令和2(あ)1026 準強制わいせつ被告事件
令和4年2月18日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所
準強制わいせつ被告事件について,公訴事実の事件があったと認めるには合理的な疑いが残るとして無罪とした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し有罪とした原判決に,審理不尽の違法があるとされた事例
朝日新聞の報道です。
「審理尽くされていない」 手術後わいせつ事件で有罪破棄、最高裁
東京都内の病院で2016年、胸の腫瘍(しゅよう)の摘出後、麻酔で意識がもうろうとする30代女性の左胸をなめたとされた。現場は4人部屋の病室だった。
第二小法廷は判決で、執刀の痛みや麻酔による意識障害「せん妄」で女性が性的幻覚をみた可能性を否定した高裁判決について、専門家とはいえない精神科医の意見を根拠にしたのは不当だと指摘。検察が「被告の唾液(だえき)」と主張した左胸の付着物のDNA型鑑定の正当性も「疑問が解消されていない」と判断し、審理を尽くすよう求めた。
一審・東京地裁は、幻覚の可能性を認め、DNAは会話や触診で付いても矛盾しないとして無罪とした。だが高裁は、「せん妄の専門家でない」と自ら認める医師の証言をもとに幻覚を否定し、鑑定も被害証言を補うとして逆転有罪とした。被告が上告していた。
事件は密室でおきたとされますから、非常に厄介です。
訴えの内容は以下の通りです。
被告人は,外科医として勤務するものであるが,自身が執刀した右乳腺腫瘍摘出手術の患者である女性が同手術後の診察を受けるものと誤信して抗拒不能の状態にあることを利用し,同人にわいせつな行為をしようと考え,平成28年5月10日午後2時55分頃から同日午後3時12分頃までの間,病室内において,同室ベッド上に横たわる同人に対し,その着衣をめくって左乳房を露出させた上,その左乳首をなめるなどし,もって同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。
事実確認は以下の通りです。
(2)Aは,午後1時30分頃,手術室に入室した。本件手術は全身麻酔の下で行われることになっていたため,午後1時35分,麻酔科の医師が手術台に横になったAに対し,麻酔を開始した。なお,午後1時39分頃及び午後1時57分頃,鎮痛剤も投与されている。
被告人は,Aの両胸を手で触診するなどした後,手術台越しに,両胸を露出した状態のAを挟んで,助手を担当する医師Bに対して手術の概要等を説明し,引き続き,被告人とBは手術の内容について口頭で打合せをした。
本件手術は,午後2時から午後2時32分までの間実施され,麻酔は,午後2時42分,終了し,手術終了後,Aは手術室から病室(以下「本件病室」という。)に運ばれた。
意外とさっさと終了したのですね。
(3)本件手術後,被告人は,4人部屋である本件病室内の可動式のカーテンで間仕切りされたAの使用するベッドの脇に2回赴いた。
(4)Aは,スマートフォンを作動させ,上司に対し,午後3時12分頃助けを求めた。
(5)前記上司の通報により臨場した警察官は,午後5時37分頃,Aの左乳首付近を蒸留水で湿らせたガーゼで拭き取った(以下,このガーゼを「本件ガーゼ」といい,拭き取られた物を「本件付着物」という。)。
(6)警視庁科学捜査研究所の研究員Cは,本件ガーゼの半量を用いて,アミラーゼ鑑定びDNA型鑑定を行った。
アミラーゼは唾液の中に入っている消化酵素です。が、同時に臓器が壊れると出やすくなるようです。
(7)本件アミラーゼ鑑定の結果は,検査開始から1時間後にアミラーゼの反応が陽性を呈したというものであった。・・・DNA型鑑定で使用した試薬においてはPCR増幅に適したDNA量が1ngとされていることから,0.6µlの本件抽出液を用いてPCR増幅を行い,増幅産物を電気泳動するなどしてDNA型を判定した結果,検出されたDNA型は男性の1人分のDNA型であり,このDNA型は被告人のそれと一致するものであった
ここまで見ると真っ黒になりますね。
最高裁は
(1)原判決は,せん妄について,過活動型,混合型及び低活動型という分類はせん妄の重症度による段階的なものであり,せん妄が過活動型から混合型を経て低活動型,更には完全な覚醒へと順次回復するものであって,低活動型のせん妄においては通常幻覚を伴わないという井原の見解を前提としているものと解されるところ,
悪文が酷いのでぶった切りました。せん妄状態にあったので、Aのいうことは信用ならない部分がありませんか?と疑問を呈しています・
(2)本件アミラーゼ鑑定及び本件DNA型鑑定殊に本件定量検査の結果により,Aの左乳首付近に被告人のDNAが多量に付着していた事実が認められれば,これによって,被告人が公訴事実のとおりのわいせつ行為をしたとするAの証言の信用性が肯定され,原判決の上記判断の誤りが判決に影響しないとみる余地がある。
証言内容から、どうもおかしいと思ったのですかね。
(3)DNA定量検査の結果が,どの程度の厳密さを有する数値といえるのか,換言すれば,どの程度の範囲で誤差があり得るものであるのかは,必ずしも明らかではない。
DNA塩基を全て読み込んで同定するのではなく、あくまでも確率的に処理するみたいですね。
リアルタイムPCRによるDNA定量検査の原理に照らすと,本件定量検査において,科捜研が,標準資料と濃度を測定しようとする試料である本件付着物からの抽出液とを同時に増幅して検量線を作成し,濃度を測定するのではなく,あらかじめ作成しておいた検量線を使用したことが,上記の指摘にもかかわらず検査結果の正確性の前提となるPCR増幅効率の均一性の確保の観点から問題がないといえるのか,このような検査方法が検査結果の信頼性にどの程度影響するのかという点についても,必ずしも判然としない。
武漢ウィルスで有名になったPCR検査ですが、DNAを増幅させてやるものです。マスクをしなくて喋るだけで唾が飛びますから、それが反応することもあり得ます。ということで、PCR検査では決定打にかけるよねと言っているようです。なので、もう一度その制度の妥当性をもう一度判断しなさいという結論になりました。
第二小法廷判
裁判長裁判官 三浦 守
裁判官 菅野博之
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美
マスク着用、往診は常に何人でやっているのかの事実確認はなされていないので何とも言えません。それに4人部屋でそんな痴漢行為なんぞするとも思えません。疑わしきは罰せずの原則に沿ったものでした。
令和4年2月18日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所
準強制わいせつ被告事件について,公訴事実の事件があったと認めるには合理的な疑いが残るとして無罪とした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し有罪とした原判決に,審理不尽の違法があるとされた事例
朝日新聞の報道です。
「審理尽くされていない」 手術後わいせつ事件で有罪破棄、最高裁
東京都内の病院で2016年、胸の腫瘍(しゅよう)の摘出後、麻酔で意識がもうろうとする30代女性の左胸をなめたとされた。現場は4人部屋の病室だった。
第二小法廷は判決で、執刀の痛みや麻酔による意識障害「せん妄」で女性が性的幻覚をみた可能性を否定した高裁判決について、専門家とはいえない精神科医の意見を根拠にしたのは不当だと指摘。検察が「被告の唾液(だえき)」と主張した左胸の付着物のDNA型鑑定の正当性も「疑問が解消されていない」と判断し、審理を尽くすよう求めた。
一審・東京地裁は、幻覚の可能性を認め、DNAは会話や触診で付いても矛盾しないとして無罪とした。だが高裁は、「せん妄の専門家でない」と自ら認める医師の証言をもとに幻覚を否定し、鑑定も被害証言を補うとして逆転有罪とした。被告が上告していた。
事件は密室でおきたとされますから、非常に厄介です。
訴えの内容は以下の通りです。
被告人は,外科医として勤務するものであるが,自身が執刀した右乳腺腫瘍摘出手術の患者である女性が同手術後の診察を受けるものと誤信して抗拒不能の状態にあることを利用し,同人にわいせつな行為をしようと考え,平成28年5月10日午後2時55分頃から同日午後3時12分頃までの間,病室内において,同室ベッド上に横たわる同人に対し,その着衣をめくって左乳房を露出させた上,その左乳首をなめるなどし,もって同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。
事実確認は以下の通りです。
(2)Aは,午後1時30分頃,手術室に入室した。本件手術は全身麻酔の下で行われることになっていたため,午後1時35分,麻酔科の医師が手術台に横になったAに対し,麻酔を開始した。なお,午後1時39分頃及び午後1時57分頃,鎮痛剤も投与されている。
被告人は,Aの両胸を手で触診するなどした後,手術台越しに,両胸を露出した状態のAを挟んで,助手を担当する医師Bに対して手術の概要等を説明し,引き続き,被告人とBは手術の内容について口頭で打合せをした。
本件手術は,午後2時から午後2時32分までの間実施され,麻酔は,午後2時42分,終了し,手術終了後,Aは手術室から病室(以下「本件病室」という。)に運ばれた。
意外とさっさと終了したのですね。
(3)本件手術後,被告人は,4人部屋である本件病室内の可動式のカーテンで間仕切りされたAの使用するベッドの脇に2回赴いた。
(4)Aは,スマートフォンを作動させ,上司に対し,午後3時12分頃助けを求めた。
(5)前記上司の通報により臨場した警察官は,午後5時37分頃,Aの左乳首付近を蒸留水で湿らせたガーゼで拭き取った(以下,このガーゼを「本件ガーゼ」といい,拭き取られた物を「本件付着物」という。)。
(6)警視庁科学捜査研究所の研究員Cは,本件ガーゼの半量を用いて,アミラーゼ鑑定びDNA型鑑定を行った。
アミラーゼは唾液の中に入っている消化酵素です。が、同時に臓器が壊れると出やすくなるようです。
(7)本件アミラーゼ鑑定の結果は,検査開始から1時間後にアミラーゼの反応が陽性を呈したというものであった。・・・DNA型鑑定で使用した試薬においてはPCR増幅に適したDNA量が1ngとされていることから,0.6µlの本件抽出液を用いてPCR増幅を行い,増幅産物を電気泳動するなどしてDNA型を判定した結果,検出されたDNA型は男性の1人分のDNA型であり,このDNA型は被告人のそれと一致するものであった
ここまで見ると真っ黒になりますね。
最高裁は
(1)原判決は,せん妄について,過活動型,混合型及び低活動型という分類はせん妄の重症度による段階的なものであり,せん妄が過活動型から混合型を経て低活動型,更には完全な覚醒へと順次回復するものであって,低活動型のせん妄においては通常幻覚を伴わないという井原の見解を前提としているものと解されるところ,
悪文が酷いのでぶった切りました。せん妄状態にあったので、Aのいうことは信用ならない部分がありませんか?と疑問を呈しています・
(2)本件アミラーゼ鑑定及び本件DNA型鑑定殊に本件定量検査の結果により,Aの左乳首付近に被告人のDNAが多量に付着していた事実が認められれば,これによって,被告人が公訴事実のとおりのわいせつ行為をしたとするAの証言の信用性が肯定され,原判決の上記判断の誤りが判決に影響しないとみる余地がある。
証言内容から、どうもおかしいと思ったのですかね。
(3)DNA定量検査の結果が,どの程度の厳密さを有する数値といえるのか,換言すれば,どの程度の範囲で誤差があり得るものであるのかは,必ずしも明らかではない。
DNA塩基を全て読み込んで同定するのではなく、あくまでも確率的に処理するみたいですね。
リアルタイムPCRによるDNA定量検査の原理に照らすと,本件定量検査において,科捜研が,標準資料と濃度を測定しようとする試料である本件付着物からの抽出液とを同時に増幅して検量線を作成し,濃度を測定するのではなく,あらかじめ作成しておいた検量線を使用したことが,上記の指摘にもかかわらず検査結果の正確性の前提となるPCR増幅効率の均一性の確保の観点から問題がないといえるのか,このような検査方法が検査結果の信頼性にどの程度影響するのかという点についても,必ずしも判然としない。
武漢ウィルスで有名になったPCR検査ですが、DNAを増幅させてやるものです。マスクをしなくて喋るだけで唾が飛びますから、それが反応することもあり得ます。ということで、PCR検査では決定打にかけるよねと言っているようです。なので、もう一度その制度の妥当性をもう一度判断しなさいという結論になりました。
第二小法廷判
裁判長裁判官 三浦 守
裁判官 菅野博之
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美
マスク着用、往診は常に何人でやっているのかの事実確認はなされていないので何とも言えません。それに4人部屋でそんな痴漢行為なんぞするとも思えません。疑わしきは罰せずの原則に沿ったものでした。
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