世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

(劇)レインボウ城!「こどもはミルクでよっぱらう♪」

2010年10月17日 | Weblog
(劇)レインボウ城!さんの芝居を観にいく。
会社の先輩紳士の所属する劇団である。

今日は浦和の公演。
浦和駅西口の「うなこちゃん」の前で後輩女子Cちゃんと待ち合わせ。

Cちゃんは若干遅れるとのことなので、一人で市民会館まで歩いた。

第10回さいたま市民演劇祭
「こどもはミルクでよっぱらう♪」
私設図書館館長と商店街の人々の話。
絵本を紐解くと、その時代にワープするのだが、その設定がすごく良かった。
勿論、今回もレインボウ城!さんの持ち味である笑いがふんだんに撒き散らされていて、クスって笑えるのだが、ジーンとさせられる。そのバランスが絶妙。
今日は「くだらないことの大切さ」「呪いの言葉を使い続けていると醜くなること」を知った。それが今日のお土産であり宿題。

公演後、いつもCちゃんと私は無言になる。
配布されたアンケートを書くからだ。
カリカリカリ…。

私とCちゃんは前野ハトゥーン姫のファンで、いつも憧れている。
今日もハト姫はしなやかな動きと透き通る声、キレのある演技で我々を圧倒させた。

芝居のあとは、喫茶店で感想を述べ合うのが我々の定番コースだ。
浦和パインズホテルの近くの「カフェ ヴォアール」にて。
私はモンブラン。Cちゃんはミルクレープ。
モンブランはリキュールたっぷりで大人の味だった。
亮子はモンブランでよっぱらう♪
中に和栗が入っていて、それが上品な甘さでうっとりんこ。

吉熊もケーキの美味しさに目を細めていた。

「あの場面のあの台詞、笑える~」
「あの衣装、いいよね」
「今日のテーマってさ…」
そんな感想がいつの間にか会社の噂話に発展するのもいつものことだ。
最近の鬱憤を彼女に話したら大した事ではなく思えてきた。
それもCちゃんの不思議な持ち味だと思う。

浦和の商店街を散策し、19時半の電車で浦和を後にした。
明日からまた仕事。
「14時間後にはまた会社で会っているんですね…」というCちゃんの言葉、切ない。
さて、また一週間、頑張ろう。

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「上村松園展 珠玉の決定版」

2010年10月17日 | Weblog
東京国立近代美術館に行ってきた。




「上村松園展 珠玉の決定版」


上村松園は明治8年生まれの女流日本画家。京都に生まれ育ち、「美人画」を描いた。
彼女の描く絵はどれも繊細で息を呑むものばかりだ。

私の自宅の机には一枚のポストカードが飾られている。
それは上村松園の「花がたみ」だ。

着物に描かれた精緻な柄がただ単に好みだったのだが、それ以上に、この女性の妖艶な顔立ちが気になっていた。
音声ガイドによると、この絵の女性は謡曲「花筐」の登場人物、「照日の前」。即位して京に行ってしまった継体天皇を恋しがり、精神を病んでしまった。継体天皇を追って京にたどり着き、紅葉狩りをしている彼の前で舞い狂った照日の舞。その様子を描いた絵だ。花かごは、継体天皇が形見の品として、照日の前にあげたもの。
この絵を描くにあたり、松園は精神病院に行って患者の姿をスケッチしたり、能面の十寸髪を顔の参考にしたらしい。
私が毎日机に向かっているときに目にする彼女には、そんな物語があったのか。


続いて気になっていた作品「楊貴妃」

前から観たかった。「やっと会えたね」(辻人成)状態。
着物の透け具合が絶妙。シースルーの触感が綺麗に表現されている。清涼感溢れる作品だ。


「雪月花」

右側の絵の御簾に注目。一本一本丹念に描かれている。御簾越し(「透影」という)の女性って美しく見えるらしい。
そういえば、源氏物語でもそんなシーンがあった。蹴鞠遊びで疲れた夕霧と柏木が階段に腰掛けて休んでいた時、小猫が大きい猫に追いかけられて飛び出した。首紐は御簾の端を捉え、ちょうど女三の宮が立っている前の御簾を跳ね上げる。柏木の目に女三の宮の姿が飛び込んでくるあのシーンだ。
全容がはっきり見えるよりも、「ちょっとだけよ~」ってな具合の方が萌える…という日本独自の文化は古いのかもしれない。


「鴛鴦髷」

上村松園は日本髪の美しさが好きだった。幼少時代から、様々な髷を考案しては近所の幼友達にそれを結ってあげていた。そして自身の描く女性の髪にも様々な髷を結わせた。


「待月」

これも好き。秋の宵、肘をついて月の出を待ちわびる女。日本画らしい余白を活かした構図で、月が昇ってくるような夜空の広がりを見事に表現している。
「ワクワクテカテカ!」とか言っていそう。


「伊勢大輔」

三十六歌仙の一人、伊勢大輔を描いた作品。手前の蒔絵の柄まで凝っていた。
百人一首「いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重に にほひぬるかな」の人。小学校5年生のときに担任の先生が「明日までに好きな百人一首を1つでもいいから覚えてくるように」という宿題を出したのだが、覚えやすかったのだろうか、クラスの半数がこの歌を暗記してきた(私は清少納言の歌だったけれども)。伊勢大輔、大人気すぎ。


「晩秋」

紙を様々な形に切って、障子の修繕をしている女性。そういえば家の実家でも母がこんなことをしていたっけなあ(障子の穴あけ常習犯の記憶…唾で湿らせた指で障子に穴を開けるのが楽しかった)。
リバーシブルの帯がイケてる。



「序の舞」

今回のハイライト。もうね、この絵の前にはわんさか人が居た。宮尾登美子の長編小説でも有名な「序の舞」だ。
「なにものにも犯されない、女性のうちにひそむ強い意志」を描いている。
松園ファンの人事部長(女性)は先日、松園展を訪れてこの絵葉書を数枚買ったのだが、友達に出す手紙で全て使用してしまったそうだ。で、私に「お願い!3枚買ってきて」と依頼してきた。お土産コーナーで揉みくちゃにされながら3枚ゲット…。明日、渡そう…。


こんなにたくさんの松園の作品を観たのは2003年に宇都宮美術館で開催された回顧展以来だ。お腹一杯。大満足。
白く透き通るような肌、柔らかく張りがある日本髪、簪や着物の柄の精密さ、凛とした表情の女性。
どの作品も観ているだけで良い匂いが漂ってきそうだった。
隣で観ていた初老の婦人が絵を見ながら涙を流していた。
なんだか解る様な気がした。
あまりにも綺麗なものを観たとき…突き上げてくる感動が、水鉄砲のように涙という水分をどぴゅ!って出すこと、あるもの。


女性が女性を描く。そこにある思いを考えると、私は妹・芋子を思い出さずにはいられない。
芋子は今やデザイナーだ。学生時代の彼女は女性を描くことが多かった。「こういう目の形に生まれたかった」、「こういうサラサラな髪だったらよかったのに」、そんなことをボソボソと言いながらスケッチブックに女性ばかりを描いていた。

今日の上村松園の絵にも、そんな憧れなどといった感情が絵の隅々にまで宿っていたように思う。
絵って生きてるんだと強く実感した松園展だった。

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