平成29(行ツ)47 選挙無効請求事件
平成29年9月27日 最高裁判所大法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
平成28年7月10日施行の参議院議員通常選挙当時,平成27年法律第60号による改正後の公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,上記規定が憲法14条1項等に違反するに至っていたということはできない。
(意見及び反対意見がある。)
今回は30ページにもわたる判決文です。
平成28年7月10日施行の参議院議員通常選挙で議員定数配分規定(以下,数次の改正の前後を通じ,平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め,「定数配分規定」という。)は憲法に違反し無効であると訴えました。
事実確認を見ましょう。
1 参議院議員選挙法制定当時,選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差(以下,各立法当時の「選挙区間の最大較差」というときは,この人口の最大較差をいう。)は2.62倍(以下,較差に関する数値は,全て概数である。)であった。
2 平成22年7月11日,選挙区間の最大較差が5.00倍の状況において施行された通常選挙(以下「平成22年選挙」という。)につき,最高裁平成23年(行ツ)第51号同24年10月17日大法廷判決・民集66巻10号3357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)は,結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの,長年にわたる制度及び社会状況の変化を踏まえ,参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く,都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっている。
それにしても長い文章ですね。このブログでは無理やり切りました。小学校、中学校で、長すぎる文章は読みにくいと習わなかったのでしょうか。
要するに、過去の裁判で問題はあるけども憲法違反とまでは言えないとしています。
都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっており,都道府県間の人口較差の拡大が続き,総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で,都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っている。
過疎地はどんどん過疎化して都市部に人口が集中し、高速移動手段が発達することで、ほとんど起きている間は他所の県にいるなんていう事が当たり前になっています。
とはいっても問題があるので、解消策を取りなさいとH24の前最高裁判決で出しています。
3 平成24年大法廷判決の言渡し後,平成24年11月16日に公職選挙法の一部を改正する法律案が成立したものの、同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった。
4 その後も、解決するべく国会審議がありましたが、平成24年改正法による前記4増4減の措置は,都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり,現に選挙区間の最大較差については上記改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていました。
本気で改正してないじゃないか!と言っているようです。
5 平成27年5月29日に、ある程度まとまり選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い,必ず結論を得るものとするとの規定が置かれました。
6 憲法は、選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,憲法は,国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねている。
ここ重要ですね。どんな方法を採用するかは国会の判断であり、1人当たりの選挙人の比率を平等にしろとは認定していないのです。だから、憲法違反ではないと言っています。
7 憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は,それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって,国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解される。
結論は
以上のような事情を総合すれば,本件選挙当時,平成27年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。
私はこの判決が妥当だと思います。司法は政治に関与してはならないこと、人口移動を強制的に調整できない事、過疎地だからと言って代議士の数を減らしていいのかという問題があるからです。特に、日本海側は過疎化が進んでいますが、同時に国防上重要な地域でもあります。現在の北朝鮮の木造船漂着、過去には拉致はほとんど日本海側です。
ところが、東京をはじめ大都市圏では国防を意識する必要がほとんどありません。ようやく北朝鮮のICBM発射実験で東京も少しは考えるようになりま下が、深刻度合いはその比ではありません。
次に、補足意見を見ていきましょう。
裁判官木内道祥の意見
1 投票価値の平等と憲法適合性審査
国会議員の選挙における投票価値は,国民が憲法上有する選挙権の内容をなすものであるから,それが平等であることは,国会を全国民の代表である議員により構成するための基本原理として憲法が要求するところであり,選挙制度の決定に当たって考慮されるべき最も重要かつ基本的な基準である。・・・
昭和58年大法廷判決は「(憲法の定める)選挙権の平等の原則は,・・・選挙権の内容の平等,すなわち・・・投票の有する価値の平等をも要求する」という原則を示し,その上で,投票価値の平等が唯一絶対の基準ではないとの説示がなされたものであり,これは,国会の立法に当たって投票価値の平等以外の要素を一切考慮してはならないということではないという趣旨で国会の裁量権を確認したにとどまるものと解される。
過去の判例で、国会に裁量権があることが不満のようです。この程度の感想であれば、わざわざ書くほどの事でもない気がしますね。
2 選挙区の単位を都道府県とすることと投票価値の平等の関係
多数意見は,都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮することが否定されないとするが,それは,飽くまで一つの要素としての考慮であり,直ちに,各選挙区の区域を定めるに当たり都道府県という単位を用いることが不合理ではないとする結論に帰結することにはならないはずである。
この人は、どんな育ち方をしたのか分かりませんが、地方で暮らすと旧幕藩体制の区割りがそのまま残っているのが分かります。今は同じ市になっていても川を超えると、昔は○藩だったとかで、なかなか一体のものとして考えられません。ましてや、全県で見るともっと露骨に現れてきます。県議会でどちらの出身かで思いっきり派閥ができます。
なので、これを根拠にするのは無理があります。
3 2段階の憲法判断の枠組みとその考慮要素
①の違憲状態か否かの判断は,当該選挙の時点における投票価値の不均衡の状態についてのものであり,上記②の国会の裁量権の範囲内か否かの判断は,選挙時点における国会の活動の方向性を測るものとして当該選挙の後の国会の動向をも考慮対象とするものである。
ん?ならば全員一致の判決にならないかと。なぜ反対しなかったのでしょうか?
4 違憲状態であるか否か
本件選挙時における3.08倍という最大較差に示される投票価値の不均衡は,従来の選挙時における最大較差より縮小したとはいえ,基本的な選挙区の単位を都道府県とすることを維持した定数配分規定によるものであり,そのままでは更なる拡大が懸念される。
だからどうなんだ?って気がしてきます。どうにかできるなら既にやっているでしょう。どうしようもなから、こまめに修正しているのです。不満があるなら政治家に転身したら?とすら思えてきます。
5 国会の裁量権の限界を超えたか否か
平成27年改正法の附則7条は「平成31年に行われる参議院選挙の通常選挙に向けて,・・・較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて・・・必ず結論を得る」とする。これは,較差の是正のための選挙制度の抜本的な見直しを,今回の改正に引き続いて行い,平成31年に行われる通常選挙(以下「平成31年選挙」という。)までに完成させるという趣旨である。
改正法に含まれる附則が「必ず結論を得る」としている以上,その実現は,国会が現に約束したものなのである。
「約束したんだから、やれよ。だらだらやってないでさっさと抜本的な対策をとれよ。」ってことのようです。企業じゃないんですよ。国会なんですよ。命令して済む話じゃないですよ。なんだか裁判官としてと言うより原告のような内容です。
裁判官林景一の意見
1 若干ではあるが格差は改善しているが、不十分であるので、多数意見にはもろ手を挙げて賛成という訳ではない。
結論として,「本件選挙の当時,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない」とする多数意見に同調するものである。
2 投票価値の平等原則
(1)「全国民の代表」を選出するに当たっての一人一票の原則及び投票価値の平等は,投票で民意を決定する民主主義制度の根幹である。憲法には投票価値の平等という言葉自体は明記されていないが,投票価値の平等は,民主主義と平等原則から直接導かれる憲法上当然の原則である。国際的な視点からも,・・・
アメリカではそうなっていません。独立戦争に早くから参加した州ほど多くの議席が得られますが、あれから250年経っても変更されていません。他国の事例を持ち出すのはどうなんでしょうか?それぞれの国情に合わせていくべきであり、一律によそと同じと言うのは駄々っ子の議論と変わりません。持ち出すなら、どうしてそれが日本の事情と同じなのか、そのほうが良いのかもう少し説明が必要です。例え、それが国際条約であってもです。尤もこの議論は司法でやるべきではなく国会ですべきですが。
(2) 平等原則の下,最大較差3倍程度で合憲といえないとした場合,どの程度まで較差を縮小すればよいのか,という問題提起があろう。原理としては,一人一票の原則といわれることからも,最大較差がなるべく1.0倍に近くなければならないということになるが,これは理想型であり,選挙区選挙という制度を選択する場合,実際問題として,厳密な1対1という較差を実現するのは困難であるし,そのために過度に人工的な区割りをすることが適当とも思われない。しかし,一般的には,一人二票というべき事態となることは原則として許容できないといえると考える。
何ですかこれ????もはや言いたいだけですよね。意見ですらありません。
3 憲法の基本原理としては,参議院議員が衆議院議員と同様,憲法43条にいう「全国民の代表」として選出されるものである以上,選挙区割りが都道府県単位を基本とする場合にも,全国民の間の投票価値の平等という憲法上の原則と調和する,すなわちこの原則を大きく損なわないようなものでなければならない(あるいはプロセスとして考えれば,より投票価値の平等を追求する方向に向かうものでなければならない)と考える。
4 投票価値の平等原則の重みを十分に踏まえ,平成31年通常選挙に向けて,現状で事足れりとすることなく,法律をもって約束した抜本的な見直しのための更なる検討を通じて,近年の較差縮小のプロセスが継続されることを期待するものであり,
都道府県別では様々な問題があるけども、しょうがないよね。頑張ってぐらいの意味でしょうか。
裁判官鬼丸かおるの反対意見
多数意見とは異なり,本件定数配分規定は憲法に違反するものであり,それに基づき施行された本件選挙も違法であると考える。
1 憲法は,参議院議員の選挙においても,衆議院議員の選挙と同様に,国民の投票価値につき,できる限り1対1に近い平等を基本的に保障していると考える。
2 4県2合区を含む10増10減案が可決成立し・・・・れ,投票価値の最大較差が大幅に縮小されたことからすれば,投票価値に関する国会の努力の方向性は正しいと評することができよう。
3 最大較差の3.08倍という数値自体からは,投票価値の平等を実現したとはいい難い。
5 上記の帰結として,本件選挙を無効とする結論が考えられるところである。
どこに投票の格差があってはいけないとする根拠条文があるのでしょうか?あくまでも国会の裁量に任されているはずです。トンデモですね。
裁判官山本庸幸の反対意見
1 投票価値の平等は唯一かつ絶対的基準
2 2割超の較差のある選挙制度は違憲無効
3 平等な選挙制度の要請は参議院も同じ
3は分かりますが、1と2は鬼丸裁判官と同じです。
大法廷
裁判長裁判官 寺田逸郎
裁判官 岡部喜代子
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる トンデモ
裁判官 木内道祥 今一つ
裁判官 山本庸幸 トンデモ
裁判官 山崎敏充
裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 菅野博之
裁判官 山口 厚
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一
平成29年9月27日 最高裁判所大法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
平成28年7月10日施行の参議院議員通常選挙当時,平成27年法律第60号による改正後の公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,上記規定が憲法14条1項等に違反するに至っていたということはできない。
(意見及び反対意見がある。)
今回は30ページにもわたる判決文です。
平成28年7月10日施行の参議院議員通常選挙で議員定数配分規定(以下,数次の改正の前後を通じ,平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め,「定数配分規定」という。)は憲法に違反し無効であると訴えました。
事実確認を見ましょう。
1 参議院議員選挙法制定当時,選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差(以下,各立法当時の「選挙区間の最大較差」というときは,この人口の最大較差をいう。)は2.62倍(以下,較差に関する数値は,全て概数である。)であった。
2 平成22年7月11日,選挙区間の最大較差が5.00倍の状況において施行された通常選挙(以下「平成22年選挙」という。)につき,最高裁平成23年(行ツ)第51号同24年10月17日大法廷判決・民集66巻10号3357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)は,結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの,長年にわたる制度及び社会状況の変化を踏まえ,参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く,都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっている。
それにしても長い文章ですね。このブログでは無理やり切りました。小学校、中学校で、長すぎる文章は読みにくいと習わなかったのでしょうか。
要するに、過去の裁判で問題はあるけども憲法違反とまでは言えないとしています。
都道府県が政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっており,都道府県間の人口較差の拡大が続き,総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で,都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至っている。
過疎地はどんどん過疎化して都市部に人口が集中し、高速移動手段が発達することで、ほとんど起きている間は他所の県にいるなんていう事が当たり前になっています。
とはいっても問題があるので、解消策を取りなさいとH24の前最高裁判決で出しています。
3 平成24年大法廷判決の言渡し後,平成24年11月16日に公職選挙法の一部を改正する法律案が成立したものの、同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった。
4 その後も、解決するべく国会審議がありましたが、平成24年改正法による前記4増4減の措置は,都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり,現に選挙区間の最大較差については上記改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていました。
本気で改正してないじゃないか!と言っているようです。
5 平成27年5月29日に、ある程度まとまり選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い,必ず結論を得るものとするとの規定が置かれました。
6 憲法は、選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,憲法は,国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねている。
ここ重要ですね。どんな方法を採用するかは国会の判断であり、1人当たりの選挙人の比率を平等にしろとは認定していないのです。だから、憲法違反ではないと言っています。
7 憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は,それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって,国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解される。
結論は
以上のような事情を総合すれば,本件選挙当時,平成27年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。
私はこの判決が妥当だと思います。司法は政治に関与してはならないこと、人口移動を強制的に調整できない事、過疎地だからと言って代議士の数を減らしていいのかという問題があるからです。特に、日本海側は過疎化が進んでいますが、同時に国防上重要な地域でもあります。現在の北朝鮮の木造船漂着、過去には拉致はほとんど日本海側です。
ところが、東京をはじめ大都市圏では国防を意識する必要がほとんどありません。ようやく北朝鮮のICBM発射実験で東京も少しは考えるようになりま下が、深刻度合いはその比ではありません。
次に、補足意見を見ていきましょう。
裁判官木内道祥の意見
1 投票価値の平等と憲法適合性審査
国会議員の選挙における投票価値は,国民が憲法上有する選挙権の内容をなすものであるから,それが平等であることは,国会を全国民の代表である議員により構成するための基本原理として憲法が要求するところであり,選挙制度の決定に当たって考慮されるべき最も重要かつ基本的な基準である。・・・
昭和58年大法廷判決は「(憲法の定める)選挙権の平等の原則は,・・・選挙権の内容の平等,すなわち・・・投票の有する価値の平等をも要求する」という原則を示し,その上で,投票価値の平等が唯一絶対の基準ではないとの説示がなされたものであり,これは,国会の立法に当たって投票価値の平等以外の要素を一切考慮してはならないということではないという趣旨で国会の裁量権を確認したにとどまるものと解される。
過去の判例で、国会に裁量権があることが不満のようです。この程度の感想であれば、わざわざ書くほどの事でもない気がしますね。
2 選挙区の単位を都道府県とすることと投票価値の平等の関係
多数意見は,都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮することが否定されないとするが,それは,飽くまで一つの要素としての考慮であり,直ちに,各選挙区の区域を定めるに当たり都道府県という単位を用いることが不合理ではないとする結論に帰結することにはならないはずである。
この人は、どんな育ち方をしたのか分かりませんが、地方で暮らすと旧幕藩体制の区割りがそのまま残っているのが分かります。今は同じ市になっていても川を超えると、昔は○藩だったとかで、なかなか一体のものとして考えられません。ましてや、全県で見るともっと露骨に現れてきます。県議会でどちらの出身かで思いっきり派閥ができます。
なので、これを根拠にするのは無理があります。
3 2段階の憲法判断の枠組みとその考慮要素
①の違憲状態か否かの判断は,当該選挙の時点における投票価値の不均衡の状態についてのものであり,上記②の国会の裁量権の範囲内か否かの判断は,選挙時点における国会の活動の方向性を測るものとして当該選挙の後の国会の動向をも考慮対象とするものである。
ん?ならば全員一致の判決にならないかと。なぜ反対しなかったのでしょうか?
4 違憲状態であるか否か
本件選挙時における3.08倍という最大較差に示される投票価値の不均衡は,従来の選挙時における最大較差より縮小したとはいえ,基本的な選挙区の単位を都道府県とすることを維持した定数配分規定によるものであり,そのままでは更なる拡大が懸念される。
だからどうなんだ?って気がしてきます。どうにかできるなら既にやっているでしょう。どうしようもなから、こまめに修正しているのです。不満があるなら政治家に転身したら?とすら思えてきます。
5 国会の裁量権の限界を超えたか否か
平成27年改正法の附則7条は「平成31年に行われる参議院選挙の通常選挙に向けて,・・・較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて・・・必ず結論を得る」とする。これは,較差の是正のための選挙制度の抜本的な見直しを,今回の改正に引き続いて行い,平成31年に行われる通常選挙(以下「平成31年選挙」という。)までに完成させるという趣旨である。
改正法に含まれる附則が「必ず結論を得る」としている以上,その実現は,国会が現に約束したものなのである。
「約束したんだから、やれよ。だらだらやってないでさっさと抜本的な対策をとれよ。」ってことのようです。企業じゃないんですよ。国会なんですよ。命令して済む話じゃないですよ。なんだか裁判官としてと言うより原告のような内容です。
裁判官林景一の意見
1 若干ではあるが格差は改善しているが、不十分であるので、多数意見にはもろ手を挙げて賛成という訳ではない。
結論として,「本件選挙の当時,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない」とする多数意見に同調するものである。
2 投票価値の平等原則
(1)「全国民の代表」を選出するに当たっての一人一票の原則及び投票価値の平等は,投票で民意を決定する民主主義制度の根幹である。憲法には投票価値の平等という言葉自体は明記されていないが,投票価値の平等は,民主主義と平等原則から直接導かれる憲法上当然の原則である。国際的な視点からも,・・・
アメリカではそうなっていません。独立戦争に早くから参加した州ほど多くの議席が得られますが、あれから250年経っても変更されていません。他国の事例を持ち出すのはどうなんでしょうか?それぞれの国情に合わせていくべきであり、一律によそと同じと言うのは駄々っ子の議論と変わりません。持ち出すなら、どうしてそれが日本の事情と同じなのか、そのほうが良いのかもう少し説明が必要です。例え、それが国際条約であってもです。尤もこの議論は司法でやるべきではなく国会ですべきですが。
(2) 平等原則の下,最大較差3倍程度で合憲といえないとした場合,どの程度まで較差を縮小すればよいのか,という問題提起があろう。原理としては,一人一票の原則といわれることからも,最大較差がなるべく1.0倍に近くなければならないということになるが,これは理想型であり,選挙区選挙という制度を選択する場合,実際問題として,厳密な1対1という較差を実現するのは困難であるし,そのために過度に人工的な区割りをすることが適当とも思われない。しかし,一般的には,一人二票というべき事態となることは原則として許容できないといえると考える。
何ですかこれ????もはや言いたいだけですよね。意見ですらありません。
3 憲法の基本原理としては,参議院議員が衆議院議員と同様,憲法43条にいう「全国民の代表」として選出されるものである以上,選挙区割りが都道府県単位を基本とする場合にも,全国民の間の投票価値の平等という憲法上の原則と調和する,すなわちこの原則を大きく損なわないようなものでなければならない(あるいはプロセスとして考えれば,より投票価値の平等を追求する方向に向かうものでなければならない)と考える。
4 投票価値の平等原則の重みを十分に踏まえ,平成31年通常選挙に向けて,現状で事足れりとすることなく,法律をもって約束した抜本的な見直しのための更なる検討を通じて,近年の較差縮小のプロセスが継続されることを期待するものであり,
都道府県別では様々な問題があるけども、しょうがないよね。頑張ってぐらいの意味でしょうか。
裁判官鬼丸かおるの反対意見
多数意見とは異なり,本件定数配分規定は憲法に違反するものであり,それに基づき施行された本件選挙も違法であると考える。
1 憲法は,参議院議員の選挙においても,衆議院議員の選挙と同様に,国民の投票価値につき,できる限り1対1に近い平等を基本的に保障していると考える。
2 4県2合区を含む10増10減案が可決成立し・・・・れ,投票価値の最大較差が大幅に縮小されたことからすれば,投票価値に関する国会の努力の方向性は正しいと評することができよう。
3 最大較差の3.08倍という数値自体からは,投票価値の平等を実現したとはいい難い。
5 上記の帰結として,本件選挙を無効とする結論が考えられるところである。
どこに投票の格差があってはいけないとする根拠条文があるのでしょうか?あくまでも国会の裁量に任されているはずです。トンデモですね。
裁判官山本庸幸の反対意見
1 投票価値の平等は唯一かつ絶対的基準
2 2割超の較差のある選挙制度は違憲無効
3 平等な選挙制度の要請は参議院も同じ
3は分かりますが、1と2は鬼丸裁判官と同じです。
大法廷
裁判長裁判官 寺田逸郎
裁判官 岡部喜代子
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる トンデモ
裁判官 木内道祥 今一つ
裁判官 山本庸幸 トンデモ
裁判官 山崎敏充
裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 菅野博之
裁判官 山口 厚
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一