Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

The earth is round , get over it.

2014-05-09 | Weblog
世評の高い『アクト・オブ・キリング』、ひでえ映画だった。こんなものに驚いたり感心したりしているほど暇に生きていないぞ。世の中おかしいのか。『ゆきゆきて、神軍』がいかに傑作だったか、よくわかる。
『アクト~』は、ただの「やらせ」でしかない。土井敏邦監督の感想が一番しっくり来る。
http://www.doi-toshikuni.net/j/column/20131018.html
こんな映画に感心している人たちは先月に女生徒276人を拉致し今月になっても村を襲撃し少なくとも125人の住民を殺したというナイジェリアイのスラム過激派武装集団のことなどを結局は他国のこととして容認できる神経の持ち主である。

ドキュメンタリー映画は最近では『ある精肉店のはなし』が圧巻だと思う。纐纈あや監督は祝島を描いた前作より上手くなっているが、その巧みさが鼻につかないし、被写体との距離感が絶妙に感じられる。手前で兄が肉を捌き、奥で弟が太鼓を作っている、なんでもないワンショットが、最高。

映画といえば、今月は、『8月の家族たち』を見逃すわけにはいかないので、慌てて駆け込んだ。私が翻訳上演した『BUG』のトレイシー・レッツが、トニー賞・ピュリッツァー賞を得た、ユージン・オニールばり家族劇の映画化。私がここ数年よく着ている「The earth is round , get over it.」(地球は丸いのよ、認めなさい)という台詞の書かれているTシャツは、この劇のオリジナル商品。私が観る前にNY帰りの人からお土産にもらったものだ。クスリ中毒の母親の台詞で、映画ではメリル・ストリープが言っている。なんだかんだいっても、よくできている。オーソドックスと、皮肉な飛躍の混在。ジュリア・ロバーツがいい歳の取り方をしている。アメリカでの上演では「家」の存在感が圧巻なのだが、映画のリアリズムではそれがかえって浮かんでこないのは、『プルーフ』と同じ。『プルーフ』は日本での翻訳上演でもセットが抽象ではだめで、あの落ち葉に包まれた二階建てのセットと「数学」が同居しているところに意味があるのだ。
コメント
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