唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

周岌の帰国

2006-07-11 19:52:50 | Weblog
「まさか行かれるのではありますまいね」
「節度使ご招待だ、行かないわけにはいかんだろう」
「いくら節度使とはいえ、いまは黄巣に降った賊です」
「いけば殺されることも考えられます」
「いや周岌の心はわかっているよ」

忠武監軍楊復光の館は緊張に包まれている。

節度使周岌は黄巣の侵攻時に率先して降り、忠武節度使を安堵されている。

しかし唐の監軍たる復光を拘束するのでもなく放置していた。

昨日、急に使いを寄越し招待をかけてきた。

「彼は唐に帰順したいのだ」
「巣の勢力は弱まってきたと思っている」
「岌が立場を変えやすいようにしてやるだけさ」

酒宴が始まった。

復光はさかんに往事の事を語り、岌に昔を思い出させた。

やがて岌は泣き言った
「皇帝のご恩は一日として忘れたことはありません、ただ私一人では賊に対抗できないのです」

復光も泣いて言った
「殿の忠心はよく知っています。状況は変わってきました。今なら殿は本心に立ち戻ることができます」

「帝はお赦しくださるだろうか」と岌

「帝も殿の忠義はご存じです、あとは行動に示すだけです」と復光

そしてこの夜、復光は巣の使者を攻め殺し、既成事実を作ってしまった。
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女装の宦官

2006-07-11 17:52:17 | Weblog
「俺は皇宮以外の世界を知らないんだよ」
「生まれてこのかたの宦官暮らしなんだ」
「皇帝はきっと赦してくださる」

程元振は道々そう思いながら追放されていた故郷の三原より女装して京師へ向かった。

吐蕃の侵攻により京師を陥落させるという失敗はともかく

宰相や将軍達の生殺与奪を握っていた権力者時代の余韻はまだまだ強い。

また皇帝の信任が復活することも考えられる。

彼を匿ってくれるものはたくさんいた。

途中の検問も、宦官である強みを生かして女声で答えて切り抜けた。

もとの仲間である御史大夫王昇は快く迎え入れてくれた。

誤算は出世主義に凝り固まった監察御史どもだった。

「あの元振が勝手に入京しております」
「法を無視するにもほどがあります」
「すみやかに誅殺してしまうべきです」

囂々たる非難があがった。

「なぜもう少し辛抱できないのか」と皇帝は思った。

幼時より親しんできた元振への思いはまだまだ温かい。

しかし公的な立場は崩せない。

皇帝にできる事は死を免じてやることぐらいだった。

元振は遠流されそこで死んだ。
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