全く予想していなかったのだが、エラリー・クイーン国名シリーズの最終巻が刊行された。これは素直にうれしい。表紙カバーのイラストも従来の流れのまま。帯には「国名シリーズ<プラス>最終巻!!」と謳われている。
だが、この作品は本来は国名シリーズではない。1958年に創元推理文庫から「ニッポン樫鳥の謎」として出されたが、原題は The Door Between 。登場人物が日本と関係しており、日本に関する記述があることから強引に国名シリーズに加えたと推測できる。ただ、年代的には「スペイン岬…」が1935年、スエーデン燐寸の秘密としても良かったと前書きに触れられていた「中途の家」が36年、そして37年がこの作品なので、実は国名シリーズの流れを汲んでいたと言えるのかもしれない。今回の角川文庫版も原題に加えて「日本カシドリの秘密」としているのはなかなかではないか!これで、創元版「ニッポン樫鳥の謎」の新訳と判断もできる。
ともかく早速読みたくて地元の書店に向かった。だがどこにも置いていない。結局札幌駅前の紀伊國屋書店に行ってみた。だが、そこにもなかった。最終的に店員さんに聞いたら調べてくれて、入荷はしていますと持ってきてくれた。店頭に並べられていなかったようだが、購入後に見たら発行日は6月25日となっていた。1週間前に入手したのはフライングゲットだったのだろうか?
今現在「サスペンス作家が殺人を邪魔するには」を読んでいる(これはこれで面白い)ので、お楽しみはあと数日後である。
<追記>
読了。数十年ぶりの再読だったが初読と言って良い面白さを味わえた。やはりこの作品のタイトルは「日本カシドリの秘密」とした方が良いのでは。読んで頂ければその意味はわかってもらえるだろう。確かに「境界の扉」という言葉も重要なのだが。
クイーンの日本への理解を存分に発揮した本書だが、まさかその数年後にアメリカと日本が敵国同士になるとは、誠に残念な歴史の流れである。