「倉庫はからっぽです」
「朝廷から送られてくる賜物はいつくるかわかりません」
義武軍行軍司馬の任迪簡にとっては頭の痛いことばかりであった。
前節度使の張茂昭は、易定二州を朝廷に返納して河中へ栄転していた。
長い間の河北の自立の一角が崩れたわけである。
しかし周囲はすべて敵であり、軍士達は不穏な状態が続いている。
現に二回の反乱がおこり、そのたびに迪簡は監禁されていた。
軍上層部は官爵を授けられ朝廷に従うつもりであるが、利益を感じられない中堅以下は不満であった。
「こんな貧乏節度使だから、茂昭は投げ出していったんだ」
「なけなしの財産もみんな持って行ったし」
迪簡が軍士に与える賞賜はろくになかったし、宴会すら開くことができなかった。
「ひらきなおるしかしかたがないかなあ」と
迪簡は府庁の門脇の小屋に寝起きし、粗末な食事を食べて自分にも金がないことを示した。
軍士達もそれをみて
「隠しているワケじゃあなさそうだ。ほんとうに金がないんだろう、賜物がつくまでは辛抱するしかないか」
と静まっていった。
「朝廷から送られてくる賜物はいつくるかわかりません」
義武軍行軍司馬の任迪簡にとっては頭の痛いことばかりであった。
前節度使の張茂昭は、易定二州を朝廷に返納して河中へ栄転していた。
長い間の河北の自立の一角が崩れたわけである。
しかし周囲はすべて敵であり、軍士達は不穏な状態が続いている。
現に二回の反乱がおこり、そのたびに迪簡は監禁されていた。
軍上層部は官爵を授けられ朝廷に従うつもりであるが、利益を感じられない中堅以下は不満であった。
「こんな貧乏節度使だから、茂昭は投げ出していったんだ」
「なけなしの財産もみんな持って行ったし」
迪簡が軍士に与える賞賜はろくになかったし、宴会すら開くことができなかった。
「ひらきなおるしかしかたがないかなあ」と
迪簡は府庁の門脇の小屋に寝起きし、粗末な食事を食べて自分にも金がないことを示した。
軍士達もそれをみて
「隠しているワケじゃあなさそうだ。ほんとうに金がないんだろう、賜物がつくまでは辛抱するしかないか」
と静まっていった。