とにかく晴れて良かった。……裵君から第二子誕生の報せ。本当に喜んでいるのがわかる。めでたい。……ツイッターというものが流行っていると聞く。日常の中、携帯電話で逐一「つぶやき」を書き込むのだそうだ。なんだか「つふやく」ために生きているみたいで嫌だなあ。……ある女優さんから出演作品のお知らせが届く。「どこまで脱ごうか…」などと書いてある。どのみち観にはゆけないのだが、そんなこと言われても、である。
こちらは稽古場に籠もっているが世間は世間で動いているようだ(あたりまえだが)。国連が設立を目指していた「ナショナル軍縮デー」だが、カザフスタンが代わりに「核実験反対デー」を強く主張、設立が二、三年年見送られることに。なので打診のあったNYの関連NGOプロジェクトがいったんストップ。いろんな国が集まれば「軍縮」が都合の悪いところもあるということだろう。ちょうど来日中だがオバマへの反発もあるのかもしれない。……そういえばNYでは三谷幸喜ミュージカルが開幕したらしい。
やはり自転車で行く。電車よりもずっと近い気がする。所要時間の短さもあるが、駅のホームにいる時間の感覚がないからであろう。慣れてしまえば平気になっているが、久しぶりに電車に乗ると、待ち時間が不思議な時間に思われてならない。中学高校と自転車通学をしてきたというか、とくに高校はバスだと乗り継ぎが必要で4倍くらい時間がかかるので、いかなる天候でも自転車で通していた。電車に乗ることじたいを「珍しい体験」と思う人間が上京したのだ。久しぶりに電車に乗るとその感覚が少し甦ってくる。
ばしばし進めていく。そういう日である。さらに刈り込む。
昨日紹介した「『放埒の人』はなぜ『花嫁の指輪』に 改題されたか あるいはなぜ私は引っ越しのさい沢野ひとしの本を見失ったか」について質問があったので、興味のある方は以下をご覧下さい。戯曲は、「悲劇喜劇」(早川書房)2007年8月号に載っています。
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/houratsunohito.html
昨日紹介した「『放埒の人』はなぜ『花嫁の指輪』に 改題されたか あるいはなぜ私は引っ越しのさい沢野ひとしの本を見失ったか」について質問があったので、興味のある方は以下をご覧下さい。戯曲は、「悲劇喜劇」(早川書房)2007年8月号に載っています。
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/houratsunohito.html
今回の台本は差し込みがあったりしてかさんでいるが、日本一題名の長い 「『放埒の人』はなぜ『花嫁の指輪』に 改題されたか あるいはなぜ私は引っ越しのさい沢野ひとしの本を見失ったか」よりも、題名はもちろん短いが、台本じたい十ページ少ない。カット部分もあり、さらに刈り込んでいるところもある。なぜ「『放埒の人』~」を引き合いに出すかというと、芝居じたいがどこか似ているからでもある。
座高円寺付属のアカデミーに講師として来ている宮沢章夫さんを地下三階ロビーから見かける。教室になっている部屋はガラス壁なので授業中の宮沢さんと会釈を交わしてしまう。結局言葉は交わさず。
六ケ所村の核燃再処理工場近くに断層発見とか。地震が来たらいちころである。北朝鮮の「核再処理終了」報道、佐賀玄海原発のプルサーマル。いろいろ話題が多い「核問題」だが、マスコミがオバマを持ち上げる中で、世間の建前「平和利用」への目が緩くなっているように感じる。大雑把にまとめて考えてしまうと、解決していないことまでも「終わったような気がする」ものだが、一つ一つの問題の「違い」をこそ共有しないと、解決には向かわない。それを素人が一つ一つやるのがたいへんだからこそ、意識を持った専門家との対話が重要になる。
2日続けて稽古開始から数時間は、矢内原美邦さんの振付け。時間がない中でどんどんつけていただく。それにしても、このパートも、おそらく普通の順番ではないところに持ってきている。内容は秘密にしておきたい種類の劇だが、「悲劇喜劇」誌最新12月号の連載エッセイにこの劇について触れているので、興味ある方はご覧下さい。
来年2月吉祥寺シアター。昨年劇作家協会講座の講師にも招いたダグ・ライト作。オリジナルとは変えた日本版での上演オーケーをもらっている。アメリカ版演出は『ララミー・プロジェクト』のモイゼス・カウフマン。トニー賞では、作品賞と共にジェファーソン・メイズが主演男優賞を受賞。ジェファーソンは燐光群『白鯨』演出のリアン・イングルスルードの劇団SITIのメンバーだった。十年前、拙作『くじらの墓標』NYラ・ママ劇場リーディングの後、イーストビレッジのバーで彼も含めいろんな人と飲んだ。そこは私が一人ででも飲みにゆく珍しい店。ダグの『グレイ・ガーデンズ』日本版は、宮本亜門演出により7日シアタークリエで初日だが行けそうにない。
どうやら今日は松井秀喜選手がヒーローらしいとニュースの断片が伝わってくる。こちとら、ちょうどニューヨークのシーンに苦闘しているところなのだが! たまたまヤンキーズの台詞もあるのだが! 連絡が入り、来年、NY発のトニー賞・ピュリッツァー賞ダブル受賞の戯曲を上演することも正式発表オーケーの段階に漕ぎ着ける(もう少しだけ待ってくださいね)。フランスとの『屋根裏』上演・出版契約関係のことなどもバタバタと。12月初旬にキム・カンボ演出の芝居を観に北海道へ行くかもしれない件も。なんだか気持ちだけ国際デー。
午後すぐから、舞台美術家協会創立50周年記念シンポジウム「舞台美術の未来」2ndにパネリストとして参加。座・高円寺2。パネラーは美術家以外の人たちが多数。重みのある言葉も多々。演劇界・文化行政の大きな変化を感じながらの話となる。お願いしていたとおり稽古優先で後半のディスカッションはパスさせていただく。二時間余りで終え、一階下の地下三階稽古場へ急ぎ戻る。
衣裳打合せ。点数が多いのに決まっていないことが多く申し訳ない。そして稽古。今回の劇中、ある世界的に知られている短編小説をほとんどまるごと上演する。ムーブメントもある。その指針を作る。
『ハシムラ東郷』にはセントラルパークが登場する。一五〇年の歴史を持つ公園である。いろいろな人が同じ風景を見てきたのだろう。散歩しながら、さまざまな空想をした記憶がある。とくに一〇年前、蛍が放たれている夜に散歩した時のことは忘れられない。あんなにいっぱいの蛍を見たのはあの時が最初で最後だ。あの夏、ローラーブレードもやってみた。
『ハシムラ東郷 イエローフェイスの異人伝』の著者・宇沢美子さんがさらに多くの資料を届けてくださる。ああ、そういうことだったのか、という事実が続々。こちらの質問が具体的になってきていることもある。私がどこをさまよっているかというと、百年前のニューヨークなのである。……天気が悪い。早くも北海道は雪だという。なのに暖冬の噂。
明け方、思いがけずデジャ・ヴが襲ってくる。この「ハシムラ東郷」という素材を私は十年以上前に想像したことがあるはずだ。この史実を知るはずもないのに。いや、なぜか知っていて、十数年経ってようやくこの手続きで浮上してきたというのであろうか。今回は本当に横滑りしている。この横滑りさえ、潜在意識のどこかに予感があったというのか。……NYからまた新たな仕事の依頼。時期的にも実現できるかどうかわからないが。