らいちゃんの家庭菜園日記

家庭菜園、家庭果樹栽培及び雑学日記

東芝問題と電気炊飯器

2017-12-21 | 時事

今月13日、東芝は半導体事業で協業する米ウエスタンデジタル(WD)との対立を解消して和解したと正式に発表しました。
半年以上にわたる係争に終止符が打たれたことから、東芝は半導体子会社「東芝メモリ」の売却によって1兆円超の売却益を得られる可能性が高まり、経営危機からの脱却に向けて大きく前進しました。

東芝を巡る問題は、「不正会計問題」と「巨額損失問題」の二点に集約されるのですが、その一つの2015年に発覚した「不正会計問題」は、歴代トップを含めた組織的関与が指摘されています。
発覚しただけでも、2008年から2014年にかけて、社長ら経営陣が各事業に対して無茶な利益目標を押しつけ、その結果、現場では利益の水増しや当期の費用の先送りなど数字の操作が常態化し、実態を反映しない「黒字」が公表され続けていたのです。

そしてもう一つの「巨額損失問題」は、不正会計問題を受けて経営陣が刷新された後に噴出した事象なのです。
東芝では、ドル箱の半導体事業とともに原子力事業を柱としてきたのですが、2006年に買収したアメリカ企業「ウェスチング社」において、2011年の原発事故以降経営が悪化し、アメリカでの原発工事の遅れによって、2016年には9657億の損失を計上することになったのです。
この為、東芝の資本が食いつぶされて一時的に自己資本がマイナスになる債務超過に陥りました。
このまま債務超過が続くと、東証の基準により1部から2部に指定替えされて、ますます苦境に陥ることになるところだったのが、どうやら最大の危機を脱出したようなのです。

その東芝は嘗て、主婦の仕事を大幅に楽にする画期的な電気製品を作ってくれました。
それは日本で初めて発売された電気炊飯器です。
ふっくらとしたご飯を自動で炊き上げる電気炊飯器は東京の町工場が開発し、昭和30年(1955年)に東京芝浦電気(現:東芝)から初めて発売されました。
東芝から開発の依頼を受けたのは下請けだった大田区の町工場「光伸社」です。
社長は大量のコメを買い、家族と一緒に寝る間を惜しんで実験を繰り返したと言われています。
苦心していた温度調節の方法も、水が蒸発して釜の温度が急上昇すると切れる仕組みを思いつき、3年かけて「東芝電気釜」の完成にこぎ着けました。
毎朝主婦が薪をくべ、かまどの前に張り付いていた生活を一変させた発明は「主婦の睡眠時間を1時間は延ばした」とも評されました。
価格は当時の大卒初任給の3分の1に相当する3200円でかなりの高額でしたが、爆発的なヒット商品になりました。

電気釜のその後の進化は目覚ましく、70年代には保温機能などが登場し、最近では土鍋など様々な内釜の素材にこだわった機種が人気となっています。
海外でも好評で、数年前には来日した中国人が高価な炊飯器を「爆買い」する現象も起きました。

今回の東芝問題は、新製品を開発しながら、こつこつと信頼を勝ち取って大企業に成長した名門企業も、ガバナンスの機能が不全に陥ると、会社存続の危機に直面するという、不名誉な事例を示してくれました。
現在、日産自動車や神戸製鋼所、スバルなど、日本の製造業の信頼を揺るがすような不祥事が次々と発覚しており、世界に誇ってきた「Made in Japan」の信頼が大きく揺らいでいます。
当該企業においては、今、原因究明が行われているようですが、これらの不祥事を産業界全体で共有し、再発防止を徹底すると共に「Made in Japan」の信頼をもう一度取り戻して欲しいものです。