この日はグリンツィングに行き、ホイリゲでワインを飲むことに決めた。9:30ホテル発。カールスプラッツまで歩いて、そこからショッテントーアに行こうと、トラムの1号線に乗り込むが、途中からリンクを逸れてあらぬ方向に向かう様子。あわててD号線に乗り換えて無事ショッテントーア・ウニヴェルシテェーテに。地下のトラムのロータリーで38号線を探すと、すぐにグリンツィング行きの38号線のトラムがやってきた。結構混んでいて初めは座れなかったが、徐々に空き、ウィーンの郊外の景色を眺めながら、結構な路面電車の旅。しかし、今日も 暑くてたまらん。電車の中はがんがんにエアコンがかかっている。それでも窓から射す強い日差しで暑い思いをする。
ショッテントーアから30分ほどトラムに乗り、グリンツィング駅へ。あのウィーンの市街の圧迫感から解放されて、瀟洒な田園風景の中で 伸び伸びすることができる。
しかし、グリンツィングにはお目当てのホイリゲにだけ来てワインを飲んで帰ってしまうのは勿体無い。この近辺はウィーンにない良さが随所に広がっている。
右は、グリンツィングから入り言シュタットへ向かう道にあるホイリゲ。ここに軒を並べるホイリゲを覗いて廻るだけでも楽しい。
グリンツィングからハイリゲンシュタットまでは30分ほどの道のりだ。田園と言うほどではないが、ウィーンにはない郊外の街並みの開放感が合って楽しい。
そして、途中には、小さな愛らしい教会や
ちょっとした、名もないモニュメントもあり、
右は、ハイリゲンシュタットの遺書の家に向かう途中にあった、マリアの祠。こんな小さなオブジェも、異邦のエトランジェにとっては新鮮で真新しい。
他にも、沿道のゆったりした住宅を眺めたり、小公園で子供たちの遊ぶのを見るのも、孤独な一人旅の旅行者にとっては、心の潤いになる。
炎天下を歩いてビールが欲しいところだが、もう少し歩けば、ホイリゲの冷たい白ワインが待っている。おと少しの辛抱だ。
右はベートーヴェンの夏の家。ハイリゲンシュタットの観光名所だ。ベートーヴェンは生涯で200回以上の引越しをしたという引越し魔。この家も、夏のひと時を過ごす別宅として借りて住んでいたものであろう。
夏の家から左に折れて、道標に導かれていくと、遺書の家がある。ここはベートーヴェンが有名なハイリゲンシュタットの遺書を書いた家とされている。
中庭にまでは自由に入れるが、家の中
はちょっとした展示室になっているようで、入館
料を払わないと入れない。そんな余裕はないので外から眺めて写真に収めるだけにしておく。まあ、ベートーヴェンが住んだというだけで記念的な価値はあるだろうが、建築的にはなんの変哲もない田舎家なので、そんなにじっくり見ても、なんの感慨も沸かない。
ただ楽聖が、この家で絶望の淵の縁で、絶
唱とも言える遺書を書いたと思うと、なんとなく昔の思いも伝わってくる。しかし、今日は異様に明るい。この明るさの下、悲劇の物語を想像すると言うのはちょっと無理が
あるというものだ。
右はメイヤーの家。ベートーヴェンが1817年5月から2ヶ月間住んだといわれる。
さて、ベートーヴェンが交響曲『田園』の
構想を練ったという、ベートーヴェンの散歩道に来た。小川が流れ、そのほとりの小路は『ベートーヴェン・ガッセ』と名づけられている。小川のせせらぎは清冽で心を洗われる心地がする。そしてなによりも明るい木漏れ日が、ここでの印象を光に輝いたすがすがしいものとしてくれる。古典派のベートーヴェンが印象派を思わせる明るさと色彩感を持った『田園』を作曲したのには、こんなモチーフの背景があったのかと納得してしまう。
小川のほとりの道は整えられていて歩きやすい。右の沿道には瀟洒な住宅が建っており、それを眺めて歩くのもまた楽しい。水のせせらぎの音だけが、しじまを破る静やかな散策だ。
小川の対岸の草むらにはこんな路も。あるいはベートーヴェンが歩いたのはこちらの路だったのかもしれない。圧迫感のあるウィーンの町を離れ、せせらぎと緑の郊外で、ベートーヴェンもさぞや、心身を爽快にリフレッシュしたことであろう。
グリンツィングに戻ってホイリゲの一軒。こんなホイリゲがグリンツィングには20軒足らずもあろうか?
ホイリゲの一軒。『グリンツィンガー・ブロイ』という名の店で、ワインのほかにビールも飲ませるホイリゲとして知られる。
ホイリゲ。
ホイリゲ。
グリンツィングの小公園。
お目当てのホイリゲツム・マルティン・セップ。11:00開店とガイドブックにはあったが、11:30からだそうだ。暇つぶしに、上手にある公園の日陰のベンチに座って涼をとる。「ホイリゲ」と言うのは、葡萄酒の新酒のことを指し、ウィーン周辺の葡萄農家が、新酒の時期だけ、葡萄酒を客に飲ませても良いという皇帝の勅許を得て、始められたのが、ウィーン郊外の居酒屋、ホイリゲ。今ではグリンツィングだけでも20軒ほどのホイリゲが営業している。
陽光まぶしい気持ちの良い中庭。
客は、オカブが入ったときには一組が、テラスの隅でチビチビやっていただけだったが、昼時となると、大勢の地元民やら観光客がなだれ込んできて大賑わい。陽気な夜のホイリゲを彷彿とさせるのであった。
ホイリゲといっても、初めてで勝手が分からんから、メニューにある適当なワインの銘柄を言ったら、これを持ってきた。
そうじゃない、ジョッキに入ったワインをもってこいと言うとやっと、ホイリゲらしいワインを持ってきた。
ホイリゲの料理はセルフサービスというから、その積もりでいたら、この店の料理はテーブルで注文する一品料理が中心。で、料金一律のブッフェとういうのがある。ホイリゲらしさを楽しみたいからブッフェにした。 どうも、客が食べたい料理を指で指して、とり、その合計金額をカウンターで精算して支払うというシステムではないようだ。支払いはこのとり放題のブッフェとグラスワイン一杯、ジョッキワイン一杯で17.3ユーロ。お値段もなかなか優しいホイリゲではあった。
楽聖の影ふみせせらぐ聖五月 素閑
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