第23回日本劇作家協会新人戯曲賞受賞作『うかうかと終焉』が映画化、今秋10月にテアトル新宿等で公開決定。
受賞時に戯曲賞の審査員を務めた身としては、ひじょうに嬉しい。この賞の受賞作の映画化は、初めてになるのかな。戯曲でも愉快だった部分が、映像になっても、弾んでいる。試写で見て、思わずにやにやしてしまうところがあった。
大田雄史・出口明両氏の共同執筆した戯曲だったが、テレビのディレクターとしても活躍する大田雄史さんが、新たに単独で脚色し、映画化。取り壊しの決まった学生寮に住む若者達の最後の5日間を描いており、京都大学の吉田寮の廃寮問題をベースに脚本を作り直したというが、逆に、京都という地域性や、原作でもそうだったが学生たちの「運動」の具体性は、打ち出されていない。青春群像を普遍的なものとして描くときに、大田監督はこの手法を選んだ。昨年、以前に燐光群が活発に公演活動をしていたり、昭和天皇の死に際して〈CRY DAY〉イベントを敢行した場所、京都大学西部講堂との久方ぶりの邂逅があった私としては、あらためて自分自身の京都についての具体的な過去が過ぎり、いろいろと思いがあった。そして、自分より二回り若い監督の、自身に忠実な選択を、尊重し、見守ることで、冷静に、「いま」を知ることも、できた。
1000人以上もの応募者からオーディションで選ばれた中心キャスト6人はそれぞれ魅力的で、今後の活躍が期待されるところだろう。
文化庁のAFF、コロナ禍の補助金を受けて製作された映画はいろいろと多く、正直、慌てて作った感じになってしまった作品も散見されるが、本作は、そうしたものたちとは一線を画して、しっかりと、作品として存在している。
本作や大ヒットしている『福田村事件』を機に、自発的に作られるきちんとした独立プロダクションの映画製作が、もっと盛んになってほしいし、映画と演劇の距離が、もっと短くなってほしい。
映画の公式Webサイト
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https://ukauka-movie.com/?fbclid=IwAR0Hgwq71GXuoeLcQnAaJSE2_7igyuPEG990DxqY7lILErPQrpJ68Tjk9d0
https://ttcg.jp/theatre_shinjuku/movie/0986800.html
https://eiga.com/news/20230524/16/