昨日午後一時過ぎ、私も参加したシナリオ作家協会主導の「共謀罪」反対の記者会見が衆議院会館で開かれていた、ちょうど同じ時刻。
与党側は「共謀罪」を強行採決する方向を打ち出した。
参院法務委員会をすっとばし、「共謀罪」法案を本会議で直接採決する異例の「中間報告」を野党側に提案。
議会制民主主義を否定するあり得ない暴挙だ。
与党がやっているのは、国会運営ではない。国会の私物化だ。「国会軽視」ではなく、もはや、これは「国会」ではない。
「共謀罪」は、参議院に来て、二週間。法務委員会は17時間40分しか審議していない。277以上の新しい犯罪についての法律を作るのにそんな短い時間で足りるはずがない。
そもそもまともな審議が行われていなかった。野党側は杜撰な審議の象徴である金田勝年法相への問責決議案を出したが実らず、午後8時過ぎには参院本会議で、法務委員会での「共謀罪」法案の審議打ち切りを決める「中間報告」動議の採決が始まった。伊達議長は「時間がありません」「早くしてください」と、何度も野党側の演説の打ち切りを促したというが、話し合いを拒否する議長とは、何者だ。森ゆうこ議員が言うように、「発言時間を制限するのは言論の府の死。自殺行為」である。
与党側からは、まったく説明がなく、参議院や法務委員会の存在意義を、自ら放棄。
与党と官邸の言いなりでこの国の政治が進められていることが浮き彫りになった。
国会会期末を控え期日内に間に合わせる「都合」という理由付けさえも二重の言い訳で、本当は、安倍首相が加計学園・森友学園へく国有地売却に対する追及を避けるためだろう。明らかに「逃げた」のだ。
野党は内閣不信任決議案を提出したが、同じく「数の論理」で否決。
「横暴」「数のおごり」は言うまでもないが、審議をしなくていいということになれば、国会も国会議員も存在する意味がない。
「強行採決」どころではない。与党「独裁」宣言だ。
議長が投票時間を2分に制限し、「牛歩」戦術者は投票が間に合わず、無効票になった場合もある。
結果として、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織的犯罪処罰法が15日朝、参院本会議で成立した。
政府は187カ国・地域が結んでいる国際組織犯罪防止条約に入るために同法の成立が必要だと説明してきたが、識者の解説を待つまでもなく、そうではないとことは明白だ。
「犯罪を計画段階から処罰できるようにする」というが、思想信条の自由を奪うものであることは間違いがない。
政権は「2020年の東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策を強化できる」と強調しているが、ならばオリンピック後に廃案にする特別措置法にすべきだ。
野党側はもっと不信任案を連打すればよかった。
徹夜でがんばったと思っている人もいるだろうが、結局は国民の目の届かない時刻にやり逃げされたということでもある。
牛歩戦術を見た一般庶民、若者たちは、もはや「野党もがんばっている」などとは思わないだろう。
野党は次の選挙で勝つための準備を、本気で始めていないとおかしい。
無力感しかない、と、言っても仕方がない。
文学的感慨など糞食らえ、である。
忘れてはならない。
いまの日本の状態については、既に国連の特別報告者が「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」と懸念を表明している。
どの国からも軽蔑されている。
世界の目が見ている。
日本に対する「一等国待遇」のようなものは、既に怪しいが、本当に、なくなる。
政権はドメスティックな問題で終わらせたいのだろうが、そうは問屋が卸さない。
政権側は、ここまであからさまな過ちをしているのだ。
これで覆せなかったら、本当にこの国は終わりだ。
本来なら、この件だけで「アウト」である。
そのくらい「ひどい」ということに対して、鈍感になってはならない。
この暴挙を、決して許さず、何度でも、いつまでも抗議し、不当であると言い続けるべきである。
それが義であり、正当なことであるからだが、なぜなら、理由のもう一つは、彼らは「一度出来たことは平気でもう一度繰り返す」からだ。
このまま憲法改悪には、向かわせてはならない。
さて、私も参加した衆議院会館での記者会見は、幾つか記事にはなっている。これからも雑誌等、記事が出る予定があるようだ。
異論があることを、より多くの人に知ってほしい。
加藤正人・日本シナリオ作家協会理事長とは、三十年を超えるつきあいだ。廣木隆一組の仲間であったわけだが、こんな場で一緒に並ぶことになるとは思わなかった。そして、映画『祭りの準備』は十代に観た特別な作品なので、作者の中島丈博さんと同席することになったのも自分としては大事件なのだが、感慨に耽っている余裕もない。
写真、撮影は、姫田蘭。
朝日新聞も全文を載せてくれたが、日本劇作家協会が発表し、脚本家や劇作家らが14日の記者会見で賛同を表明した「『新共謀罪』に反対する表現者の緊急アピール」と、賛同団体は以下の通り。ただ、アピールについては、「註」も見てほしいので、加えておく。
◇
日本劇作家協会は、過去3度も廃案となった「共謀罪」が、問題の本質は変わらぬまま、「テロ等組織犯罪準備罪」として国会に再度提出されることに、強い危機感を覚えています。
この法案は網羅する範囲が広く、また、私たちの創作行為が発表以前に監視されることを許すものです。恣意(しい)的な運用がなされた場合、思想信条や言論・表現の自由への脅威になりかねません。
日本劇作家協会は、自由な表現活動を維持する立場として、あらためてこの法案に懸念を表明します。
註1:「犯罪が実際に行われていなくても」その可能性を語り合ったり、匂わせただけで、犯罪行為として処罰の対象になるのが共謀罪です。現在、未遂や予備(準備)や共謀は軽犯罪では処罰の対象にならず、重大な犯罪だけに限定されています。
註2:日本には既に共謀罪が15、陰謀罪が8、予備罪が40、準備罪が9あり、72の主要重大犯罪に、未遂よりも前の予備などの段階で処罰できる法律があります。またテロ資金供与を含む国連のテロ防止関連の条約を全て批准しており、国内法も整備し ています。マネーロンダリング防止を目的とした国連の「国際(越境)組織犯罪防止条約」を批准するためには「四年以上の刑期の犯罪全てに共謀罪を導入しなければいけない」と政府は説明していますが、アメリカなど多くの国が共謀罪条項を留保し批准しています。日本も当然、留保の形でこの条約を批准することは可能です。
註3:政府の統一見解では、対象は組織犯罪集団に限定されず、あらゆる団体(2名以上の会社、サークル、労働組合など)が犯罪の可能性を相談し、共謀した後は組 織犯罪集団とみなされ得ると説明しています。また共謀行為の立証のために盗聴の拡大や密告が奨励されるのではないかとの指摘もあります。
2017年2月22日 一般社団法人・日本劇作家協会
(賛同団体)
日本新劇製作者協会
AICT/IATC(国際演劇評論家協会)日本センター
公益社団法人日本劇団協議会
一般社団法人日本演出者協会
協同組合日本映画監督協会
公益社団法人国際演劇協会日本センター 理事会有志
神奈川演劇鑑賞団体連絡会議
協同組合日本シナリオ作家協会
非戦を選ぶ演劇人の会
与党側は「共謀罪」を強行採決する方向を打ち出した。
参院法務委員会をすっとばし、「共謀罪」法案を本会議で直接採決する異例の「中間報告」を野党側に提案。
議会制民主主義を否定するあり得ない暴挙だ。
与党がやっているのは、国会運営ではない。国会の私物化だ。「国会軽視」ではなく、もはや、これは「国会」ではない。
「共謀罪」は、参議院に来て、二週間。法務委員会は17時間40分しか審議していない。277以上の新しい犯罪についての法律を作るのにそんな短い時間で足りるはずがない。
そもそもまともな審議が行われていなかった。野党側は杜撰な審議の象徴である金田勝年法相への問責決議案を出したが実らず、午後8時過ぎには参院本会議で、法務委員会での「共謀罪」法案の審議打ち切りを決める「中間報告」動議の採決が始まった。伊達議長は「時間がありません」「早くしてください」と、何度も野党側の演説の打ち切りを促したというが、話し合いを拒否する議長とは、何者だ。森ゆうこ議員が言うように、「発言時間を制限するのは言論の府の死。自殺行為」である。
与党側からは、まったく説明がなく、参議院や法務委員会の存在意義を、自ら放棄。
与党と官邸の言いなりでこの国の政治が進められていることが浮き彫りになった。
国会会期末を控え期日内に間に合わせる「都合」という理由付けさえも二重の言い訳で、本当は、安倍首相が加計学園・森友学園へく国有地売却に対する追及を避けるためだろう。明らかに「逃げた」のだ。
野党は内閣不信任決議案を提出したが、同じく「数の論理」で否決。
「横暴」「数のおごり」は言うまでもないが、審議をしなくていいということになれば、国会も国会議員も存在する意味がない。
「強行採決」どころではない。与党「独裁」宣言だ。
議長が投票時間を2分に制限し、「牛歩」戦術者は投票が間に合わず、無効票になった場合もある。
結果として、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織的犯罪処罰法が15日朝、参院本会議で成立した。
政府は187カ国・地域が結んでいる国際組織犯罪防止条約に入るために同法の成立が必要だと説明してきたが、識者の解説を待つまでもなく、そうではないとことは明白だ。
「犯罪を計画段階から処罰できるようにする」というが、思想信条の自由を奪うものであることは間違いがない。
政権は「2020年の東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策を強化できる」と強調しているが、ならばオリンピック後に廃案にする特別措置法にすべきだ。
野党側はもっと不信任案を連打すればよかった。
徹夜でがんばったと思っている人もいるだろうが、結局は国民の目の届かない時刻にやり逃げされたということでもある。
牛歩戦術を見た一般庶民、若者たちは、もはや「野党もがんばっている」などとは思わないだろう。
野党は次の選挙で勝つための準備を、本気で始めていないとおかしい。
無力感しかない、と、言っても仕方がない。
文学的感慨など糞食らえ、である。
忘れてはならない。
いまの日本の状態については、既に国連の特別報告者が「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」と懸念を表明している。
どの国からも軽蔑されている。
世界の目が見ている。
日本に対する「一等国待遇」のようなものは、既に怪しいが、本当に、なくなる。
政権はドメスティックな問題で終わらせたいのだろうが、そうは問屋が卸さない。
政権側は、ここまであからさまな過ちをしているのだ。
これで覆せなかったら、本当にこの国は終わりだ。
本来なら、この件だけで「アウト」である。
そのくらい「ひどい」ということに対して、鈍感になってはならない。
この暴挙を、決して許さず、何度でも、いつまでも抗議し、不当であると言い続けるべきである。
それが義であり、正当なことであるからだが、なぜなら、理由のもう一つは、彼らは「一度出来たことは平気でもう一度繰り返す」からだ。
このまま憲法改悪には、向かわせてはならない。
さて、私も参加した衆議院会館での記者会見は、幾つか記事にはなっている。これからも雑誌等、記事が出る予定があるようだ。
異論があることを、より多くの人に知ってほしい。
加藤正人・日本シナリオ作家協会理事長とは、三十年を超えるつきあいだ。廣木隆一組の仲間であったわけだが、こんな場で一緒に並ぶことになるとは思わなかった。そして、映画『祭りの準備』は十代に観た特別な作品なので、作者の中島丈博さんと同席することになったのも自分としては大事件なのだが、感慨に耽っている余裕もない。
写真、撮影は、姫田蘭。
朝日新聞も全文を載せてくれたが、日本劇作家協会が発表し、脚本家や劇作家らが14日の記者会見で賛同を表明した「『新共謀罪』に反対する表現者の緊急アピール」と、賛同団体は以下の通り。ただ、アピールについては、「註」も見てほしいので、加えておく。
◇
日本劇作家協会は、過去3度も廃案となった「共謀罪」が、問題の本質は変わらぬまま、「テロ等組織犯罪準備罪」として国会に再度提出されることに、強い危機感を覚えています。
この法案は網羅する範囲が広く、また、私たちの創作行為が発表以前に監視されることを許すものです。恣意(しい)的な運用がなされた場合、思想信条や言論・表現の自由への脅威になりかねません。
日本劇作家協会は、自由な表現活動を維持する立場として、あらためてこの法案に懸念を表明します。
註1:「犯罪が実際に行われていなくても」その可能性を語り合ったり、匂わせただけで、犯罪行為として処罰の対象になるのが共謀罪です。現在、未遂や予備(準備)や共謀は軽犯罪では処罰の対象にならず、重大な犯罪だけに限定されています。
註2:日本には既に共謀罪が15、陰謀罪が8、予備罪が40、準備罪が9あり、72の主要重大犯罪に、未遂よりも前の予備などの段階で処罰できる法律があります。またテロ資金供与を含む国連のテロ防止関連の条約を全て批准しており、国内法も整備し ています。マネーロンダリング防止を目的とした国連の「国際(越境)組織犯罪防止条約」を批准するためには「四年以上の刑期の犯罪全てに共謀罪を導入しなければいけない」と政府は説明していますが、アメリカなど多くの国が共謀罪条項を留保し批准しています。日本も当然、留保の形でこの条約を批准することは可能です。
註3:政府の統一見解では、対象は組織犯罪集団に限定されず、あらゆる団体(2名以上の会社、サークル、労働組合など)が犯罪の可能性を相談し、共謀した後は組 織犯罪集団とみなされ得ると説明しています。また共謀行為の立証のために盗聴の拡大や密告が奨励されるのではないかとの指摘もあります。
2017年2月22日 一般社団法人・日本劇作家協会
(賛同団体)
日本新劇製作者協会
AICT/IATC(国際演劇評論家協会)日本センター
公益社団法人日本劇団協議会
一般社団法人日本演出者協会
協同組合日本映画監督協会
公益社団法人国際演劇協会日本センター 理事会有志
神奈川演劇鑑賞団体連絡会議
協同組合日本シナリオ作家協会
非戦を選ぶ演劇人の会