代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

日本学術会議の基本高水検証への質問状

2011年09月16日 | 治水と緑のダム
 日本学術会議でダム建設の根拠となる「記号」、基本高水の再検証が行われてきたことはこのブログで報じてきたとおりです。
 この検証についての公開説明会が9月28日に開かれるそうです。下記ページから参加申し込みできます。なんと締切が今日でした。興味ある方ぜひどうぞ。質問も1000字以内で書き込めます。
 最終的な回答書も同じ下記ページからダウンロードできます。

http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/giji-kihontakamizu.html

 学術会議回答書の一部を紹介します。下の図はクリックすると拡大されます。拡大したものをよく見てください。

*****引用開始******

京大モデル(クリックで拡大)
※赤がモデルの計算値で青が実績値


東大モデル(クリックで拡大)
※赤い波線が計算値で黒の実線が実績値

(前略)
 近年の観測データを用いてキャリブレーションされた京都大学および東京大学が有する2つの異なる連続時間分布型モデルを、モデルパラメータを変化させることなく観測データのある昭和33、34年、57年、平成10年の6月1日より10月31日まで連続的に適用し、その再現性を検討した。両モデルによる各年の洪水ピーク付近の再現性をそれぞれ図8、9に示す。両モデルともに適合性は良好で、観測値とシミュレーション結果との間で経時的な変化は見られなかった。
(後略)

****引用終わり******

 読者の皆様、これら京大モデルと東大モデルの図を見て、「適合性は良好」「経時的な変化は見られなかった」という学術会議の説明に納得できますか?
 この回答書に対して、私が送った質問状を公開します。

***以下、私の質問内容*****

(1)学術会議の「回答」16と17頁に京大モデルと東大モデルの再現計算があります。いずれも適合性が良いのは昭和33年のみで、他洪水では「適合性は悪く」、また時代が下ると実績流量が下がるという「経時的変化が見られ」ます。一般国民のほとんどが、回答の記述内容(適合性良好で経時的変化なし)に目を疑うでしょう。昭和33年と平成10年洪水を比べると同じような降雨波形であるにも関わらず、実績流量が計算流量に比べ10%以上低下しています。これが森林保水力増加の結果でないとするのなら、いかなる理由によるものなのか説明していただきたく存じます。

(2)そもそも今回の検証は、昭和30年代の洪水と近年の洪水とでは経時的変化が確認されたことから、近年の洪水をもとに計算モデルを再構築しようと始まったのです。昭和33年洪水に適合し、平成10年洪水では10%以上も乖離するモデルで再現計算を行うことは検証の趣旨に反するのです。京大と東大には、昭和57年や平成10年洪水に適合するようにモデルを再構築し、それを元にカスリーン台風の再来計算を行うと計算流量はいくらになるのか提示していただきたく存じます。国民の税金を使って国民の期待を裏切るような検証をすることは許されることではありません。

(3)国交省の貯留関数法の新モデル(39分割モデル)と旧モデル(54分割モデル)を比べると、Kの値が平均で45から23へと半分に減っています。Kがこれだけ減れば、飽和雨量が増えても、それを相殺するように計算流量は元の過大な値のままになっていまいます。しかるにKの値が何故半分になるのか、全く合理的な説明がありません。ちゃんと説明していただきたく存じます。

(4)中規模洪水から組み立てたモデルで大規模洪水を計算すると適合しなくなるのではないかということは、貴分科会の委員からも指摘されていました。なぜこの検証を避けたのか説明していただきたく存じます。利根川ではできなくとも、大規模豪雨が頻繁に降る九州などを事例にすればできると存じます。中規模洪水から組み立てたモデルが実際に観測された大規模洪水に適合するか検証すればよいだけのことです。なぜそのような作業が行われないのか説明していただきたく存じます。それが検証されない限り、全国すべての河川の基本高水は砂上の楼閣でしかありません。
 

 


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