日本学術会議問題の「声明」に賛同しました。
アップするのが遅くなりました。
日本学術会議の任命拒否問題で、学者や映画監督、元官僚らの有志が20日、東京都内で記者会見し、任命拒否や政府が進める在り方の見直しに抗議する声明を発表した。「政権の思い通りの組織に改編され、学問の自由が奪われれば、科学は批判の力を持たない政治の召し使いになる」と訴えた。
声明では菅義偉首相に対し、任命拒否した理由の説明や速やかな任命を要請。在り方の見直しに関わる井上信治科学技術担当相には、自民党の提言ではなく、学術会議側の自主的な改革案が実現するよう求めた。
賛同者は20日時点で、ノーベル物理学賞受賞の益川敏英京都大名誉教授や作家の赤川次郎さんら125人。(共同通信)
「声明」は、以下の通り。
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日本学術会議会員候補 6 名の速やかな任命と 政府の権力介入の撤回を求めます。
声明文
政府自民党は、日本学術会議会員候補者 6 名の任命を拒否したまま、政権の思うままの 学術総動員体制の道具として日本学術会議を改変する改革案を一方的に提出しようとして います。この暴挙に抗議して、私たちは以下の声明を発表します。
わたしたちは、日本学術会議会員候補者 6 名任命拒否の理由の説明、6 名の速やかな任 命、そのうえで日本学術会議の自主改革案に即した改革を要望します。
日本学術会議は、これまで日本の科学者を代表する国の機関として、科学者の立場で多数 の政策提言を行い、日本社会の進むべき道を提示してきました。日本学術会議がときどきの 政権の思い通りの組織に改編され、学問の自由が奪われるならば、科学は批判の力を持たな い政治の召使となります。私たちは、政治が科学を軽んずれば国民の命を守れないことを新 型コロナの危機によって体験しています。そして学問の自由を奪われた社会は闇であり、そ の闇から真実や法を意のままに曲げる独裁者が登場することにもなりかねません。そのよ うな暗黒の道を避けるために、日本学術会議会員の任命拒否を撤回させ、学問の自由、表現 の自由を擁護して、法治主義の大原則に則った政治をとりもどしましょう。
要請
菅義偉首相による日本学術会議会員候補者 6 名の任命拒否は、日本学術会議法に照らし て不当かつ違法な行為であり、憲法第 23 条の学問の自由の侵害にあたり、ひいては思想・ 表現の自由に対する政治介入です。今回の菅首相の一連の行為が自由に真理を追求し表現 する社会の破壊につながることを憂慮し、以下のことを要請します。
1 菅義偉首相へ
菅首相は、日本学術会議の「要望書」(2020 年 10 月 3 日)並びに「声明」(2021 年1月 28 日)においても再度要望された2項目、1任命見送りの理由の説明、2任命否された 6 名の速やかな任命を直ちに行ってください。この 2 項目の遂行以外に問題の解決はありま せん。また、杉田和博官房副長官の国会への参考人としての招致を認め、任命見送りの経緯 について答弁させることを要請します。
2.井上信治(科学技術政策担当)国務大臣へ
井上大臣は、日本学術会議の改革をもとめていますが、菅首相による任命拒否の理由の説 明と速やかな 6 名の任命がその大前提です。この対応がなされないまま自民党改革案を日 本学術会議に提示することは、日本学術会議の独立性の侵害であり、それを擁護すべき担当 大臣の職務に反しています。日本学術会議が準備している自主改革案が実現するよう担当 大臣としての責任を自覚して対処することを要請します。
3.内閣法制局へ
内閣法制局は、今回の任命拒否について、日本学術会議法の「解釈変更は行っていない」
という見解を示しています。「推薦どおりの人を任命する義務が(首相に)あるとまでは言 えない」というその解釈は、憲法第 65 条および第 72 条、ならびに第 15 条を根拠に説明さ れています。かりにこの解釈が成り立つとしても、これは任命拒否ができるという解釈にす ぎず、具体的に今回の菅首相による任命拒否が妥当かどうか、妥当とすればその根拠はどこ にあるか、内閣法制局の見解を公表してください。
4.政権与党(自民党・公明党)へ
法治国家では政権与党であろうと法を順守しなければなりません。学問の自由の侵害が 思想・表現・信仰の自由の侵害に連なることは、いうまでもありません。日本学術会議は、 社会と国家の現在と将来に対して科学者共同体として責任を持つ組織であるべきであって、 決してその時々の政権に都合のよい組織であってはなりません。この認識に立って、日本学 術会議の独立性を擁護し、学問の自由、思想・表現・信仰の自由を尊重する政治を要望しま す。日本学術会議の自主改革を尊重し、政権与党による政治介入を行わないでください。
5.野党へ
今回の会員候補者任命拒否問題は、安倍政権から菅政権へと継承されてしまった法治主 義や学問の自由の破壊を象徴する事件です。この問題の根本的な解決がはかられるまで、国 政の最優先課題の一つとして国会審議を尽くすよう要望します。
6.日本学術会議(梶田隆章会長)へ
日本学術会議は、菅首相に 2 項目の「要望書」を提出するなど、一貫して学者の立場から 日本学術会議法を尊重した対応をしてきました。しかし、外にいる人々には、日本学術会議 の内側からの声が十分には聞こえてきません。日本学術会議問題は、いまや日本学術会議だ けの問題ではなく、民主主義における科学の役割に関する国民全体の問題です。日本学術会 議としての見解や方針が一般市民にも伝わるよう、より明確で真摯な意思表明を要望しま す。
7.メディア関係の方々へ・表現に携わっている方々へ
学問の自由の侵害がメディア統制に直結し、思想・表現の自由の剥奪、独裁国家の成立へ とつながることは歴史が証明し、諸外国の事例でも明らかです。今回の問題を軽視すること なく、持続的に世論を喚起し続け、事実にもとづく正確な報道を問題が解決するまで我がこ ととして続けていただくことを要望します。
8.市民の皆様へ
数々の政治家や官僚のスキャンダルや違法行為と比べ、日本学術会議の任命拒否問題は わかりづらく、NO の声をあげにくいかもしれません。しかし、私たちは今回の問題を日本 学術会議のことだけとはとらえていません。新型コロナへの対応における無策、経済破綻に よる貧困と不安の拡大、軍事予算が優先され教育予算と文化予算を上回る政策と、学術総動 員体制を画策した日本学術会議問題とは無縁ではありません。この国の社会、経済、文化、 学問、教育をこれ以上劣化させないためにも、日本学術会議問題の解決に向けて、関心を持 ち続けていただけるよう願っています。
昨年 10 月 1 日、菅義偉首相は、日本学術会議会員候補者 6 名の任 命拒否を行いました。この暴挙に対して、これまで 1,000 以上の学術団体、500 近い民 間団体が抗議の声明を発表してきました。しかし、菅首相は、6 名の任命拒否も放置し たまま、昨年 12 月、自民党は「日本学術会議の改革に向けた提言」をまとめ、この改革案を一方的に日本学術会議に押し付け、法改正に着手しようとしています。
自民党「改革案」が断行されるならば、現行の日本学術会議は事実上つぶされ、政権 の掲げる国策への学術総動員体制が築かれることになります。学問の自由が踏みにじら れると、メディアの自由、文化・芸術の表現の自由、さらには市民生活の思想・表現の 自由も侵害されてしまうことになるでしょう。日本学術会議問題は、学者・研究者の問 題にとどまらず、文化、芸術、報道など表現活動に携わるすべての人々の自由を侵害し、 日本の表現活動を委縮させてしまう問題です。