李行言の県令の任期が終了したのは大中八年の事である。
さしたるひきもなく、党派にも属していない行言には
陽の県令があたったこと自体が非常な幸運であり
在任中は結構がんばったつもりだった。
しかしそんな事が評価されると思うほど甘くはなかった。
次の職はなかなかもらえないとは覚悟していた。
ところが、宰相府に県令終了の挨拶に行くと
突然、皇帝(宣宗)に呼び出されていた。
行言は、なにかお叱りを受けるのかと緊張しながら御前にまかり出た。
「海州刺史に任じ金紫を賜う」と帝は昇進を申し渡した。
行言は茫然としながらも拝謝した。
「ありがたいことです。しかし帝はなぜわたくしめを」
帝は御殿の柱に貼ってあるメモを指し示しながら告げた。
「この前、狩猟にいったとき、樵夫(きこり)に会った」
「おまえの県令は誰かと聞くと、李行言ですとのことだつた」
「どんな県令だと聞くと、禁軍に属する家の横暴を厳しく取り締まる人だと言った」
「そこでお前を抜擢すべき者だと思ってメモしておいたのだ」
皇帝はお忍びで狩猟し、京師周辺の民政を調べていた。
そこで民の言葉を聞き、良吏を探し求めていたのだ。
さしたるひきもなく、党派にも属していない行言には
陽の県令があたったこと自体が非常な幸運であり
在任中は結構がんばったつもりだった。
しかしそんな事が評価されると思うほど甘くはなかった。
次の職はなかなかもらえないとは覚悟していた。
ところが、宰相府に県令終了の挨拶に行くと
突然、皇帝(宣宗)に呼び出されていた。
行言は、なにかお叱りを受けるのかと緊張しながら御前にまかり出た。
「海州刺史に任じ金紫を賜う」と帝は昇進を申し渡した。
行言は茫然としながらも拝謝した。
「ありがたいことです。しかし帝はなぜわたくしめを」
帝は御殿の柱に貼ってあるメモを指し示しながら告げた。
「この前、狩猟にいったとき、樵夫(きこり)に会った」
「おまえの県令は誰かと聞くと、李行言ですとのことだつた」
「どんな県令だと聞くと、禁軍に属する家の横暴を厳しく取り締まる人だと言った」
「そこでお前を抜擢すべき者だと思ってメモしておいたのだ」
皇帝はお忍びで狩猟し、京師周辺の民政を調べていた。
そこで民の言葉を聞き、良吏を探し求めていたのだ。