2月10日日経新聞朝刊「経済教室」深尾光洋・日本経済研究センター理事長の論文「効果ない政府紙幣発行」から以下メモ。
まずは通貨発行益について。
現在の日本では、通貨発行益を認識するのに二つの方法を採用している。
日銀が市場から国債を買い入れ、代金として日銀券を売り手に渡す場合、購入した国債を日銀の資産、発行した日銀券を負債に計上する。日銀はこの段階では日銀券発行の利益を認識せず、国債からの金利収入が入った段階で日銀券製造費や経費などを差し引いた残額を利益計上する。
一方コイン発行では、政府は発行増加額の95%を発行益として認識し、5%を将来回収する際の準備金として積み立てる。このため発行増加額の95%から貨幣の鋳造コストを差し引いた額が、財政収入として計上されている。
政府と日銀で通貨発行益の認識方法が異なるのは、単なる会計方式の違いであり、日銀のほうがより保守的な(安全サイドに立った)会計方式と言えるようです。
次に、政府紙幣発行の帰結について。
政府紙幣発行で、政府は本当に将来返済しなくてよい追加歳入を手にできるのか。結論からいえば、将来のどこかでインフレにして物価を上昇させ、通貨に対する取引需要を増大させることができれば、答はイエスである。だが国民には、「インフレタックス」という負担が発生する。つまり物価上昇で通貨価値が下落するという負担である。
逆に、政府紙幣を発行してインフレにしない場合、政府は発行時点で紙幣発行益を計上できる。だが日銀収益減少による日銀から政府への納付金の減少が発生するため、政府は将来増税が必要になる。さらに巨額の政府紙幣を発行する場合には、日銀収益が赤字になり、政府から日銀への補助金が必要になることも考えられる。このように、政府紙幣発行は、将来の日銀収益を先取りするだけである。
このあたりの議論は素人には難しすぎてなかなか理解しづらいんですが、これがインフレ政策であるということは分かります。
結局のところ、インフレのマイナス面と、このままデフレが進行していくマイナス面を比較して、どっちが「まし」か、という議論に行きついちゃうのかもしれませんが・・・
ところで、政府紙幣だとか無利子国債だとか、「ちょっと変わった話」に政治家が飛びつくのには、選挙を見据えて「がんばってる」感を少しでも醸し出したいという想いもあるんでしょうね。
あるいは、鳩山総務相の郵政・オリックス叩きだとか、政府vs人事院のバトルだとかも、「悪役」を立てて「闘ってる」感を創出する戦術なんだろうなあ、などと思ったりする今日この頃です。