世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

彼の背中

2010年10月07日 22時07分14秒 | Weblog
仕事で面倒臭い事柄に巻き込まれた。悪の根元は支払い関係を杜撰に対応している某部署だ。勘弁してほしい。私のせいにされそうになったので、とっさにパス!でも皆が皆パスを行うので、もうね、円陣パス状態…。その輪から抜け出すのが大変だった。もうあの部署には関わりたくない。疲れる。

苛々しながら他の建物に行く。帰り道、私の前を歩く大柄な殿方を発見。
あのクマみたいな風貌は紛れもなく当社の社長である。先述の件で「今日はあまり人に関わらないようにしよう」と決めていたので、社長とは適度な距離を保ってその背後を歩いていた。

ふと、彼は停止した。
何?どうした?エンジンが切れたか?

ふらふらと金木犀の木に近づく社長。先日、私が写真に収めたあの木だ。
彼は金木犀に顔を近づけて、その香りを嗅ぎ、うっとりとしていた。
それからまたノソノソと歩き出していく。クマみたいに。

するとまた停止。
今度は何?電池、切れたか?もう花は咲いてないよ?

次に彼が手に取ったのは道端に繁っていた猫じゃらしであった。
そう来たかー!!
星飛雄馬の姉・明子のように、物陰からそっと社長を見守っていた私は驚いた。
なぜならば、彼は猫じゃらしを左右に振り、楽しそうだったからだ。

私の社長は質実剛健な人で、大人しい。
仕事に厳しく、あまり笑わない。非常に真面目な経営者だ。
そんな彼が見せた少年のような様子は、とげとげしていた私の心を優しくさせた。
嗚呼、彼にも少年時代があったんだよなあって。

そういえば、私が花を愛でるようになったのは母の影響だが、社長の影響も多少受けている。
数年前のある日の朝礼で、彼は「道端で知らない花を見かけると、図鑑でその名前を調べている」と言った。
なんて素敵な趣味なのだろうと思った私は、あの日以来、花の名前に興味を持つようになった。
彼が言いたかったのは、「何にでも疑問を持ったものを調べることの重要性」であった。ちょっと本意とはズレてしまったが、彼の言葉は私の中で生きている。
「学ぶ」は「真似る」が語源。
彼の趣味を真似ることでたくさんのことを学べた。

猫じゃらしを振りながら帰宅する彼の背中に、私はそっと感謝をした。

今日の画像は七変化。尾道で撮影したもの。
コメント (2)