令和2(行ヒ)103 相続税更正処分等取消請求事件
令和3年6月24日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所
相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合において,課税庁は,同法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し,当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額等を用いて税額等を計算すべき義務を負うか(消極)
FP税理士法人しかマトモに書いていないので、そちらを見てください。
事実認定から見ていきます。
(1)Aさんのお母さんが平成16年2月28日になくなったので、その年の12月に6人のきょうだいが共同相続人になって相続しました。相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)55条により法定相続分(各7分の1)に従って財産を取得したものとして課税価格の計算がされ,被上告人の課税価格は22億6374万4000円,納付すべき税額は10億7095万円とされた。
(2)江東東税務署長は,平成19年2月13日,被上告人に対し,本件相続に係る遺産に含まれる第1審判決添付別表1の「銘柄」欄記載の株式(以下「本件各株式」という。)の一部の価額が過少であるなどとして増額更正処分をした。
江東東税務署長は,平成23年2月28日,被上告人に対し,課税価格を40億6089万円,納付すべき税額を19億7000万9300円として,上記の東京国税局長による一部取消し後の増額更正処分の一部を更に取り消す減額更正処分をした。
相続税は本当に高すぎます。相続税がない国もあるのに、日本では3代目にはすってんてんになるような税率です。私はこれが日本の産業を弱くする原因だと思っています。非上場の中堅企業が維持できなくなってしまうんですよね。
①A社株式については,A社が財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)にいう大会社(その株式の原則的な評価方法は類似業種比準方式とされている。)であることを前提に,例外的に純資産価額方式等により評価すべきものとされている株式保有特定会社に当たるか否かが争われ,
②B社株式については,純資産価額方式で評価することを前提に,B社が保有しているA社株式の価額を踏まえた価額が争われた。
親子会社なんですね。子会社の評価を親会社と同様にやったようです。
(5)本件相続に係る遺産分割申立事件について,平成26年1月16日,東京家庭裁判所において調停(以下「本件調停」という。)が成立し,被上告人は,本件各株式につき各銘柄の7分の6を取得した。
(7)被上告人は,平成26年5月16日,江東東税務署長に対し,本件調停の成立を理由として,課税価格を9億6080万5000円,納付すべき税額を4億4199万0400円として,相続税法32条1号の規定による更正の請求をした。
相続が争族になった挙句、相続した金額の半分を持って行かれたのですね。
(8)江東東税務署長は,平26年11月に請求のうち株式の価額の減額を求める部分は,本件申告における株式の価額に係る評価の誤りの是正を求めた。
同法35条3項1号に基づき,課税価格を49億0410万9000円,納付すべき税額を23億2567万1800円とする増額更正処分(以下「本件更正処分」といい,本件通知処分と併せて「本件更正処分等」という。)をした。
計算間違いですよと税務署が言ってきたようです。納税額が4億円から22億円へ?これ破産しますがな。
①同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(その者が当該相続等により取得した財産の価額の合計額)に相当する金額の合計額から基礎控除額を控除した金額を当該被相続人の民法所定の相続人が同法900条及び901条の規定による相続分に応じて取得したものとした場合における各取得金額に所定の税率を乗じて計算した金額の合計額である相続税の総額を算出した上で(相続税法16条),
②これに,各相続人等に係る課税価格が当該財産を取得した全ての者に係る課税価格の合計額のうちに占める割合(以下「取得割合」という。)を乗ずることにより各相続人等に係る相続税額を算出するものとされている(同法17条)。
(1)10月以内に行わなければならないものとされているところ(相続税法27条1項),遺産の全部又は一部が分割されていないときは,課税の遅滞を防止するなどの観点から,分割されていない財産については各共同相続人又は包括受遺者が民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算して申告をするものとされている(相続税法55条)。
(2)相続税法32条1号及び35条3項1号は,同法55条に基づく申告の後に遺産分割が行われて各相続人の取得財産が変動したという相続税特有の後発的事由が生じた場合において,更正の請求及び更正について規定する国税通則法23条1項及び24条の特則として,同法所定の期間制限にかかわらず,遺産分割後の一定の期間内に限り,上記後発的事由により上記申告に係る相続税額等が過大となったとして更正の請求をすること及び当該請求に基づき更正がされた場合には他の相続人の相続税額等に生じた上記後発的事由による変動の限度で更正をすることができることとしたものである。
そこが争点なんですかね。何かおかしくないですか?そもそもA社とB社の株の評価ですよね。他は延滞金の問題であって。
(3)処分を取り消す判決が確定した場合には,その拘束力(行政事件訴訟法33条1項)により,処分をした行政庁等は,その事件につき当該判決における主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断に従って行動すべき義務を負うこととなるが,上記拘束力によっても,行政庁が法令上の根拠を欠く行動を義務付けられるものではないから,その義務の内容は,当該行政庁がそれを行う法令上の権限があるものに限られるものと解される。
上記の場合においては,当該判決の個々の財産の価額や評価方法に関する判断部分について拘束力が生ずるか否かを論ずるまでもなく,課税庁は,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し,当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額や評価方法を用いて税額等を計算すべき義務を負うことはないものというべきである。
ん?では、誰が評価するのでしょうか?規則で決まっているとはいっても、請求書を出すのは税務署ですよね。
(4)江東東税務署長は,本件更正処分をするに際し,前件判決に示された本件各株式の価額や評価方法を用いて税額等の計算をすべきものとはいえず,本件申告における本件各株式の価額を基礎として課税価格及び相続税額を計算することとなるから,本件更正処分は適法である。
なんかアクロバティックな論証ですね。
第一小法廷判決全員一致
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
評価方法が争われたんじゃないのでしょうか?総額いくらってことは分かっても、個別では判断しないというのはどういうことでしょうか?確かに、例えば土地と建物を別で評価しても通常一体化しているから、個別で出すのと一体化したのでは評価が違うとするのでしょうか?釈然としませんね。これは司法の無責任としか言いようがありません。
令和3年6月24日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所
相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合において,課税庁は,同法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し,当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額等を用いて税額等を計算すべき義務を負うか(消極)
FP税理士法人しかマトモに書いていないので、そちらを見てください。
事実認定から見ていきます。
(1)Aさんのお母さんが平成16年2月28日になくなったので、その年の12月に6人のきょうだいが共同相続人になって相続しました。相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)55条により法定相続分(各7分の1)に従って財産を取得したものとして課税価格の計算がされ,被上告人の課税価格は22億6374万4000円,納付すべき税額は10億7095万円とされた。
(2)江東東税務署長は,平成19年2月13日,被上告人に対し,本件相続に係る遺産に含まれる第1審判決添付別表1の「銘柄」欄記載の株式(以下「本件各株式」という。)の一部の価額が過少であるなどとして増額更正処分をした。
江東東税務署長は,平成23年2月28日,被上告人に対し,課税価格を40億6089万円,納付すべき税額を19億7000万9300円として,上記の東京国税局長による一部取消し後の増額更正処分の一部を更に取り消す減額更正処分をした。
相続税は本当に高すぎます。相続税がない国もあるのに、日本では3代目にはすってんてんになるような税率です。私はこれが日本の産業を弱くする原因だと思っています。非上場の中堅企業が維持できなくなってしまうんですよね。
①A社株式については,A社が財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)にいう大会社(その株式の原則的な評価方法は類似業種比準方式とされている。)であることを前提に,例外的に純資産価額方式等により評価すべきものとされている株式保有特定会社に当たるか否かが争われ,
②B社株式については,純資産価額方式で評価することを前提に,B社が保有しているA社株式の価額を踏まえた価額が争われた。
親子会社なんですね。子会社の評価を親会社と同様にやったようです。
(5)本件相続に係る遺産分割申立事件について,平成26年1月16日,東京家庭裁判所において調停(以下「本件調停」という。)が成立し,被上告人は,本件各株式につき各銘柄の7分の6を取得した。
(7)被上告人は,平成26年5月16日,江東東税務署長に対し,本件調停の成立を理由として,課税価格を9億6080万5000円,納付すべき税額を4億4199万0400円として,相続税法32条1号の規定による更正の請求をした。
相続が争族になった挙句、相続した金額の半分を持って行かれたのですね。
(8)江東東税務署長は,平26年11月に請求のうち株式の価額の減額を求める部分は,本件申告における株式の価額に係る評価の誤りの是正を求めた。
同法35条3項1号に基づき,課税価格を49億0410万9000円,納付すべき税額を23億2567万1800円とする増額更正処分(以下「本件更正処分」といい,本件通知処分と併せて「本件更正処分等」という。)をした。
計算間違いですよと税務署が言ってきたようです。納税額が4億円から22億円へ?これ破産しますがな。
①同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(その者が当該相続等により取得した財産の価額の合計額)に相当する金額の合計額から基礎控除額を控除した金額を当該被相続人の民法所定の相続人が同法900条及び901条の規定による相続分に応じて取得したものとした場合における各取得金額に所定の税率を乗じて計算した金額の合計額である相続税の総額を算出した上で(相続税法16条),
②これに,各相続人等に係る課税価格が当該財産を取得した全ての者に係る課税価格の合計額のうちに占める割合(以下「取得割合」という。)を乗ずることにより各相続人等に係る相続税額を算出するものとされている(同法17条)。
(1)10月以内に行わなければならないものとされているところ(相続税法27条1項),遺産の全部又は一部が分割されていないときは,課税の遅滞を防止するなどの観点から,分割されていない財産については各共同相続人又は包括受遺者が民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算して申告をするものとされている(相続税法55条)。
(2)相続税法32条1号及び35条3項1号は,同法55条に基づく申告の後に遺産分割が行われて各相続人の取得財産が変動したという相続税特有の後発的事由が生じた場合において,更正の請求及び更正について規定する国税通則法23条1項及び24条の特則として,同法所定の期間制限にかかわらず,遺産分割後の一定の期間内に限り,上記後発的事由により上記申告に係る相続税額等が過大となったとして更正の請求をすること及び当該請求に基づき更正がされた場合には他の相続人の相続税額等に生じた上記後発的事由による変動の限度で更正をすることができることとしたものである。
そこが争点なんですかね。何かおかしくないですか?そもそもA社とB社の株の評価ですよね。他は延滞金の問題であって。
(3)処分を取り消す判決が確定した場合には,その拘束力(行政事件訴訟法33条1項)により,処分をした行政庁等は,その事件につき当該判決における主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断に従って行動すべき義務を負うこととなるが,上記拘束力によっても,行政庁が法令上の根拠を欠く行動を義務付けられるものではないから,その義務の内容は,当該行政庁がそれを行う法令上の権限があるものに限られるものと解される。
上記の場合においては,当該判決の個々の財産の価額や評価方法に関する判断部分について拘束力が生ずるか否かを論ずるまでもなく,課税庁は,国税通則法所定の更正の除斥期間が経過した後に相続税法32条1号の規定による更正の請求に対する処分及び同法35条3項1号の規定による更正をするに際し,当該判決の拘束力によって当該判決に示された個々の財産の価額や評価方法を用いて税額等を計算すべき義務を負うことはないものというべきである。
ん?では、誰が評価するのでしょうか?規則で決まっているとはいっても、請求書を出すのは税務署ですよね。
(4)江東東税務署長は,本件更正処分をするに際し,前件判決に示された本件各株式の価額や評価方法を用いて税額等の計算をすべきものとはいえず,本件申告における本件各株式の価額を基礎として課税価格及び相続税額を計算することとなるから,本件更正処分は適法である。
なんかアクロバティックな論証ですね。
第一小法廷判決全員一致
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
評価方法が争われたんじゃないのでしょうか?総額いくらってことは分かっても、個別では判断しないというのはどういうことでしょうか?確かに、例えば土地と建物を別で評価しても通常一体化しているから、個別で出すのと一体化したのでは評価が違うとするのでしょうか?釈然としませんね。これは司法の無責任としか言いようがありません。