昼のガスパール・オカブ日記

閑人オカブの日常、つらつら思ったことなど。語るもせんなき繰り言を俳句を交えて独吟。

初秋(北朝鮮ミサイル危機に絡めて)

2017-08-29 15:02:10 | 国際・政治

北朝鮮が、またもやICBMを発射した。
しかも今回は北海道の日本国土を飛び越えて、太平洋に落下している。
危機は一層その緊張の度合いを高めている。
ところで、今回のミサイル危機をチキン・ゲームに例える論調があるが、無理があると思う。
①チキン・ゲームは両者が避けずに正面衝突して双方が壊滅的被害を被るという選択肢も前提としているが、北朝鮮と米国では核攻撃能力に差があり過ぎてこのような結果は考えにくい。
②北朝鮮の挑発は、北朝鮮にとってほとんど抑止効果がない。と言うよりも北朝鮮の挑発は、抑止→力の均衡による平和、ということを目的としたものではなく、一方的な脅迫による国際社会からの果実の奪取を狙ったものである。
③北朝鮮は、果たして合理的判断ができるアクターなのか?
以上から、オカブは今回の事例をチキン・ゲームや他の古典的ゲーム理論のモデルに当て嵌めるのは不適当なのでは、と思う。
だから北朝鮮と米国の行動を無闇・適当に「チキン・ゲーム」と騒ぎ立てる俗論には違和感を感じる。
一方で、ではどのような分析モデルに当て嵌まるかということに関し、適切なものが思い当たらない。
一連の事例を政治分析的アプローチで解説するとすれば、どのような手法をとるべきなのか?
オカブは北朝鮮による、一方的脅迫でもたらされる北朝鮮のプレゼンスの強化と、外交的果実の享受という北朝鮮の単独ゲームの、軍事・外交闘争だと思っている。
北朝鮮の無法な脅迫に対して、かつての六カ国協議でピエロを演じた米国のヒルをはじめ、今回のメルケルの意思表明にも見られるように、対抗勢力は、北朝鮮に対する軍事的オプションという、最も有効な対抗策を最初から捨象して、単に状況を「対話路線」に導くことだけを念頭に置いている。
そこで、北朝鮮による核ミサイルの脅迫というアクションに対して、対抗陣営はそれに見合ったアクションを取らずに、全くゲーム理論のモデルには当てはまらない異常ともいえる行動を取っている。
もちろん北朝鮮との「対話」が可能なら、今、カタストロフィックな結末を回避するうえで、これ以上望ましいことはない。
しかし、北朝鮮の意図が「対話」による相互の譲歩、例えば北朝鮮の核放棄と彼等への制裁の緩和、あるいは経済援助のバーターが可能かというと、それは北朝鮮にこうした交渉は全て反故にされてきたこれまでの経緯から、まずあり得ない解決策といえる。
では、各国は北朝鮮への制裁を強化することで、北朝鮮が音を上げるまで待てばよいのかというと、まず中国とロシアという北朝鮮に対する強力な支援国家があり、この二国の経済的・軍事的・技術的支援の下、北朝鮮は核・ミサイル開発をエスカレートさせるだろう。そして関係国が「待っている」間に、北朝鮮の核攻撃能力は飛躍的に増強され、日本はじめ米国はその脅威に曝され、あらゆる場面で北朝鮮の脅迫に屈せざるを得なくなる。
事態が好転しないことを前提に考えれば、危機の重大性は急速に増大する。
今日より明日が事態が緩和されていることはあり得ない。
仮に、北朝鮮が米国本土に到達可能なICBMと核弾頭を完成し終わったら、そこで従来、人類が数々の犠牲を払って構築してきた国際秩序は終了だし、米国、中国、ロシアを巻き込み他の核保有国も参加する世界核戦争の可能性もはらんでいる。その場合、地球は滅亡する以外の未来はないだろう。
そうなってからでは遅いというのは言うまでもない。
今、世論に問えば無謀の誹りを受けようが、米国の北朝鮮に対する先制軍事攻撃が世界の安寧のために少なくとも最善の選択肢の一つになりつつある。

初秋や水面たいらかいと清し   素閑





俳句・短歌ランキング



最新の画像もっと見る

コメントを投稿