『沖縄戦と琉球泡盛』では、与那国島南西部・比川浜から生物多様性の宝庫・樽舞湿原を破壊し、自衛隊基地に直結する新軍港増設の計画に、向き合います。
計画では、樽舞湿原を千二百メートルにわたり浚渫して、比川浜から自衛隊駐屯地まで繋がった新港を作り、大型船が直接基地に入れるようにするという。そんなことをすれば与那国島西南部は、ほとんど地形が変わってしまう。
樽舞湿原は琉球弧最大規模の湿地帯。固い岩盤に豊富な水を蓄えた一・五平方キロの「天然のダム」。湿地生物の生息を支えるヨシなどの植生が広がり、生物多様性の観点から見ても重要度が高い。
樽舞湿原はもともと国の鳥獣保護区、絶滅危惧種のアオナガイトトンボ、ヨナクニカラスバトやキンバト、クロツラヘラサギ、アカヒゲなど、希少野生動植物種の宝庫なのである。掘削すれば当然生態系も影響を受ける。
湿地を掘削して港にするというが、基礎地盤は固くてそう簡単に深掘りできない。比川新港は計画では幅二百メートル。ここに全長百五十メートルの船が入るというが、水深五メートルでは使い物にならない。強襲揚陸艦はもちろん空母の入港などありえない。「島民脱出用のクルーズ船」も入ることなどできない。
そもそも川の河口でもないところにこんな大規模で土地を掘り起こした事例はない。
町長と国は議会に諮らず勝手に動いている。
「ここまでの基地増強は話が違う」として、かつて過疎対策として自衛隊基地に賛成した島の有力者さえ、「騙された」と言う。分断は繰り返されているのだ。
政府は計画に前のめりだが港湾建設の許認可権限を持つのは県知事。国はそこを執拗に攻めてくるだろう。辺野古の理不尽が繰り返されるのか。
十月下旬からの「キーン・ソード」日米合同の訓練はアナウンスなく基地の内側でやってるため、島民にも外からは、わからない。鳴り物入りで日米両軍のオスプレイが来たけど、十月二十七日、自衛隊のオスプレイが事故を起こした。米軍が入って調査中だが「操作ミス」ということにされるだろう。欠陥機ということになれば配備を停止しなければならなくなるからだ。
じっさい、今日、沖縄で米軍はオスプレイの訓練を平気で再開し、危険な機体がふたたび沖縄の住宅街の上を飛んでいる。
写真、希少野生動植を演ずる、青山友香、武山尚史、高木愛香。
人形制作・秋葉ヨリエ。
撮影・姫田蘭。
『沖縄戦と琉球泡盛』は、今週末、明日から、岡山公演。