そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『坂の途中の家』 角田光代

2016-12-11 18:17:23 | Books
坂の途中の家
角田光代
朝日新聞出版


凄い。
傑作、という言葉では言い尽くせない凄みがある。
文句なく、今年読んだ小説の中では群を抜いている。

主人公の女性が周囲の人たち(娘、夫、義父母、友人…)との間の価値観の齟齬を感じるや否や、坂を転がり落ちるかのように孤独と不信と焦燥に陥っていく様が物凄いリアリティで描かれていく。
そんな主人公が唯一共感を覚える相手が、補助裁判員として関わることになった実の娘の殺害の罪に問われた被告人の女性であった。
もちろん主人公は被告人の女性と言葉を交わしたことはない、これからも交わすことは決してないであろう。
だが、一つ間違えれば自分自身が被告人の立場になっていてもおかしくなかったのではないか、と考え込んでしまうような深い共感に主人公は囚われていく。
そしてその共感は、他の裁判員たちにはまったく理解されない、話がまったく噛み合わない。
おかしいのは周囲なのか、それとも自分なのか?
事件の真実はいったいどこにあったのか?
すべては闇に包まれていく。

このように、すべてを自分自身で受け止めて、悪い方へ悪い方へと深みに落ち込んでいく感覚は、出産・育児の経験の有無にかかわらず女性特有のものではなかろうか。
この繊細さは男性には表現できない。
角田光代が小説家としての一つの頂点を極めた一作と言ってよいのではないか。
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カジノ法案

2016-12-11 11:52:02 | Politcs
IR法案が「カジノ法案」として論われて騒ぎになっているようだが、またまた的外れな空論ばかりで報道を覗く気にもならない。

ギャンブル依存がどうのと言うが、ギャンブル依存になるような人は今でもパチンコやら競輪・競艇やら宝くじやらいくらでもハマる機会が豊富に用意されており、カジノができたからって、絶対量としてのギャンブル依存者の数は大して増えんと思うがね。

だいたい、国内の庶民が気軽に入れるようなカジノを作るつもりなのかね?海外観光客だけでは採算が取れないので、という説をどこかで読んだが、それが本当だったらカジノなんか作る意味が全くない。

そもそもIRやらカジノやら作ったくらいで経済成長できるほど甘いもんじゃない。
その点で推進派の議論もまやかしだと思うし、反対派も数少ない攻撃材料として大袈裟に論っているだけ。
その点でTPPと同じ構図。

まあプロレスみたいなもんだ。
トランプに比べるとかなりレベルの低いプロレスだけど。
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