地震イツモノート (ポプラ文庫) | |
渥美公秀,寄藤文平 | |
ポプラ社 |
阪神・淡路大震災の被災者の意見をもとに作られた防災マニュアル本。
完璧なマニュアルを志向するのではなく、震災を経験した人たちの気持ちや工夫をノート風に集めたもので、「防災が、地震のための特別な努力ではなく、私たちのライフスタイルの中に自然に横たわるものであってほしい」との思いを込めて編集されたとのこと。
イラストも豊富で、被災者の生の体験がじんわりと伝わってきます。
「当時はガラスが一面に飛び散っていたので、今もカーテン開けっ放しは恐い。薄いレース一枚でもひいている」
「集合住宅では、全ての家のブレーカーが落ちているか確認できるまで電気を通すことができなかった。逃げるときは必ずブレーカーを落としていくことが大事」
「三日分の蓄えがあるとないとで命の分かれ目といってもいいかもしれません。缶詰、レトルト食品、無洗米、よく言われていr備蓄品でいいんです」
「笛…友人が家の中に10時間以上閉じ込められたとき欲しかったと言っていた。家は普通に立っていたので気づかれなかったそう」
等々、実際被災してみないと絶対に意識できなさそうな貴重な情報も満載。
避難所生活での生々しい体験に基づく、人間のいいところ/嫌なところについての記憶が語られている部分も印象的です。
編者によれば、普段から地域コミュニティのつながりを作っておくことが、いざというときの最大の「防災」になるという。
その通りだとは思うけど、なかなか難しいですよね。
東日本大震災が発生する以前に書かれたものなので、その点でやや複雑な感慨も抱いたりもしますが、ちょっとずつでも日常から「備え」をしておくためのヒントになるという点で、多くの人に読んでほしいと思える一冊です。