日本の古い記録絵に、思い入れがあります。
絵というのは、基本的に見たことを描くわけですが、
その見え方に、同じ人間観を見たりする瞬間があって、
そういった種類のコミュニケーションに出会えると、深く感動します。
特に日本の絵画の場合、
描画素材が筆であって、その線の柔らかさがなんとも言えず、いい。
筆書きというのは下絵を描くとか、
やり直しをするというのが出来ないのではないかと思うのですが、
でもその分、一期一会性が高まって、
筆使いに覚悟のようなものが漂ってくる。
一本の線に、感受性のすべてが込められているような
そういった気概を感じる部分ですね。
西洋絵画は、基本的に油絵で塗り込んで塗り込んで
修正しながら、作り上げていくのに対して
筆絵では必然的に精神性が高まって行くような気がする。
建築でも、石造りが基本の西洋文化に対して、
ほっそりとした木造が基本である日本建築の違いにも似ている。
長谷川等伯の松林図など、まぁあれは墨絵であって
ぼかしなどの手法も使われているのですが、
このような「精神性」が高まっていくことがわかる。
絵師という職業は、日本ではどのように成立し、
そして伝承してきたのか、専門ではないのでわかりませんが、
大衆がこうした文化に金を自分で払えるようになる前には
仏教などの宗教画などが主要なパトロンだったのでしょうね。
ただ、やはり面白みを深く感じるのは、
この絵のような庶民の様子を描いた作品。
実に簡単な線で描画しながら、
たいへん豊かな人情の機微のようなものが伝わってくる。
たぶん、絵師自身もこうした名もない庶民の出であるに違いなく
人間の動作描写も、深い理解がその根底にあるように感じられる。
伝統演劇の体動作表現に感心したりすることが多いのですが、
そういう部分とも繋がっているものを感じます。
こういう絵を飽きずに見ていたい、というのがささやかな夢です。
なでしこジャパン、すごい。
女性が元気がいい社会って、やはりいい。
元気をくれてありがとう。