エントリーのカテゴリに一応「グルメ」と入れておいたが、これが果たしてグルメに入るのかどうか?
行者ニンニクである。ことしもこれの季節がやってきた。昔は、知る人ぞ知るの珍品であったが、最近はほとんどのスーパーや青果店で入手できる。なにしろ葱・葫の類であるからものすごい薫臭である。よほどのもの好きでないと、愛好して食うようなことはしないであろう。
オカブは「よほどのもの好き」なので、この激臭のする山菜を、生で味噌をつけてがりがり齧る。この喰い方が一番野趣を感じられてよい。まあ、どうせ細やかなちまちました料理法に合う食材ではない。もっとも豪快な食い方で野趣あふれる「らしさ」を味わうのが好ましいと思う。
これをつまみに酒を飲むのもよいかもしれないが、自分にとっては「つまみ」が強烈過ぎて、酒の脇役としては、不適だと思う。
この山菜については、「日本百名山」の著者として名高い故深田久弥さんが『瀟洒なる自然』の中で情熱をもって紹介している。深田さんの好物だったらしく、入手すると連日、生で齧り、みそ汁の実にし、とにかく飽食したという。まだこの山菜が珍品だったころである。
オカブは年に一回喰えば十分である。行者ニンニクを食うともう夏も間近である。
母二人子を連れる道躑躅かな 素閑