになった。

その後、輔国はお飾りである司空の地位は得たが、
宰相となることはできなかった。