最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

製薬会社の商品を大学の先生が捏造データで論文記載、これは誇大広告にならない

2021-09-10 07:32:53 | 日記
平成30(あ)1846  薬事法違反被告事件
令和3年6月28日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  東京高等裁判所

 1 薬事法(平成25年法律第84号による改正前のもの)66条1項の規制する
  「記事を広告し,記述し,又は流布」する行為の意義
2 薬事法(平成25年法律第84号による改正前のもの)66条1項の規制する
  特定の医薬品等の購入・処方等を促すための手段としてされた告知といえるか否
  かの判断方法
3 学術論文の学術雑誌への掲載が,薬事法(平成25年法律第84号による改正
  前のもの)66条1項の規制する行為に当たらないとされた事例


当事者の声明です。上告審で無罪確定 6月28日の最高裁判所における決定について

ミクスOnlineの報道によると
ノバルティスファーマは6月29日、ARB・ディオバンの医師主導臨床研究におけるデータ改ざんをめぐる問題で、最高裁が東京高検の上告を棄却し、元社員の白橋伸雄被告と両罰規定に問われたノバルティスファーマの無罪が確定したと発表した。決定は、28日付。旧薬事法(現・医薬品医療機器等法)66条(虚偽・誇大広告)違反に問われた裁判は2017年3月の第一審、18年11月の控訴審ともに無罪判決が言い渡されていた。
白橋被告は、京都府立医科大で実施された医師主導臨床試験「KYOTO HEART Study」の2本のサブ解析でデータ解析を担当。広告資材に活用するため、急性心筋梗塞や脳梗塞での有用性を示すようデータを改ざんし、虚偽データに基づいて執筆させた論文を医学誌に掲載、Webなどを通じて医学界に広く伝播させたとして起訴された。ノバルティスファーマも元社員への監督不十分を理由に両罰規定を問われていた。
第一審、控訴審ともに、旧薬事法66条の法解釈、特に論文掲載が広告に該当するか、が焦点となった。控訴審では、広告の三要件のひとつである誘因性を主観的・客観的に備えていないとして、「顧客を誘引する手段に該当しない」とした。「たとえ、被告人がデータを作成・提供したデータが虚偽で、研究者らを情を知らない道具として利用して、論文を投稿させたとしても、66条1項違反には当たらない」として、実質的な販促行為を主張した検察の訴を退けていた。


m3.comの報道です。
裁判長は論文の記載を薬事法違反の対象とすることについて「憲法が保障する学問の自由との関係で問題を生じさせることになる」と指摘した。 2017年3月の東京地裁判決では「論文作成においてイベントの水増し、恣意的な群分け、データの改ざんがあったが、学術論文を作成、投稿することは薬事法の規制対象には当たらず、罪に当たらない」、2018年11月の東京高裁判決では「医薬品の誇大広告を規制する薬事法66条1項は、そもそも学術論文作成を対象にしていない。薬事法で規制することは自由闊達な研究の発展を阻害する可能性もある」として、共に無罪を言い渡していた。

これは難しいですよね。工学系の論文であれば、もろに商品名が出ており特にソフトウェアであればそれの宣伝?と思えるのも出ています。さらに、学術雑誌を運営するには研究費からの捻出では全く維持できないために企業からの支援を募っている状態です。となると、その雑誌に資金提供して自社のことについて論文を書いてもらうとなると、これは適正かどうかが疑われてしまいます。
例えば、政治家の贈収賄事件があったと仮定します。すると、その贈賄側の企業がニュース番組のスポンサーであったりすると、全く忖度しないか?となるとそうでもありません。おそらく報道局どころかトップからの指示で、スポンサーの不利になるようなことは一切報道しないでしょう。
これと同じようなことが、薬学系の雑誌でも起きたのではないかと疑われたようです。

では、事実認定を見て行きましょう。悪文極まりないので、ぶった切って解説します。
1 A社は血圧降下剤を作って販売している。A社の従業員のBが某医科大学の教室に臨床実験をお願いした。A社はその結果を広告に使おうとした。ところが、某医大の先生がデータ改ざんを行って海外のweb雑誌に投稿し、閲覧可能な状態になった。

薬事法66条1項は,「何人も,医薬品,医薬部外品,化粧品又は医療機器の名称,製造方法,効能,効果又は性能に関して,明示的であると暗示的であるとを問わず,虚偽又は誇大な記事を広告し,記述し,又は流布してはならない。」と規定する。
第1審判決は,事実関係については,本件各公訴事実記載の事実をおおむね認めたが,薬事法66条1項が規制するのは,顧客を誘引するための手段として同項所定の事項を広く世間に告げ知らせる行為であり,「記事の記述」も同手段としてされるものであることを要するとした上で,本件各公訴事実記載の各論文を作成し,本件各公訴事実記載の各雑誌(に投稿して掲載させた行為は,一般の学術論文の学術雑誌への掲載と異なるところはなく,同手段としての性質を有しないから,同項の規制する「記事の記述」に当たらないとして,被告人及び被告会社に対し,無罪を言い渡した。


薬事法に限らず、景品表示法でも同様に嘘を書いてはならない、誇大広告はしてはならない趣旨が書いてあります。
で、論文は一般顧客を誘因する広告に該当するか?が争われたようです。敢えて言いますが、会員に限定された論文であろうがなかろうが、基本的に薬学系・医学系の専門家が読むことが多いでしょう。血圧降下剤は、一般人がその辺で飼うものではありません。医者の処方に基づいて入手可能になります。だから、論文は立派に広告でもあります。
実際には研究職でなければそんなもん読んでいる時間はなく、薬のセールスマンから情報を入手することになるでしょう。それでも、某大学の先生のお墨付きがありますというでしょうね。

でも論点はそこであってはいけないと思います。そもそもが、某医大の先生が虚偽のデータで論文を書いたことに問題があるのですよね。A社並びにB社はその事実を知っていたのでしょうか?そちらの方が論点とされるべきじゃないでしょうか。

そして論点ずれのまま話が進んでいきます。
薬事法66条1項「記事を広告し,記述し,又は流布」する行為は,特定の医薬品等に関し,当該医薬品等の購入・処方等を促すための手段として,不特定又は多数の者に対し,同項所定の事項を告げ知らせる行為をいうと解するのが相当である。・・・同項の規制する特定の医薬品等の購入・処方等を促すための手段としてされた告知といえるか否かは,当該告知の内容,性質,態様等に照らし,客観的に判断するのが相当である。

確かに某医大の先生が販売するものではないですよ。だから売るつもりはなかったという主張は正しいですが、それが成立するならばこれは広告代理店と広告主の関係でも言えますよね。

研究者らを著者とし,同補助解析等の結果得られたとされる新規の医学的発見に関し,研究の目的,方法,条件等を開示し,研究者らの考察を示し,研究の限界なども付記するなど,通常の学術論文の作法に従って作成されたものであること,本件各論文が投稿され,掲載された本件各雑誌は,いずれも査読を要する医学分野の専門的学術雑誌であることが認められる。このような本件各論文の内容,性質,本件各雑誌の性質等に照らすと,本件各雑誌に掲載された本件各論文の主な読者層は研究者や医師等の医学分野の専門家であると想定され,本件各論文の本件各雑誌への投稿,掲載は,著者である研究者らによる同一分野の専門家らに向けた学術研究成果の発表であるといえる。

お花畑ですね。これが、特定の研究分野で使われる薬剤であればどうなんですか?宣伝と変わりませんよ。著者にその意図がなかったとしても、メーカーはフルでそれを使うでしょう。それが商売ですから。

以上によれば,本件各論文の本件各雑誌への掲載は,特定の医薬品の購入・処方等を促すための手段としてされた告知とはいえず,薬事法66条1項の規制する行為に当たらないというべきである。

論点ずれの挙句に意味不明結論です。

裁判官山口厚の補足意見
本件におけるような学術論文の作成・投稿・掲載を広く同項による規制の対象とすることは,それらが学術活動の中核に属するものであり,加えて,同項が虚偽のみならず誇大な「記事の記述」をも規制対象とするものであることから,学術活動に無視し得ない萎縮効果をもたらし得ることになろう。それゆえ,その結果として,憲法が保障する学問の自由との関係で問題を生じさせることになる。このことを付言しておきたい。

そこか?
捏造した人はその人で別で裁かれているのでこの裁判には関係ないというのは分かりますが、そもそもこのA社と従業員Bが裁判になること自体が異常です。無罪は当然です。

第一小法廷決定
裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 深山卓也

全員論点ずれ