Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

就職活動失敗による自殺者の増加

2013-10-20 | Weblog
安倍首相が、福島県相馬市の松川浦漁港を訪れ、試験操業で水揚げされたシラスやタコなどを試食する姿がテレビで流れた。「日本全国のみなさんに安全だと知ってもらいたい」といっても、この人が食べてみせたからって「風評被害」がなくなるわけはない。こうしたニュースが、同じ日に東電福一原発から前日の六五〇〇倍の高濃度の放射能汚染が計測された事実を、台風による豪雨のせいだから仕方がないという言い訳とも併せ、少しでも軽く見せる、隠そうとする工作にも、使われている。

広島市は原爆資料館に展示している被爆者の姿を再現したプラスチック製の「被爆再現人形」を、2016年3月ごろ撤去するという。原爆の炎に追われ、皮膚が垂れ下がった両腕を前方に突き出し、がれきの中をさまよう姿。私が子どもの頃見たのは、おそらく先代のろう人形のほうだと思う。もちろん怖かったと思う。だが、より怖かったのは、イヤホンガイドのバックにかかっていた「展覧会の絵」のBGMだ。資料館の耐震改修工事に合わせたリニューアルで、展示資料を遺品や写真などの「実物」中心とする考えだというが、振り返ってみて、子どもの頃に衝撃を受けることが間違っているとは、まったく思わない。『はだしのゲン』同様、じっさいに体験しなくても、展示で戦争の悲惨さが伝わるというのは、いいことではないか。
それにしても事実を、少しでも軽く見せる、隠そうとする工作は、全国的な風潮なのか。

全労働者の三分の一を占める「若年者(15~34歳)」。厚生労働省による働く若年者の雇用実態調査によれば、自身の収入のみで生活している者より、自身の収入に加え、親の収入など他の収入に頼っている者のほうが多いことがわかったという。正社員の若年者のぎりぎり半数は、自身の収入のみで暮らしているが、パート・アルバイトや契約社員など正社員以外で働く若年者では、3割にとどまるという。厳しい雇用環境が続いている。
構造的には、高度成長・バブル、社会保障度の高かった時代の親たちの蓄えが、社会に回収されてゆく。日本が世界でも希な「貯金の多い国」という認識は、これから成り立たなくなっていくことだろう。

そして、就職活動に失敗して自殺する若者が増えており、昨年、その層の自殺者数は、六年前に比べ三倍近くに増加しているという。
就活者の97%が正社員を希望。一方で「定年まで勤める」としたのは20%で、約四割があらかじめ転職や独立を考えているというデータもある。日本の会社、労働のあり方が変わってきたことも反映しているだろう。将来についてアクティブに考える者なら、「生涯雇用」の縛りを解いて、自由と機会に恵まれた「能力のある者が力を発揮できる社会」でありたいと思ってきたはずだが、彼ら「若年者」が、いちど競争から弾き飛ばされたら這い上がれないのではないかと、極めて強い不安を抱いている現状を反映している。
都合の悪いことを隠し、責任を取らない。疑念ばかりが膨らみ偏狭さに満ちたこの世の中を見ていれば、夢も希望もないのは、確かだろう。
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吉田牧場のチーズ

2013-10-20 | Weblog
昨年、福武文化賞などの御縁もあって、吉田全作さんと知り合うことができた。
昨年末にも吉田牧場のチーズを贈ってくださり劇団の忘年会でいただいたのだが、オーストラリアとの仕事をされている吉田さんの友人のUさんが私たちにカウラのワインをくださる中継の便宜をはかってださり、そのタイミングでまた吉田牧場のチーズをいただくことになった。
劇団稽古場での最後の稽古の後(明日から広い稽古場に移る)、チーズとワインとをいただく会を開催することになった。私は稽古後に某誌の取材を受けていて遅れて参加したが、そのタイミングで、チーズ開封。
今回は皆でじっくり味わいながらいただいた。本当においしい。モツァレラとカマンベールはこれが本物の味だと感嘆。袋に入った姿が楽しいカチョカバロ(写真)は焼いてもみた。この食べ方は昔『屋根裏』パリ公演のさい市場で断面を焼いたラクレットをパンに付けて食べたとき以来だが、なかなか日本で味わえるものではない。白く柔らかくなめらかなチーズ造りが沖縄の「ゆし豆腐」作りと重なって見えるリコッタは、醤油をかけていただいたりもした。(こうしたチーズの名称の知識は最近付け焼き刃的に得たものである)
オーストラリアはワイン造りの盛んな国だが、Uさんからのワインは、カウラでできた桜の木がラベルに印刷されているもので(写真)、本当にかなりおいしいものであった。
チーズとワインというのは本当に合うものなのだと思う。大昔にジャン・ギャバンの出た『霧の波止場』という映画で、彼がナイフを使ってテーブルにじかに置いたチーズとワインの食事をするシーンが印象的だったが、フランス的には一種の「完全食」なのだろう。
吉田さんと吉田牧場がちょうど先週のNHK「プロフェッショナル」で取り上げられたタイミングでもあり、みんな興奮。豊かな時間を過ごすことができ、感謝。いろいろあって私は小一時間で引き揚げたが、皆、充実した時間を過ごせたはずである。
岡山に面白い人がいるのも嬉しく、最近になって故郷との御縁が増えて、本当にありがたいと思う。
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