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最初に、なぜ私はフランス好きなのだろうか。
小学生の頃クラシック音楽をよく聴いていた私は、その後ラジオの番組で映画音楽に惹かれるようになる。その代表的なものがフランシス・レイ、ミシェル・ルグラン、モーリス・ジャールなどフランスの音楽であった。その後にクラシックのラヴェルやドビュッシーも大好きになり、まずは音楽における影響が私のフランス好きのバックボーンである。
また、当時民放ラジオのヒットチャート番組で、初めて電話リクエストしたのもミッシェル・ポルナレフの「シェリーにくちづけ」だった。この曲を最初に聴いたときの衝撃は忘れられない。中学生の頃はイギリスのプログレッシブ・ロックに目覚めたが、キング・クリムズンの難解な詩の影響か、高校時代はフランスの詩人マラルメの存在を知りかじり読むようになった。であるから初めての海外旅行の時にはビートルズの国であるイギリスとフランスの両国を外すわけにはいかず、当然のごとくパリを訪問した。その後フランスへは4回出向いている。
89年、初めてのパリ旅行。良くある話だが知人にブランド物の購入を頼まれ、ルイ・ヴィトン本店に行ったことがある(写真)。私はそれまでその手の物には全く興味関心がなかったのだが、本店のシンプルだが高級感あるたたずまいには何か違う雰囲気を感じた。しかし案の定、日本人の買い物客が多く来店しておりさっさと頼まれた物を買って終わりにしたいと思ったが、当地の店では一組の客に店員が一人ついて、その対応が終わるまで他の客は待たねばならない制度?になっていた。従って店内でしばらく商品を見て歩いた。私はヴィトンを間近に見たのは初めてであったが、いろいろ見ているうちに何となく惹かれるものがあった。それで最終的に父への土産として二つ折りの財布も買うことにした。
さすがにそこでは英語が通じるので、挨拶はフランス語、その他の会話は英語で行ったところ、私を担当してくれた若い女性店員がとても愛想が良く、にこやかに対応してくれた。「どちらからいらしたの?」「日本の北海道というところです。わかります?」「雪の多い所よね?」などのやりとりをしたことを覚えている。同行していた友人から後に「お前、随分気に入れられていたみたいだぞ。」と言われ、確かにその彼女からヴィトンの製品カタログである厚い冊子を渡されたのだが、他の客にはそんな対応がなされていなかったそうだ。というわけで、今その財布は私が使い、ルイ・ヴィトンだけは私のお気に入りのブランドとなっている。