今晩、鮎が食膳に上った。本来、天然ものの鮎はまだ解禁になっていないはず。それで、今晩の鮎も当然養殖ものだ。まぁ天然ものの鮎を食べるような身分でもない。養殖物で分相応である。かーたんが焼いてくれた。鮎は酒の肴に絶好。そこで杯も進む進む。ところで鮎という魚は食い方が難しい。小骨を丁寧に取っ手などといった食い方では食った気がしない。そこで、亡き辻留先代の辻嘉一翁によれば、焼いた鮎の鰭を折り取り、尾も折り取り、尾から丸ごと口中に入れて、歯で骨から身をはがしていくように丸ごと食うのが鮎の醍醐味を味わうもっとも優れた喰い方というのを『懐石傳書』で見た。だだし、こういう食い方ができるのは、天然ものの、釣りたての至極新鮮な鮎であるのが条件とのこと。古い鮎では、身が骨からすんなりとははがれてくれないという。まぁ、自分には縁のない食い方だ。それでと言ってはなんだが、オカブ流の喰い方が、頭から骨から鰭から、丸ごとがりがりと食ってしまうやり方。食い方としては邪道だろうが、オカブとしてはこの喰い方が一番うまく感じられる。ただし歯が丈夫でないとできない。はてさて、いつまでこんな鮎の喰い方ができるやら・・・考えるだけで侘しい。
手枕の根が生え立たず鮎の宿 素閑