![]() | 週刊文春記者が見た『SMAP解散』の瞬間 (文春ムック) |
鈴木 竜太 | |
文藝春秋 |
Kindle版にて読了。
2016年、日本の芸能界における最大の事件、SMAP解散。
その発端となったメリー喜多川女史へのインタビューを中心に、週刊文春記者が事に纏わる人間関係やエピソードをまとめた。
文春の記事を読んでいる人には既知の内容なのかもしれんが、自分のような門外漢には事態の一面に触れられて、興味深かった。
まず感じたのが、ジャニーズ事務所という集団には、創業者であるジャニー喜多川、メリー喜多川の意を深く汲んだ昭和的価値観が生き続けていること。
そして、SMAP解散問題は、大塚家具やらセブン&アイやら出光やらと同種の"創業者の後継""創業家の影響力"の問題に根ざしているということだ。
SMAPのファンには、昭和の価値観にどこか支配されている40代以上の年齢層も多い。
だからこそ、この問題が惹起する複雑な感情の渦が、大きなインパクトをもって社会に受け止められた面もあるのではないか。
アイドルとは、日本語に直訳すれば偶像だ。
ファンが「こうあってほしい」と願う姿であってこその偶像。
ずっと仲良く、チームワーク良く、明るく楽しくかっこよくあるはずの存在。
その偶像としての姿と、解散するという事実の相反が、ファンに認知的不協和を生み出し、ジャニーが悪い、メリーが悪い、工藤静香が悪いという「悪者探し」が始まる。
ところが実際には、そんな悪の権化は存在しないのだ。
それぞれが、それぞれの価値観で、それぞれの行動原理に従って行動したまでだ。
ジャニーズのタレントが、メリーさんを擁護する発言をするのも正直な気持ちからだろう。
だが、認知的不協和のレンズを通してみると、それは事務所による支配、統制であるように見える。
そんな構図なのだなと思った。