昨日の記事で書いた、「森林が成長し、その質が高まっていけば、森林面積は一定であっても、同規模の雨量の際の洪水流量は低減していく」という論点に関してもう少し加筆させていただきます。
長野県林務部の薄川の研究では、森林を考慮に入れた実際の基本高水流量(想定する降雨の際の洪水時のピーク流量)は、ダム計画において採用されている架空の「基本高水流量」(実際の観測に基づかず、経験値であるパラメーターを用いてシミュレーションされている架空の値)よりも40%ほど低くなる可能性が指摘されました。
ところが、河川によっては、基本高水流量の「水増し評価」の実態は、40%どころの騒ぎではないようです。長野県では、現在、ダム計画で採用されている基本高水流量が妥当か否かをめぐって、洪水時の流量の観測が行なわれるようになっています。
昨年の台風23号の際に、長野市の浅川で得られた観測結果は恐るべきもので、私は思わず戦慄せずにはいられませんでした。
県営浅川ダムの建設計画においては、「100年に一度の確率の雨量」を想定して、基本高水流量が定められています。この100年に一度の想定雨量は、24時間雨量で130ミリというものでした。ダム計画では、浅川と千曲川の合流地点での最大ピーク流量は「450立法メートル/秒」というシミュレーション結果がなされ、それに基づいてダム建設が計画されました。
昨年の台風23号では、24時間雨量で125.5ミリという、ほぼ「100年に一度」の想定雨量に匹敵する降雨があったのです。
県のダム計画における洪水シミュレーションでは、百年に一度の降雨がくれば長野市の富竹地区においては260立方メートル/秒が流れるはずでした。ところが、県側の実際の観測結果によれば、台風23号の際の富竹地区でのピーク流量は「43.8立方メートル/秒くらいとみている」のだそうです(『信濃毎日新聞』11月30日)。ダム計画のじつに6分の1の値なのです。
もちろん、シミュレーションの結果は雨の降り方にも依存するので、一概には比べられないのですが、いくらなんでも6分の1という数字はひどすぎるといえるでしょう。県は、基本高水流量を、実際の値よりも6倍も水増ししている可能性があるのです。1.5倍という程度の水準の水増しなら可愛いものですが、何と、じつに6倍なのです!
実際の観測に基づかず、経験値のパラメーターを恣意的に適用することによって、如何に途方もない数字が捏造されているか分かるかと思います。本当に、言葉を失います。
仮に、測定値に2倍というあり得ない誤差があったとしても、それでも、ダム計画における計算洪水流量は、実際の洪水流量の3倍も高目に見積もられていることになります。
その架空の数字を根拠に、彼らはダム計画を立てていたのです。
長野県は、ただちに、県の林務部の加藤氏らが構築した「森林の状態を考慮した貯留関数法」によって、新しくシミュレーションをやり直すべきでしょう。
そして、昨年の一連の洪水実績に関して、「県の既存モデル(経験的パラメーターによる貯留関数法)」と「林務部モデル(実際の観測結果と森林貯留量を反映させたパラメーターによる貯留関数法)」のどちらでシミュレーションすれば、実際の観測値に近い値になるのかを直ちに計算し、その結果を公表すべきでしょう。
もちろん、誤差が少なく、より洪水流量を実測値に近い精度でシミュレーションできるモデルが「よいモデル」なのであり、そちらを河川計画に採用すべきです。
かつて、長野県の光家康夫・土木部長は「森林の治水機能を科学的に検証する方法が確立されていない」という理由で、森林をダムの代替案から退けようとしました。そして、長野県内のマスコミは、素直にそれを受け取って、森林は代替案とならないという論調を維持しました。
その間に、吉野川流域ビジョン21委員会や長野県の林務部が、森林の状態を反映させて洪水流量をシミュレーションするモデルをそれぞれ開発していたのです。
私は信州人なのですが、ちょっと信州のメディアは不勉強すぎると思われます。同じようにダムで揉めている熊本県の熊本日日新聞は、森林による代替案の可能性を客観的な立場でちゃんと報道しています。その点、信州人として、非常に恥かしく思います。
長野県林務部の薄川の研究では、森林を考慮に入れた実際の基本高水流量(想定する降雨の際の洪水時のピーク流量)は、ダム計画において採用されている架空の「基本高水流量」(実際の観測に基づかず、経験値であるパラメーターを用いてシミュレーションされている架空の値)よりも40%ほど低くなる可能性が指摘されました。
ところが、河川によっては、基本高水流量の「水増し評価」の実態は、40%どころの騒ぎではないようです。長野県では、現在、ダム計画で採用されている基本高水流量が妥当か否かをめぐって、洪水時の流量の観測が行なわれるようになっています。
昨年の台風23号の際に、長野市の浅川で得られた観測結果は恐るべきもので、私は思わず戦慄せずにはいられませんでした。
県営浅川ダムの建設計画においては、「100年に一度の確率の雨量」を想定して、基本高水流量が定められています。この100年に一度の想定雨量は、24時間雨量で130ミリというものでした。ダム計画では、浅川と千曲川の合流地点での最大ピーク流量は「450立法メートル/秒」というシミュレーション結果がなされ、それに基づいてダム建設が計画されました。
昨年の台風23号では、24時間雨量で125.5ミリという、ほぼ「100年に一度」の想定雨量に匹敵する降雨があったのです。
県のダム計画における洪水シミュレーションでは、百年に一度の降雨がくれば長野市の富竹地区においては260立方メートル/秒が流れるはずでした。ところが、県側の実際の観測結果によれば、台風23号の際の富竹地区でのピーク流量は「43.8立方メートル/秒くらいとみている」のだそうです(『信濃毎日新聞』11月30日)。ダム計画のじつに6分の1の値なのです。
もちろん、シミュレーションの結果は雨の降り方にも依存するので、一概には比べられないのですが、いくらなんでも6分の1という数字はひどすぎるといえるでしょう。県は、基本高水流量を、実際の値よりも6倍も水増ししている可能性があるのです。1.5倍という程度の水準の水増しなら可愛いものですが、何と、じつに6倍なのです!
実際の観測に基づかず、経験値のパラメーターを恣意的に適用することによって、如何に途方もない数字が捏造されているか分かるかと思います。本当に、言葉を失います。
仮に、測定値に2倍というあり得ない誤差があったとしても、それでも、ダム計画における計算洪水流量は、実際の洪水流量の3倍も高目に見積もられていることになります。
その架空の数字を根拠に、彼らはダム計画を立てていたのです。
長野県は、ただちに、県の林務部の加藤氏らが構築した「森林の状態を考慮した貯留関数法」によって、新しくシミュレーションをやり直すべきでしょう。
そして、昨年の一連の洪水実績に関して、「県の既存モデル(経験的パラメーターによる貯留関数法)」と「林務部モデル(実際の観測結果と森林貯留量を反映させたパラメーターによる貯留関数法)」のどちらでシミュレーションすれば、実際の観測値に近い値になるのかを直ちに計算し、その結果を公表すべきでしょう。
もちろん、誤差が少なく、より洪水流量を実測値に近い精度でシミュレーションできるモデルが「よいモデル」なのであり、そちらを河川計画に採用すべきです。
かつて、長野県の光家康夫・土木部長は「森林の治水機能を科学的に検証する方法が確立されていない」という理由で、森林をダムの代替案から退けようとしました。そして、長野県内のマスコミは、素直にそれを受け取って、森林は代替案とならないという論調を維持しました。
その間に、吉野川流域ビジョン21委員会や長野県の林務部が、森林の状態を反映させて洪水流量をシミュレーションするモデルをそれぞれ開発していたのです。
私は信州人なのですが、ちょっと信州のメディアは不勉強すぎると思われます。同じようにダムで揉めている熊本県の熊本日日新聞は、森林による代替案の可能性を客観的な立場でちゃんと報道しています。その点、信州人として、非常に恥かしく思います。
ブッシュ=小泉政治の末期的状況に絶望的になり、不安とストレスで押しつぶされそうになっておりましたので、せめて何かできることはないかと考え、ささやかなブログをつくり始めました。
また、『緑のダム』(築地書簡)の出版を契機に、少しでも論議を盛り上げたいとも思っています。
ひめのさんのブログもたびたび拝読いたしております。よろしくお願いいたします。