唐史話三眛

唐初功臣傳を掲載中、約80人の予定。全掲載後PDFで一覧を作る。
その後隋末・唐初群雄傳に移行するつもりです。

羽翼を切る

2006-07-12 20:21:50 | Weblog
「全忠様の援軍は来たか」

「馬嗣勳が千人とともに婚礼道具を運ぶと称して入城しています」

「武器庫の弓のツルは切ったか」

「甲冑のひもも切断して着用できなくしております」

「よし今夜決行だ」

唐の末 天祐三年正月

魏博節度使羅紹威は部曲(直属の兵)を率いて、牙軍(節度使の親衛軍)に襲いかかった。

気にくわない節度使があると乱を起こし殺害、強迫を繰り返してきた牙軍だが
突然の内部からの攻撃に応戦できずバタバタと倒れていく。

「武装しろ、兵器庫へ向かえ」と牙兵

しかしそこには使い物にならない兵具がころがっているだけだった。

「家族も見逃すな」

援軍に来た朱全忠の兵は容赦がなかった。

女幼児を含めて数万の牙軍と家族は皆殺しになっていった。

「紹威様、城内の牙軍は一掃しました」

凶暴な牙軍はいなくなり、紹威の地位が脅かされることはなくなった。

「よし外鎮の兵達には帰順するように布告せよ」

しかし家族を虐殺された外鎮の兵達は反乱を起こし従わなかった。

全忠の強力な支援で鎮定した時、魏博にはまともな戦力は残っていなかった。

「自分で自分の羽翼を切り取ったようなものだ」
と紹威は自嘲しながら、全忠の元へ入朝して行った。
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朱温の迷い

2006-07-12 18:44:51 | Weblog
「降っても受け入れてくれるかな」

「俺の評判は極めて悪いし」と温

「そんな事をいっている場合ですか」
「敵軍はどんどん増えているのに、こちらには援軍はきません」
「側近どもが殿を讒言しているのですよ」
と謝瞳が叫んだ。

援軍を頼むために京師の黄巣のもとに派遣されが、まるで取り合ってもらえなかった怒りで顔が真っ赤である。

官軍に対する最前線の華州城では不穏な空気がただよっていた。

「河中の王重栄から密書がきています」
「都監の楊復光からもです」
「官軍につくなら今です」
部下達はすっかりその気になっている。

「しかしなあ・・・・、俺ではな・・・」

ひとかけらの土地もなく、農奴としてこき使われ
黄巣のもとで流賊となって久しい温には
官に対する反発と警戒心が強い

四月、温はついに決して王重栄に降った。

同華節度使として名前を「全忠」と賜る

後梁の開祖朱全忠、中和年間のできごとである。
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