フィリピンのドゥテルテ大統領が来日した。彼がやっている麻薬常習者の超法規的殺害は、もちろん法治国家においては許されてはならないことである。しかも、麻薬常習者のみならず、麻薬を吸引したこともない一般市民まで巻き添えになってフィリピン国家警察に殺されている。看過できる事態ではない。
ドゥテルテ大統領は安倍首相に対して南シナ海問題を、「法の支配の下」平和的に解決したいと言ったそうであるが、彼の口から「法の支配」という言葉が発せられること自体、ブラックジョークにしか聞こえない。
しかしながら、アメリカ政府が「法治主義を守れ」とドゥテルテ大統領を批判しても、説得力はないのも事実である。それこそCIAは、外国政府要人から一般市民まで数多くの無辜の命を「超法規的」に殺害してきた。米軍は、アフガニスタンやイラク等で、空爆で一般市民を虐殺しても、「付随的被害」と呼んで涼しい顔をしている。アフガニスタンの病院を誤爆して患者と医師の尊い生命を奪っても深刻な反省の色も見られない。米国内では、警官たちが丸腰で無抵抗の黒人を射殺している。米国のその「人権感覚」では、ドゥテルテ大統領を批判することなどできないだろう。
それにしても、以前の米国であったら、ドゥテルテ大統領のような人物に対しては、それこそCIA傘下のジャッカルが動き出して、「超法規的措置」を下しそうなものであるが、アメリカにはもはやそれもできなくなっているようだ。ドゥテルテがピンピンしながら反米発言を繰り返しているというその事実そのものが、米国覇権の終焉を雄弁にものがたっている。
アメリカがドゥテルテの超法規的措置を批判することに対しては、「自分の胸に手を当ててみな」と言いたくなってくる感情を抑えられないが、それとは別にドゥテルテの行っている超法規的殺人は止めさせなければならない。日本も、ドゥテルテの麻薬対策に協力しながら、なお殺人は止めさせるよう促すべきであろう。
麻薬常習犯の更生に財政資金を投入するくらいなら、殺した方が安あがりだというのがドゥテルテの考えだろう。
日本が、ドゥテルテに伝える必要があるのは、かつて台湾で後藤新平(台湾総督府の民政長官)が行ったような麻薬漸禁策であろう。後藤は、阿片中毒者にいきなり全面禁止するのは無理と見て、阿片の吸引を免許制にして、中毒者を統制下に置くとともに、阿片を総督府の専売制とし、財政収入源とし、漸次、阿片吸飲者を減らしていく政策をとった。
フィリピンには300万人と言われる麻薬常習者がいるという。後藤新平がやったように、合法化と引き換えに、吸飲者を全員登録させて、政府専売にして財政資金も確保しつつ、麻薬密売組織など闇社会の資金源を断つのがもっとも懸命な麻薬対策だと思う。
さて、既にご存知かもしれませんがたまに見に行く勝川俊雄氏のサイトがドゥテルテの「禁漁区」政策をほめてます。
http://katukawa.com/?p=6096
「中国人は海の魚を食べてはいけない」というつもりはありませんが、中国の政府や漁民が海の魚を愛着を持って楽しむ、ということは期待しないほうがよさそうな感じです。というか、勝川氏は以前から日本の水産行政のまずさを批判してきたのですが、この記事でも日中の不確定領土周辺での漁業で日本側が大きな失策をしたことを指摘しています。
日本近海ではエチゼンクラゲしか上がらなくなり、ドゥテルテ大統領が「独裁者」として失脚したとしても「みんな中国のせいだ」にすればいいやという人が大多数だと思うと暗澹としてきます。
ドゥテルテの禁漁区提案、教えて下さって御礼申し上げます。知りませんでした。
最近のドゥテルテさん、落ち着いてきて、だんだんいい感じになってきましたね。安倍さんの軍拡提案も軽くいなしたりして(ミサイル発言の真偽はよくわかりませんが)・・・・・。安倍さんより良識あるかも知れません。