オールド・テロリスト | |
村上 龍 | |
文藝春秋 |
『希望の国のエクソダス』のレビューに書いたように、子供たちのパワーに対する期待と畏れが空回りに終わった今、老人パワーを主題にするのは理解しやすい。
だが、その描き方がちょっと自分が思っていたものと違った。
老人たちがマッチョすぎる。
今の高齢者たちの持つパワーの恐ろしさって、戦中戦後を生きてきた世代として、同時代を生き抜いてきた同質的な団結力・集団性みたいな、日常的なところにあると個人的には思っている。
「昭和の妖怪」的な空恐ろしさというのも解るのだけれど、そこじゃないだろという気がする。
老人たちが、実行犯として病んだ若者たちを利用するというのもちょっと違う。
やはりこれはこれで老人たちを買いかぶりすぎというか、高みに乗せすぎなのだ。
謎の美女・カツラギの造形と、主人公と彼女との関係性にけっこうドキドキさせられるのは望外の収穫。
テロの描写も迫力あってよいが、巣鴨の書道教室や精神科医との糸電話など、エキセントリックな場面造型が印象に残る。