唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

郭 その2 剣

2006-07-16 11:11:27 | Weblog
西川將郭の反乱はやがて鎮圧され、従う者は書記ただ一人となった。

川岸まで逃れてきたは書記に言った。

「お前は最後まで忠実だった。だから富貴の道を授けてやろう」

「私は殿に最後まで従っていくつもりです」と書記

「いや、俺はここから一人になって、前節度使の高駢様のいる淮南へ落ちていくつもりだ」

は書記に自分の剣を渡し。次のように節度使敬瑄の所に行って言えと命じた。

「川岸でを斬りつけました。は川に落ちて流れて行きました。剣だけが残ったので証拠に持ってきました」

「そういえば敬瑄様は納得してお前に褒美をくれるだろう」

「この剣は俺が命の次に大事にしていたものだということは誰でも知っている」

書記はそんなことはできないと拒みましたが、

「敬瑄様は本当は俺が悪いとは思っていないはずだ」
「俺がいなくなれば、家族や残った兵士達への追求などしなくなるんだ」とにいわれ、泣く泣く従うことになりました。

一方、敬瑄はがいつまでも捕まらないのでイライラしていましたので、
書記の報告を聞き喜びました。

「よし、この件はこれで終わりだ。これ以上の混乱はごめんだ」

や兵士の家族に対する処罰はありません。

令孜にとっては不満でしたが、自分の方にも非があるので黙っていました。
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郭 その1 毒杯

2006-07-16 08:38:04 | Weblog
唐末、皇帝が西川に避難している時でした

宦官で観軍容使の田令孜は、京師から連れてきた禁軍兵士ばかりを優遇し
地元兵には賞賜が行き渡らず不満が高まっていました。

ある夜、武將達をあつめた宴会でのことです。

令孜は金杯に名酒をつぎ、將達に下げ渡していました。

しかし地元の將郭は受けようとはしませんでした。

「なぜ、俺の杯が受けられんのだ」と令孜は鼻白みました。

は「禁軍と地元の扱いを同じにしていただければ喜んでいただきます」と言い放った。

令孜は、軟弱な土着の兵がなにを言うのかと思っていたので

「おまえにはどんな功績がある」と問うた。

は「故郷から西川にきて、南蛮・吐蕃と戦うこと数十戦です」といいながら肌脱ぎになり、満身傷だらけの身体をみせた。

令孜は絶句したが、やがてほほえんで言った。

「勇士であることはよくわかった。特別な酒を飲ませてやろう」
と別の瓶から香り高い酒を大杯にそそぎ下げ渡した。

はそれが毒酒であることはわかったが飲み干し立ち去った。

兵舎にもどりは、下女を殺してその血を飲み、大量の血とともに毒を吐いた。

翌朝、は自分の兵を率い令孜や禁軍を襲い、斬り回った。

節度使陳敬瑄は驚き、大軍を派して鎮圧したが、
を捕らえることはできなかった。
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