前回の記事で長野県の基本高水協議会の委員の方の次の発言を引用させていただきました。
「河川砂防技術防災基準の中で欠けているのは、森林をどう見るかということで、森林整備の問題である。依然として国土交通省は、森林整備の問題は折込済みだと言っているが、森林の質、この前清水会員の岡谷の(土石流災害の)ところでクルミが一本生き残っていたという話が非常に象徴的だったが、樹種、樹齢がどうなっているかという、今日段階の森林の問題をきちんと評価していない、計算していない、それを無視しているということだ」
私も昨年7月の岡谷市の土石流災害の後、被災地を訪れ、土石流の直撃を受けても倒れなかったクスノキを見ました。前回の記事の補足としてその写真を参考までに掲載しておきます。
昨年7月の長野県の集中豪雨でもっとも被害が大きかったのが諏訪湖の西岸の岡谷市湊地区で、土石流災害により8名の尊い命が失われました。
山の中腹で崩落し、約1kmにわたってカラマツの人工林を次々になぎ倒しながら大量のカラマツと土砂と水が一体となって集落を襲ったのです。下の写真は土石流の通り道でなぎ倒されたカラマツ人工林の様子です。
間伐されずに放置されていたので、樹齢は50年近くあるはずなのですが、ヒョロヒョロで、いかにも崩落しやすそうなモヤシ状の人工林です。
上の写真は土石流の直撃を受けても倒れなかったクスノキです(写真で樹皮を見るとクスノキに見えるのですが、もしかしたらこれが住民委員の発言にあったクルミの木かも知れません。寒冷地では神社の境内にはクスを植えることはあまりないので…。葉をみないとちゃんと樹種を確認できませんが、現場で葉を確認するのを忘れてしまいました。間違っていたら申し訳ございません)。
この木は神社の境内にあったもので、樹齢は百数十年程度と思われます。ちなみに、ここにあった神社の本殿は土石流に飲み込まれて跡形もなく消え去っていました。
土石流の通り道に存在したカラマツは全てなぎ倒され、土石流を雪ダルマのように膨れ上がらせていきました。その土石流のエネルギーは神社の建物を跡形もなく消滅させるほどのものでした。
それでも、このクスノキだけは多少傾いても、倒れずに踏ん張っていたのは何とも印象的でした。この木があったおかげで、土石流のエネルギーはこの場所で多少は減衰させています。
カラマツは根が浅く、土砂災害に耐える力はありませんが、根が深くまで張る深根性の広葉樹ならこの通り、土石流にも耐えられるのです。
ちなみに、災害現場のカラマツ人工林は50年ほど前に植えたものだそうです。それ以前は天然林だったというわけではなく、戦後の食糧難の時期には一面の畑だったそうです。
岡谷は日本における産業革命発祥の地です。明治時代に近代的な製糸産業が芽生えたのは、この場所でした。ですので、おそらくは、明治時代から山の上方まで開墾されて桑畑になっていたのではないかと思います。
ですので、もちろん畑の跡地に造林したのは正解でした。問題は選ばれた樹種が浅根性のカラマツだったということです。
深根性の落葉広葉樹であるクヌギ、コナラ、ミズナラなどを植栽していれば、今回のような土石流は発生しなかったかも知れません。もちろん再現実験をすることなど不可能なので断定はできませんが・・・。
しかしクヌギやコナラならば、カラマツほど崩落しやすくないことは確かです。少なくとも災害リスクを軽減させることができます。
土石流跡地で造林する際は、クヌギやコナラを選んで欲しいと願います。
昨年の災害経験でも分かるとおり、洪水よりも怖いのは土石流などの土砂災害です。巨額を投じてもわずかな流域面積しかカバーできない治水ダム建設は、土砂災害対策としては費用対効果の面で全く不適当です。
浅川ダムに投じるムダな100億円があるのなら、その100億円で県内にある崩落しやすいカラマツ人工林のかなりの部分において間伐を実施し、クヌギやコナラの混じった針広混交林に換えるという森林整備事業を実施することが可能なはずなのです。100億円でカラマツ人工林の森林整備を行えば、おそらく10万ヘクタール近くをカバーできると思います。他方、100億円の浅川ダムがカバーする領域は数百ヘクタール程度でしょう。桁が三つくらい違うのです。
村井知事が災害対策を真剣に考えているのなら、先ずは森林整備を実施することだと思います。
「河川砂防技術防災基準の中で欠けているのは、森林をどう見るかということで、森林整備の問題である。依然として国土交通省は、森林整備の問題は折込済みだと言っているが、森林の質、この前清水会員の岡谷の(土石流災害の)ところでクルミが一本生き残っていたという話が非常に象徴的だったが、樹種、樹齢がどうなっているかという、今日段階の森林の問題をきちんと評価していない、計算していない、それを無視しているということだ」
私も昨年7月の岡谷市の土石流災害の後、被災地を訪れ、土石流の直撃を受けても倒れなかったクスノキを見ました。前回の記事の補足としてその写真を参考までに掲載しておきます。
昨年7月の長野県の集中豪雨でもっとも被害が大きかったのが諏訪湖の西岸の岡谷市湊地区で、土石流災害により8名の尊い命が失われました。
山の中腹で崩落し、約1kmにわたってカラマツの人工林を次々になぎ倒しながら大量のカラマツと土砂と水が一体となって集落を襲ったのです。下の写真は土石流の通り道でなぎ倒されたカラマツ人工林の様子です。
間伐されずに放置されていたので、樹齢は50年近くあるはずなのですが、ヒョロヒョロで、いかにも崩落しやすそうなモヤシ状の人工林です。
上の写真は土石流の直撃を受けても倒れなかったクスノキです(写真で樹皮を見るとクスノキに見えるのですが、もしかしたらこれが住民委員の発言にあったクルミの木かも知れません。寒冷地では神社の境内にはクスを植えることはあまりないので…。葉をみないとちゃんと樹種を確認できませんが、現場で葉を確認するのを忘れてしまいました。間違っていたら申し訳ございません)。
この木は神社の境内にあったもので、樹齢は百数十年程度と思われます。ちなみに、ここにあった神社の本殿は土石流に飲み込まれて跡形もなく消え去っていました。
土石流の通り道に存在したカラマツは全てなぎ倒され、土石流を雪ダルマのように膨れ上がらせていきました。その土石流のエネルギーは神社の建物を跡形もなく消滅させるほどのものでした。
それでも、このクスノキだけは多少傾いても、倒れずに踏ん張っていたのは何とも印象的でした。この木があったおかげで、土石流のエネルギーはこの場所で多少は減衰させています。
カラマツは根が浅く、土砂災害に耐える力はありませんが、根が深くまで張る深根性の広葉樹ならこの通り、土石流にも耐えられるのです。
ちなみに、災害現場のカラマツ人工林は50年ほど前に植えたものだそうです。それ以前は天然林だったというわけではなく、戦後の食糧難の時期には一面の畑だったそうです。
岡谷は日本における産業革命発祥の地です。明治時代に近代的な製糸産業が芽生えたのは、この場所でした。ですので、おそらくは、明治時代から山の上方まで開墾されて桑畑になっていたのではないかと思います。
ですので、もちろん畑の跡地に造林したのは正解でした。問題は選ばれた樹種が浅根性のカラマツだったということです。
深根性の落葉広葉樹であるクヌギ、コナラ、ミズナラなどを植栽していれば、今回のような土石流は発生しなかったかも知れません。もちろん再現実験をすることなど不可能なので断定はできませんが・・・。
しかしクヌギやコナラならば、カラマツほど崩落しやすくないことは確かです。少なくとも災害リスクを軽減させることができます。
土石流跡地で造林する際は、クヌギやコナラを選んで欲しいと願います。
昨年の災害経験でも分かるとおり、洪水よりも怖いのは土石流などの土砂災害です。巨額を投じてもわずかな流域面積しかカバーできない治水ダム建設は、土砂災害対策としては費用対効果の面で全く不適当です。
浅川ダムに投じるムダな100億円があるのなら、その100億円で県内にある崩落しやすいカラマツ人工林のかなりの部分において間伐を実施し、クヌギやコナラの混じった針広混交林に換えるという森林整備事業を実施することが可能なはずなのです。100億円でカラマツ人工林の森林整備を行えば、おそらく10万ヘクタール近くをカバーできると思います。他方、100億円の浅川ダムがカバーする領域は数百ヘクタール程度でしょう。桁が三つくらい違うのです。
村井知事が災害対策を真剣に考えているのなら、先ずは森林整備を実施することだと思います。
間伐材を斜面に崩壊防止の杭として打ち込むという作業も相当に有効かも知れません。
いずれにせよ、ダムにバカな大金を注ぐよりはそっちの方がよっぽど災害対策として有用だと思います。
地平線の向こうまで単一作物でなければ採算が合わない巨大コンバインでも使っているのでしょうか?
当面の河川局の問題に関しては、私は、河川局を国交省から切り離し、林野庁を農水省から切り離し、その両者を統合して、森と川を一体的に管理する、つまり治山と治水を統合する新しい行政機関をつくってしまうのが手っ取り早いかと存じます。
森林河川庁といった名称の行政機関にして、それは環境省に組み込んでしまうというのは如何でしょうか。
そうすれば、従来の治水予算を治山予算に転用するのは容易になると思います。
ダム建設に血道をあげてきた河川局の余剰人材の配置転換も容易になるでしょう。
その横の広葉樹には小枝は少し折れた以外は何の影響もありません。
針葉樹の植林地がいかに風水害にもろいものかが判ります。
水俣の土石流被害も杉の植林地から始まっていると聞いています。
もし、適切に管理して間伐などが行われていたら土石流は起こらなかったかも知れません。
起こったとしても人的被害にまで至らなかったかも知れません。
広葉樹であればさらに良かったかも知れません。
人工林を放置し、その結果、被害後の災害復旧に莫大な税金を費やしているのです。
ダム建設はダムそのものの効果の検証以前に、国の予算のシステム、狭い縦割り行政の弊害など、根本の問題の改革をしなければ改まらないと思います。
河川局の仕事として行っていることは、河川管理の名の下に、いかに前年と同じ規模の予算をつけるかを仕事としているのです。
そのためには空港の需要予測と同じように結論のための数値の操作で、財務省の予算査定そして、自らも今後の責任が及ばないようにしているだけなのです。
都合の良いものは採用し、都合の悪い部分は切り捨てることになるのです。
予算のシステムを改めることが第一ですが、予算の執行機関と、予算の要求機関を別にすることも必要です。