そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「百年に一度」の欺瞞

2009-02-13 00:18:45 | Economics

またまた日経新聞朝刊「経済教室」から。
2月12日付け同欄、大田弘子・政策研究大学院大学教授(前・経済財政担当大臣)の論文「供給構造の改革こそ本筋」よりメモ。

 現状は「百年に一度の危機」という言葉でひとくくりに表現されることが多い。だが何が問題で、どんな症状を呈しているかは国によって異なる。米国・欧州の状況は、全力疾走中に骨折したようなもので、ショックが極めて大きい。他方、日本の場合は内臓疾患を抱えての転倒だと私は考えている。地域経済の停滞や消費不振は、金融危機という外的ショックで起きたわけではない。構造的な問題を抱え以前から弱かった部分が、危機によってさらに弱まっているのである。したがって、骨折のように添え木で治療するというより、体質強化を伴う取り組みが不可欠である。
 (中略)
 では、日本が構造的に抱える弱みとは何か。第一はサービス産業と農業の生産性の低さであり、第二は、対日直接投資の低さなどグローバル化への取り組みの遅れであり、第三は、硬直的な雇用慣行による人材のロスである。小売業、運輸業、飲食・宿泊業などの生産性の低さは、地域経済の弱さに直結している。また、就業者の七割を占めるサービス産業で賃金が上がらなければ消費も伸びない。海外から直接投資をよびこみ、新たな発想や技術に刺激を受けながら、この分野の生産性を高めることが不可欠である。
 (中略)
 景気対策の名の下に不要な歳出まで拡大させ、弱いところを弱いままに保護しても、何ら問題は解決しなかったことを、私たちは90年代に十分に経験したはずである。

この人、大臣時代はまったく存在感無かったな、という印象ですが、まともなこと書いてますね。
特に、「百年に一度の危機」という都合のよいフレーズの欺瞞を暴いた部分や、骨折と内臓疾患の比喩などはなかなか鮮やかな表現だと思いました。
ただ、上で引用しなかった部分に書かれた具体策は、いまいちピンと来るものもなく、面白味もありませんでした。
そのあたりが理論家としては優れていたとしても、政治家としては力を発揮できなかった所以なのかもしれません。

コメント
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