平成28(受)1187 廃止負担金請求事件
平成29年9月14日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 大阪高等裁判所
大阪府工業用水道事業供給条例(昭和37年大阪府条例第4号)23条,同条例施行規程(同年大阪府営水道企業管理規程第1号)21条の規定により工業用水道の使用を廃止した者が納付しなければならないとされる負担金は,地方自治法224条,228条1項にいう「分担金」に当たらない。
事実確認から見ていきましょう。
1 ある会社が、府との間で契約して工業用水を引いてもらっていました。その会社が工業用水を使わなくなったので解約しようとしたところ、条例に基づいて負担金1308万 2795円を払えと府から言われました。
2 しかし、工業用水を引いてもらうときはその条例は無く、契約中に条例が改正されました。
会社の規模にもよりますが、1300万は大きいですね。
最高裁の判断では、
(1) 地方自治法224条は,普通地方公共団体は,政令で定める場合を除くほ か,数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し,その必要な費 用に充てるため,当該事件により特に利益を受ける者から,その受益の限度におい て,分担金を徴収することができると定めている。・・・当該利益を享受しない住民との間の負担の公平等を図るもの であると解される。
(2) 府の工業用水道事業は,地方公営企業法の適用を受ける企業として運営さ れていたものであるところ,前記事実関係等によれば,本件廃止負担金に関する本 件規定等は,使用者が工業用水道の使用を廃止することによって料金収入が減少す ることから,他の使用者の負担を軽減し,上記事業の安定的な経営を図るため,使 用を廃止した者の負担においてこれを補うことを目的として定められたものである と解され,
普通の家庭用の水道とは違って、大きな敷地に長い地下パイプを設置しなければなりませんからね。しかも、利用者の多寡に関係なくそれの設備維持費用はほとんど変わりません。なので、誰か抜けるとその分他の人たちが払ってくれない限り大赤字になります。
本件廃止負 担金は,工業用水道の使用を廃止した者が,府の工業用水道事業やその設置する水 道施設等からもたらされる利益を特に享受することを理由として,その受益の限度 において徴収される性質のものであるということはできない。
(3) そうすると,本件廃止負担金は,地方自治法224条,228条1項にい う分担金に当たらないというべきであり,これに関する事項について条例で定めな ければならないものということはできない。
結論
5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違 反がある。本件廃止負担金が分担金に当たるとした原審の判断に法令解釈の誤りが あるとする論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。
うーん、どうなんでしょうか。228条については行政の現場でも解釈に混乱が生じるようです。これをみると、下水道の使用量は225条、226条と228条に該当するようです。
(分担金)
第二百二十四条 普通地方公共団体は、政令で定める場合を除くほか、数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し、その必要な費用に充てるため、当該事件により特に利益を受ける者から、その受益の限度において、分担金を徴収することができる。
(使用料)
第二百二十五条 普通地方公共団体は、第二百三十八条の四第七項の規定による許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる。
(旧慣使用の使用料及び加入金)
(旧慣使用の使用料及び加入金)
第二百二十六条 市町村は、第二百三十八条の六の規定による公有財産の使用につき使用料を徴収することができるほか、同条第二項の規定により使用の許可を受けた者から加入金を徴収することができる。
分担金等に関する規制及び罰則)
第二百二十八条 分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。この場合において、手数料について全国的に統一して定めることが特に必要と認められるものとして政令で定める事務(以下本項において「標準事務」という。)について手数料を徴収する場合においては、当該標準事務に係る事務のうち政令で定めるものにつき、政令で定める金額の手数料を徴収することを標準として条例を定めなければならない。
2 分担金、使用料、加入金及び手数料の徴収に関しては、次項に定めるものを除くほか、条例で五万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
3 詐欺その他不正の行為により、分担金、使用料、加入金又は手数料の徴収を免れた者については、条例でその徴収を免れた金額の五倍に相当する金額(当該五倍に相当する金額が五万円を超えないときは、五万円とする。)以下の過料を科する規定を設けることができる。
これを見ると、手数料、利用料、分担金の違いというところでしょうか。分担金となるとある程度の負担は仕方ないかもしれません。その金額の問題ですね。1300万も払えというのはどうなんでしょう。少なくとも、この会社は昭和53年(1978)使用開始、平成23年(2011)契約解除なので33年間ですよね。減価償却は終わってませんかね。
裁判官としては、この条文で判断してくれと言われたらその範囲でしか判断しませんので、弁護士は減価償却の話はしなかったのでしょうか。個人的には負けてやれよと思いますが、仕方ない判決のようです。
第一小法廷判決
裁判長裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
平成29年9月14日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 大阪高等裁判所
大阪府工業用水道事業供給条例(昭和37年大阪府条例第4号)23条,同条例施行規程(同年大阪府営水道企業管理規程第1号)21条の規定により工業用水道の使用を廃止した者が納付しなければならないとされる負担金は,地方自治法224条,228条1項にいう「分担金」に当たらない。
事実確認から見ていきましょう。
1 ある会社が、府との間で契約して工業用水を引いてもらっていました。その会社が工業用水を使わなくなったので解約しようとしたところ、条例に基づいて負担金1308万 2795円を払えと府から言われました。
2 しかし、工業用水を引いてもらうときはその条例は無く、契約中に条例が改正されました。
会社の規模にもよりますが、1300万は大きいですね。
最高裁の判断では、
(1) 地方自治法224条は,普通地方公共団体は,政令で定める場合を除くほ か,数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し,その必要な費 用に充てるため,当該事件により特に利益を受ける者から,その受益の限度におい て,分担金を徴収することができると定めている。・・・当該利益を享受しない住民との間の負担の公平等を図るもの であると解される。
(2) 府の工業用水道事業は,地方公営企業法の適用を受ける企業として運営さ れていたものであるところ,前記事実関係等によれば,本件廃止負担金に関する本 件規定等は,使用者が工業用水道の使用を廃止することによって料金収入が減少す ることから,他の使用者の負担を軽減し,上記事業の安定的な経営を図るため,使 用を廃止した者の負担においてこれを補うことを目的として定められたものである と解され,
普通の家庭用の水道とは違って、大きな敷地に長い地下パイプを設置しなければなりませんからね。しかも、利用者の多寡に関係なくそれの設備維持費用はほとんど変わりません。なので、誰か抜けるとその分他の人たちが払ってくれない限り大赤字になります。
本件廃止負 担金は,工業用水道の使用を廃止した者が,府の工業用水道事業やその設置する水 道施設等からもたらされる利益を特に享受することを理由として,その受益の限度 において徴収される性質のものであるということはできない。
(3) そうすると,本件廃止負担金は,地方自治法224条,228条1項にい う分担金に当たらないというべきであり,これに関する事項について条例で定めな ければならないものということはできない。
結論
5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違 反がある。本件廃止負担金が分担金に当たるとした原審の判断に法令解釈の誤りが あるとする論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。
うーん、どうなんでしょうか。228条については行政の現場でも解釈に混乱が生じるようです。これをみると、下水道の使用量は225条、226条と228条に該当するようです。
(分担金)
第二百二十四条 普通地方公共団体は、政令で定める場合を除くほか、数人又は普通地方公共団体の一部に対し利益のある事件に関し、その必要な費用に充てるため、当該事件により特に利益を受ける者から、その受益の限度において、分担金を徴収することができる。
(使用料)
第二百二十五条 普通地方公共団体は、第二百三十八条の四第七項の規定による許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる。
(旧慣使用の使用料及び加入金)
(旧慣使用の使用料及び加入金)
第二百二十六条 市町村は、第二百三十八条の六の規定による公有財産の使用につき使用料を徴収することができるほか、同条第二項の規定により使用の許可を受けた者から加入金を徴収することができる。
分担金等に関する規制及び罰則)
第二百二十八条 分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。この場合において、手数料について全国的に統一して定めることが特に必要と認められるものとして政令で定める事務(以下本項において「標準事務」という。)について手数料を徴収する場合においては、当該標準事務に係る事務のうち政令で定めるものにつき、政令で定める金額の手数料を徴収することを標準として条例を定めなければならない。
2 分担金、使用料、加入金及び手数料の徴収に関しては、次項に定めるものを除くほか、条例で五万円以下の過料を科する規定を設けることができる。
3 詐欺その他不正の行為により、分担金、使用料、加入金又は手数料の徴収を免れた者については、条例でその徴収を免れた金額の五倍に相当する金額(当該五倍に相当する金額が五万円を超えないときは、五万円とする。)以下の過料を科する規定を設けることができる。
これを見ると、手数料、利用料、分担金の違いというところでしょうか。分担金となるとある程度の負担は仕方ないかもしれません。その金額の問題ですね。1300万も払えというのはどうなんでしょう。少なくとも、この会社は昭和53年(1978)使用開始、平成23年(2011)契約解除なので33年間ですよね。減価償却は終わってませんかね。
裁判官としては、この条文で判断してくれと言われたらその範囲でしか判断しませんので、弁護士は減価償却の話はしなかったのでしょうか。個人的には負けてやれよと思いますが、仕方ない判決のようです。
第一小法廷判決
裁判長裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚